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note始めました。美味いトマトとまるかじりできる体験を届ける農家です。

初めまして!岐阜県高山市で『まるかじり農園』というトマト農園をしている石垣拓といいます。

普段はTwitterで発信していますが、noteも始めてみることにしました!
一丁前にインタビューをしてもらったので初回の今回はそれを投稿してみようと思います。

まるかじり農園代表:石垣 拓(いしがき たく)
岐阜県高山市国府町で生まれ。高校卒業までを地元で過ごし、大学進学を機に愛知県で一人暮らしを始める。大学入学後、半年で中退しバイト先の飲食店に契約社員として入社。その後正社員となり4年間ほど勤めた後、バイク事故をきっかけに地元にUターンし橋場農園で農家としてのキャリアをスタート。3年後に独立し2014年より「まるかじり農園」を経営。
Twitter:まるかじり農園
webサイト:まるかじり農園

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経営者になりたいと思っていた学生時代

ーー まず拓さんの生い立ちから教えていただけますか?

拓:
僕を育ててくれたのは、父母ではなく祖父母でした。
少し複雑なんですが、父が20歳、母が17歳の時に僕を産み、そして2歳になるころに両親が離婚しました。その後、男親1人で育てるのは厳しいからということで、父方の祖父母に引き取られて育ててもらったんです。

祖父母の兄弟がたくさんいたので親戚も多く、小さい頃から周りの人にとても可愛がってもらったことを幼心に覚えています。
そうした大勢の人と接する環境が日常だったこともあってか、保育園も友達も大好きで、わんぱくな幼少期を送っていました。


そのまま地元の小学校、中学校と進み進路について考えるようになった頃、学校で習う一般科目の勉強に違和感を抱くようになっていました。こんなこと勉強して意味があるのかなぁと。それで、高校は普通科ではなく、情報処理や簿記などが学べるビジネス情報科がある高校に入学しました。
中学まで、勉強はあまり好きじゃなかったんですが、高校から始まった科目には面白さを感じ、情報処理や簿記の勉強は特に頑張りました。
大学には、自己推薦を利用して愛知大学の経営学部会計ファイナンス学科に進学しました。

ーー 専門分野が学べる高校を選択したことが最初の大きな転機のように感じます。大学で経営学部を選んだのはどんな理由からだったんですか?

拓:
漠然とですが、経営者になりたいと思っていたんです。なので、そのためには会計などのお金周りの知識は学んでおいたほうがいいだろうなと。
でも大学進学を機に地元から離れ、外の世界を見たら経営者になるには学校の勉強より、社会に出て実践経験を積んだ方がいいなと思って、大学入学から半年で中退しました。
単純につまらなかったんですよね。想像して大学生活より、新しい刺激や機会が無くて。
それで遅かれ早かれ社会に出るなら早い方がいいだろうと思い大学を辞め、当時バイトしていた飲食店に契約社員として入社しました。

ーー 最初のキャリアは飲食店からだったんですね!

拓:
はい、でも僕はもともとはアパレル関連のことを仕事にしたいなと思っていたんです。大学に行ったのもアパレル会社をやりたいと思っていたからです。
なので、大学を辞めようと思った際には、直接アパレルメーカーの方にお話を伺いにも行きました。
ただ、実際に話を聞いてみると、自分の思っていた理想とは違いました。
僕は自分が好きなものを、好きだと思ってくれる人に選んでもらいたい!という思いが強くあり、話を聞く前はそれができると思っていたんです。
でも実際は、流行りの服をとにかく売ってなんぼの世界で。これは自分のやりたいことではないなとはっきりしたので、アパレル業界で働くことは選択肢から外しました。

ーー それでアパレルではなく、飲食の道に進んだんですね。そこでは主にどんなお仕事をしていたんですか?

