父とのちゃんぽん、畳からアンモニア臭
夏は言う、冷やし中華を一足先にはじめてくれるな。
梅雨、雨上がり。虹が仕掛ける彩り勝負へ互角に張り合うものこそ。
木曜日の昼、父とちゃんぽんを食べた。(多国籍勝負であることかつ原料は問わないが、パエリアはシエスタで足を取られ不戦勝である)
真平日。郊外のショッピングモール。
閑散としているかと思いきや、そこそこ賑わうフードコートになにか安心感をおぼえる。
ちゃんぽんは長崎県民のソウルフードだからといって、囲い込まずに全国展開した長崎県民はカッコいい。
大学進学を機に、地元を離れて上京した。
それから8年間東京〜神奈川を拠点に生きてきたが、先日から地元にUターンしている。
Uターン、Jターン、Iターン
名付けた人はセンスがありすぎる。
地元のソウルフードは、赤茶色で芳醇な匂いがする。出身地を明らかにしたくないから詳しくは描写しない。
美味しいけど、全国展開はしていなくて、保守的な県民性が表れているのかもしれないし関係ないかもしれない。
ちゃんぽんという美味しい響きに、アンモニアという言葉を並べるのは、下品である。
にもかかわらず並べたことを、寛容な心に許されることで、文章を進めることができる。
昔飼っていた犬は、和室のリビングでありリビングの和室に敷かれた畳にたいして、躊躇なくあちこちへ排尿していた。
躾がなっていないと言われればその通りで、しかしそれも一つのユニークなメモリー。
記憶というものは年々朧げに、モヤがかかり、くすんでいき、微かになりゆくもの。
うすらとしていくワンコとの日々を、畳に染み付いたアンモニア臭がふわりと思い出させてくれている。
畳寝転び 鼻突く香り 君想う
近頃は雷雨が激しく、梅雨もクライマックスに近い。
アルミ傘の中棒から香るポテト臭を満喫したら、例年通りとも言えてしまう災害級に暑い夏を迎え入れようではないか。
ポテトだかアンモニアだかちゃんぽんだか、統一感がありそうでない話である。
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