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きっと本当にイヤなこと

秋。

苦手な季節。

ずっと小さな
子どもだったころから、

この季節の
ひやりとする空気や、
樹々の匂い

ふわりと香る、
きいろい花が、

落ち着かなさを
もたらした。  

大人になって、
ずいぶん平気になったけど、
いまだに心許ない自分がいる。

それでも、数年前から、
密かな楽しみができた。

栗の渋皮煮。

地元の名産でもある
大きめの栗を
料理することが、

秋のささやかな楽しみになっている。

栗と向き合うとき、
毎年のように思う。

この子たちは、
本当に本当に
食べられたくないんだろうな、と。

敵対心むきだしのイガ。
名前の通り鬼のように硬い鬼皮。

木の皮さながら
なんとも可愛げのない渋皮。
濃すぎるほど濃い灰汁。

これほどまで
何重にも防御して、
自分を守ろうとしてるのに、

人間のほうも、
じっくりじわじわ
時間も手間もかけて、 

食べる方法を
見つけてしまった。

もはや執念。
いやむしろ戦い。

はるか昔、
きっとそういう世界が
あったのだろうと、

想像の翼を泳がせながら、
秋の夜長に
栗と戯れている。

人間も同じ。
きっと本当にイヤで抗うことと
本当にやりたくて抗うこと、 

 図らずも
重なることがあるだろう。

栗のことを思うと、
それもまた自然の流れ。
そう思えて、少し緩まる。

そういうどうでもいいお話。 

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