拓:
主に接客と調理補助を担当していました。
正社員になったあとは、野菜ソムリエの勉強もしていました。
会社の戦略として、色んなジャンルの専門知識を持ったスタッフの採用、育成に力を入れていたんです。例えば、バーテンダーをやってる人やワインのソムリエ、お肉にすごく詳しい人などといった感じです。
それで、僕も次のステップにいきたいなと思ったときに社長との面談で言われたのが「今、野菜ソムリエって流行ってるからお前とってこい!」ということだったんです。


僕が取ったのは野菜のソムリエの初級(旧:旧ジュニア野菜ソムリエ)というもので、野菜や果物の旬の時期や、産地などをレポートにまとめたり、自分でレシピを作ることも経験しました。なので今思うと、その頃から野菜には携わっていたんですよね。

すっぱり決断した飛騨へのUターン

ーー すごく充実しているように思うのですが、その後どんな経緯があって飛騨に戻ってくることにしたんですか?

拓:
その通りでとても充実していました。実は愛知で自分の店を出す予定もしていたんです。
当時勤めていた店の料理長から、自分が店を出すから共同経営者として店長をやってくれないかというオファーをもらい、話を進めていました。
ですが、その準備の途中でバイク事故を起こしたんです。働き始めてから2度目のバイク事故でした。それで「あぁこれはなんか流れが来てないな」と直感し、飲食店は辞めて地元に帰る決断をしました。

ーー 飲食店経営のオファーまであったのにすごく思い切った決断ですね。地元では最初から農業をしようと思っていたんですか?

拓:
最初から絶対に農業をしよう、とは思っていたわけではなく、色々と仕事を探しました。でもあまりしっくりくるものがなく、それなら全く足を踏み入れたことのない農業に挑戦するのも面白そうかなと思ったんです。
それで、丹生川町で一番大きい橋場農園さんに面接をしてもらいました。
その時、橋場農園さんは女性しか募集していなかったんですが、ハローワークの担当の方を通して面接だけでもしてもらえないかとお願いしたところ、話を聞き入れてくれて働かせてもらえることになったんです。
そしてこの農園で3年ほど働いた後、2014年にトマト農家として独立しました。

ーー 独立した当初から今のような個人販売はしていたんですか?

拓:
いえ!全くしていませんでした。むしろ個人で売ることには興味もなく、JAさんに卸すので十分だと思っていました。
JAさんが買い取ってくれる価格は決して高い水準ではないけれど、安定しているのでそれで満足だなと。
そんな考えが変わり始めたのは、頼れる我が農園の敏腕デザイナーのいくえさんに出会ってからです。デザインが最高なだけでなく、僕の大事なビジネスパートナーであり妻です。

知り合ったきっかけは僕が借りている農地の地主さんの紹介で、初めて自分の名刺を作ってもらったんです。それから交際を始め、結婚しました。

彼女と過ごすようになってから、農業に対する考えや見える景色が段々と変わり、自分の商品は自分でも売りたい、もっと自由な農業がしたいと思うようになりました。

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自由な農業をするために

ーー いくえさんとの出会いは、プライベートにも仕事にもすごく大きな変化をもたらす出来事だったんですね!その後、どんな変化や挑戦がありましたか?

拓:
自由な農業をしたいという思いから、2018年に同世代の農家9名で共同出荷団体「THAT.」を設立したことは、新たな挑戦でしたね。
同じ想いを持つ同世代の農家仲間に声をかけ、個人ではまかないきれない出荷量の確保や、それを安定して供給できるようにするために団体となって活動し、スーパーや八百屋さんへ直で出荷をしています。

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THAT.のメンバー

トマト、桃、スナップえんどうなど、作っているものは異なりますがそれぞれ切磋琢磨、協力し合いながら自分たちらしい農業をしています。


ーー アパレルの道を選択しなかったというお話からも、拓さんにとっては「自由に自分が好きなものために」という価値観をとても大事にされているように感じました。

拓:
そうですね、仕事の内容は変わっても根底にはそういった思いが昔からあります。
昨年末にみなべさん(インタビュアー)にしてもらったブランディングの講座のおかげで、「まるかじり農園」というブランドについてすごく考えさせられたんです。


そして僕たちにとって何が一番大事なのかと突き詰めたときに出た結論が作ってる自分たちが心底美味い!と思えることが全てだということでした。
「こだわりをもってこんな作り方をしています」とか「デザインにはこんな思いを込めています」とか、これも確かに大事だけど、サブ的な要素だなと思うんです。
本質的なとこはそこじゃなくて、作っている人が美味いと思っているかどうか。それが全てだと思っています。
人にはそれぞれ好みはあるので、美味しくないと感じる人もいる。それは仕方のないことだと思うんですよ。

