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考えるな。やれ!


ズシン。

ものすごい衝撃が、ハートに落ちた。

(あ。これが、図星ってやつ……)


-大学4年生の冬-

「このプランにしたら、こうなるから、これをこうしたら良いと思ったんですが、そうすると…(ごちゃごちゃ)」

卒業制作が佳境を迎えていた。

"Common Style"というテーマで
若者と高齢者が共住するアパートメントを
計画していた私は
尻尾を追いかける犬に負けないくらいに
同じ所をグルグルと、思考が回っていた。

学費をすべて、奨学金とアルバイトで賄い
徹夜で課題。
それでも、遊びたい至りを抑えられず
無茶苦茶な生活だ。

そのせいか、よりによって
大学で一番大切ともいえる、この冬休みに
寝込んでしまったのだ。

(まずい…終わらない…)

そんな事を、思ったところで
弱りきった身体は動かない。

(どうしよう)

休みがあけ、終わりが全く見えない状況に
私は、焦っていた。
進みの悪さに、とうとう、見かねたのか
ゼミの教授が話しかけてきた。

あまり覚えていないが、きっと、そのときも
私は、グルグルと尻尾を追いかけていたんだと思う。

言葉少ない優しく厳しい教授が、私に放った。

ニッコリとした笑顔で。ハッキリと。

「考えるな。やれ!」


泣きたいくらい衝撃だった。

まさしく、制作に対して
ほんとうに手を動かしてなかったのはもちろん
わたしの、性格そのものに響いたからだ。

初めてかもしれない120%の図星に
「はい…」と、誤魔化したように笑うと
そのまま
ひたすら、定まらない思考を仮定して
手を進めた。

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結果ギリギリ入賞の一個下。8位だったと思う。
わたしにとって、ぴったりな最高の結果。

教授のおかげだ。

聞こえのいい、言い訳をしながら

周り道を恐れた結果、身動きが取れない。
無駄足を踏みたくない。
やり直したくない。

気づかぬ間に、溜まりに溜まった慢心を
拭い去り
手を動かして、思考と実験に没頭させてくれた
その言葉は
今もわたしのお守りだ。


お元気ですか?
ありがとうございます。


p.s  画像は、卒業祝いにと、教授の旅のスケッチに、メッセージを添えてくださったもの。改めて調べると、祇園の花見小路通の建築物のようにみえる。
落ち着いたら、見に行って、私もスケッチしてみよう。


#一度は行きたいあの場所


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