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おばあちゃんはめちゃくちゃ食べ物をくれる

「サトイモあるけ?
もってけてー」

おばあちゃん家の帰り道は
いつも両手がふさがっている。

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初夏のような爽やかな暑さを感じる週末の午前、
お正月ぶりに
父と私はおばあちゃん家を訪ねた。


到着するや否や、
元気みなぎるおばあちゃんが畑のわきで
長ネギの皮をはいだり根のヒゲ部分をもいだりと忙しなく働く姿が目に入る。


「誰だーーーー?!」と
孫を忘れるご老人を装うボケを
早速かましてきた。


家に入ると、働き者のおばあちゃんは
一息付く間もなくキッチンに入り何かし始めた。


「ご飯食べてきたんかあー?」
と、訪問したときの常套句で迎え入れてくれる。

「食べてきたよ」と伝えれば、

「ほーけー、お米食うか?」

こちらの言葉を聞いてか聞かずか
ハイカロリーな返事をくれるのももうお決まりだ。


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一連の会話がひと段落して
居間でくつろいでいると

「コトン」
無言でたくわんが突き出された。


「食べてきたのでお構いなく〜」
父が伝えると、

意外とすんなりとおばあちゃんはキッチンの方へ吸い込まれていった。


と思うのも束の間。
やはり伊達に二、三十年"おばあちゃん"
をやっていないおばあちゃんがそこで引き下がることはなく

「はいよ」と枝豆が出てきた。
ここは居酒屋なのだろうか。


「食べてきたので本当大丈夫ですから…!」

遠慮がちに断りを入れる父に
ヒャとケの間をとったような笑い声を上げる
おばあちゃんは楽しそうだ。


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しばらくして再びくつろいでいると、

煮菜食えてー」
わらびの酢で和えたんの」

と新たな2品がテーブルに並べられた。

居酒屋というより、
老舗のお惣菜屋に近い品揃え。


「コレ食えさ」

あれやこれやとおしゃべりを再開していたら、
新たに目の前に投げ出されたのは
高級そうに個包装されたマドレーヌガトーショコラ

勘違いしていた、ここは洋菓子店だったか。


突然の近代的食物に、貰い物かと聞いてみると
お仏壇さんにお供えしていたものみたいだ。

昔の人は、習わしを重んじていて
すばらしいなあなんて
思い巡らせていたら

「ほれ」と
オレンジ色の丸いものを手渡された。


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どうやらおばあちゃんは
皮をむいて食べてほしいらしい。

「みかんではないから、ぽんかん?
はっさく?
あ、いよかん?」
と当て出すと、


「オレンジでしょ」
父も参戦してきた。

「いやオレンジはぜったい違う」


「じゃー、グレープフルーツ」
いちいちボケたがりな父に当てる気はないらしい。

甘夏らこって!!」

一連のやり取りを見守っていた
おばあちゃんが、

果物屋の店先ばりの勢いで
絶妙なタイミングを見計らいオチをつけてくれた。


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長らく居座り、
帰ろうかと腰を上げると
キッチンから張りのある声が飛んでくる。

ネギ食うか?
かぼちゃは?人参は?
きのこはあるけ?」

いつのまにか
威勢のいい八百屋にきていたみたいだ。


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きわめつけの去り際には、
最後の追い込みかとばかりに
こんもりと食材を手渡してくる。

こちらが制しても、
おばあちゃんの溢れんばかりの優しさは
とどまるところを知らない。


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両手にいっぱいの野菜とお菓子とを抱えて
父の待つ車に乗り込むと、

「ほれ飲めて」
甘酒の缶ジュースと、缶コーヒー
車の窓からねじ込まれた。

玄関先からパタパタと小走りでやってきた
おばあちゃんは、
新業態の飲み物配り屋を開店したらしかった。


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帰宅して食べ物をしまうと、
冷蔵庫はすき間がなくなるほどパンパンに
満たされた。

幸せでいっぱいの冷蔵庫をみていると
次々と献立が浮かんでくる。



今日の夕飯は
おばあちゃんの育てたサトイモを、父が煮つけた
煮っころがし。


「これ美味しい!」

「なかなか美味くできたなー」

「よくこんなに上手く作れるよね」

「えーそんなに〜?」

「いまのはおばあちゃんの栽培の方ね」


通例のやりとりを交わしながら
また穏やかに
今日が終わってゆく。



#やさしさを感じた言葉
#おじいちゃんおばあちゃんへ

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