第十釜 : お兄様が People in the Box よりうどんが好きなはずがない。
お世話になります。Marunouchi Muzik Mag 編集長 Sin でございます。
「シンさん、電話に出てくださいよー!!!」
高松の中心地に位置するルーツレコードで真剣にゼロコーポレーションのCDを物色していた私は、苦笑いを浮かべ入店してきた People in the Box 波多野さんを前に我に返りました。
「ハーレーに跨ったロブ・ハルフォードのように颯爽と登場します!」
そういえば今日、波多野さんは自転車だったな。待ち合わせのやりとりをしていた時、私はクスリとも笑わなかったけれど、これは返しが難しいぞと頭を捻ったことをやっと思い出したのです。結局、私はこう返しました。「鋲付き革ジャンで向かいます!」
灼熱の四国で革ジャンを着るバカはいません。Daymare さんから届いたお気に入りのTシャツを着てCDを漁っていた私は、それでもやっぱりバカでした。待ち合わせの18:30分はとっくに過ぎていたのです。一介の町娘である私が、人気バンドのフロントマンを待たせて良いわけがないのですが、波多野さんは一切怒りません。驕ったところのまったくない、優しい人なんです。(よく居場所がわかったな…)
波多野さんとは知り合って一年以上、ときどき一緒にごはんを食べにいくのですが (大抵は波多野さんが語る IT BITES 論、DARK TRANQUILLITY 論を聞いているだけ)、そろそろ破天荒と言えば聞こえがいいですがズボラすぎる私の本性がバレてきました。まず、ほとんど携帯を見ない。パソコンもほとんど扱えない。その日は、Hits という楽器屋さんのギターマスター赤尾さんと素晴らしい出会いがあったのですが、LINEの友達追加すらやり方がわからずテンパってバーコードみたいなのを当たり前のようにカメラで撮影する始末。
「それでネットメディア運営って…大丈夫ですか?!」
大丈夫なわけがないのですが、ニヘラニヘラと笑いながらやり過ごすメンタルのメタルハートだけは誰にも負けません。
そうして、メタルなら何でも揃う焼鳥誠太さん (焼鳥とはこんなに美味しいものなのかと驚愕しました) に集結して深夜まで語っていたのですが、印象に残っているのがギタートーンの話でした。
例えば、赤尾さんが仰っていてとても納得したのが、イングヴェイの真骨頂って速弾きよりもトーンとチョーキングのピッチ、そして揺らぎ、すなわち耳の良さなんですよね。そのトーンを作り上げるのはやっぱり最終的には機材じゃなくて人間の耳と指なんです。もちろん、イングヴェイの機材に対する拘り、速弾きは凄まじいものがありますが。
そのギタートーンの美しさ、豊かさ、そして歌心でジェフ・ヒーリー以上のプレイヤーは存在しないかもしれませんね。ブルースをスポンテニュアスに歌わせる天性の才能。視覚のハンデはすべて聴覚に注ぎ込まれたのでしょうか。"Hell to Pay" は特にハードロック色も濃いので、深みのあるボーカルと共に全ロックファンにぜひ味わっていただきたい逸品です。
余談ですが、マスターは私が中高足繁く通っていたものの、友人が立ち読みを注意され豪快に店でツバを吐いたため行けなくなってしまった高松伝説のメタルCDショップ Hers をご存知で感激しましたね。まったく誰も知らないので、あの癖のある女店主も、BURRN! の点数切り抜き販促も、J-POP 憎悪の店づくりも、すべて夢か幻だと思っていました…
「シンさん!ポール・サブーがありますよ!焼鳥盛太さんはヤバイですね、あっ、オライオンだ。AOR も完備されてる…」
瞳がね、キラキラしているんですよ、この人は。いい笑顔だなあって。でも、赤尾さんも、マスターも、たぶん私もそうだったんじゃないかなぁ…幸せですよね、こんな話が今もできるなんて。これが真のシェイクちんぽでしょう。誰もあのころの好奇心を失っていないんです。これだから、いくつになってもロック小僧はやめられませんね。
一軒目はあかみち。J3でもなかなか勝てないカマタマーレ讃岐の本拠地ピカラスタジアムのそば、バイパス沿いにある丸亀の新店です。
普段からお水をワンカップの瓶で出すような、小汚いうどん屋ばかり回っているので、オシャレな店内に圧倒されます。
すだちトクトクです。すだち、にんじん、鶏肉を煮込んだ冷たいいりこダシをきめ細かいうどんに文字通りトクトクと注ぎます。思わずダシをすべて飲み干してしまったほど、旨味がポットにぎゅっと詰まっていますね。うどんの喉越しも最高!
天ぷらもアツアツサクサクです。旨塩が添えられているのも嬉しい。
あかみちちゃん (かわいい)
二軒目はとにかくとに麺。先日ご紹介した瀬戸晴れさんの近くにあります。とにかくとに麺なのです。
鶏卵とじうどんです!!決して親子丼ではありません!!氷にどぶ漬けしてあるサンガリアのグレープをグビグビ飲みながら、アツアツの鶏卵とじうどんをズルズルズル。至福のひと時ですね。
三件目は竹清。以前中央病院があった場所の向かい、亀岡町にあります。昭和43年創業。私も高校時代はよくお世話になりました。
私はここが高松で一番美味いと信じているのです。問答無用の3玉に柄杓で香り豊かなダシを注ぎます。暑い時期にこそ熱いかけうどん。極上のギタートーンが指から生まれるように、もちもちピチピチ極上のうどんもやはり職人の手から生まれるのです。奇をてらわないまっすぐな一杯がたまりませんね。
うどんの前におばあが 「なんにすんなー」と天ぷらの注文を取りにきます。半熟玉子とちくわは揚げたてが必ず食べられるシステムなのです。その時、名前を告げるのですが、昔はツレとよく、秋山、清原、デストラーデとか、清原、松井、落合とか告げて呼ばれるのをキャッキャとたのしみにしていました。(かわいい)
四軒目は高松の街中にあるお蕎麦屋さん、徳市。蕎麦はうどんです。
ここの十割山椒蕎麦がもう絶品。黄身と山椒を落としたピリ辛まろやかなツユにピカピカのお蕎麦を浸してズルズルーズルズルー。生姜醤油でいただくホカホカのじゃこ天と焼きおにぎりがまたあうんですよ。
お庭には子猫が (かわいい)
というわけでまさか十釜も続くなんて、ご愛読ありがとうございます。結局PITB にまったく触れませんでしたが、弊誌最新記事 BIFFY CLYRO を書いている途中、音楽とかトリオとかそういう具体的なことではなく PITB と通じる部分があるなあと1人嬉しくなってしまいました。よかったら読んでみてくださいね。
もううどんあんまり食べたくないんですが、もし仮に11釜がありましたらお会いしましょう。シェイクちんぽ!
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