自分が胸を張って「おいしいトマトをつくっている」と言えることって難しいことだと当初思っていましたし、そもそもそんな風に感じていませんでした。でも、ブランディングの講座で自分の農業を見つめ直す機会があったり、ほかのトマトと比較してみたり、遠方に住んでいる親族や友人に食べてもらって感想をもらうことで「おいしいトマトをつくっている」自信と確信が繋がっていくような感覚になっていきました。

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EC販売やSNSで見つけた新たな可能性

ーー ブランディングの講座をさせてもらったのが昨年末だったので、その後の実行力が本当に素晴らしすぎます!最近始められたEC販売についてもお聞きしていいですか?

拓:
はい、今年の8月からメルカリが始めたメルカリShopsという新しいプラットフォーム上でEC販売を始めました。そこでも自分たちの主観を基準にして商品を選んでいます。

傷がついていたり形が悪かったりすると、味は変わらず美味しいにも関わらず規格外となり、JAさんや市場ではほとんど値段がつきません。
これはどこの農家さんもそうなんじゃないかと思うのですが、そういった規格外のものは自分の家で食べたり、ご近所さんにあげたり、それでもどうしても食べきれない分は処分となります。
そんな規格外のトマトを「無選別 訳ありトマト」としてメルカリShopsで出品したところ、ありがたいことに多くの方に購入していただいたんです。

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見た目は多少悪くても、自分たちが美味しく食べられるトマトかということを基準に、訳ありトマトとして出品し、全国のお客様に届けられたこと。そして「甘くて美味しかった」「しっかり濃厚な味でした」「早速まるかじりして食べました」といったお客様からいただくコメントが本当に嬉しかったですね。


ーー ECを始めていなかったら、得られなかった喜びや発見ですね。どんどん挑戦し続けている姿をSNSでも拝見しています。

拓:
ありがとうございます。今年の3月からまるかじり農園のTwitterアカウントを作って発信にも力をいれています。トマトのことはもちろんですが、僕は家族との日常なんかも載せるようにしています。
2歳の娘がいるんですが、うちの子トマトが大好きで、畑にもよく付いて来てくれるんです。
子供にこんな体験をさせてあげられるのってすごくいいことだなって娘が生まれてから思うようになったんですよね。こういった点も高山の、そして農家の魅力として発信していきたいと思っています。

ーー 娘さんがトマトをまるかじりしてる姿、本当に愛らしくて見るたびついにやけてしまいます。まるかじり農園ってすごく素敵な名前ですよね!

拓:
ありがとうございます。僕もとても気に入っているんです!
まるかじりって安心安全だからできることじゃないですか。
そして、鮮度が良くて、おいしくないとまるかじりはしたくないですよね。
それで最近、僕たちはトマトを売っているんじゃなくてまるかじりできる体験を売ってるんだって思うようになったんです。

安心、安全、鮮度の良さ、そしておいしさ。
まさに、まるかじりって言葉がこれら全てを表しています。

1年中トマトを楽しめる農家になるために


ーー まるかじりという体験、とても素敵な考え方ですね。
   では最後に、これからの目標ややってみたいことを教えてもらってもいいですか?

拓:
冬場は農家としての活動ができないんですよね。特に飛騨地方は雪国なので活動できない期間も長いです。なので1年を通してトマトでやっていける農家になることが当面の目標です。

今実際に挑戦しているのは、トマト染めや青いトマトで作るピクルスといった加工品の商品開発です。

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トマト染めは、アルバイトの子が染め物を勉強していたので、トマトの葉や枝、実で洋服などを染められないか?と浮かんだアイデアです。
その他の青いトマトのピクルスも彼女が試しで作ってきてくれたりと、前向きでパワフルで今まで僕になかったアイデアや刺激をもらっています。

新しい商品や食べ方などを開発して、捨てられるだけだった青いトマトの流通を促すことで少しでもトマトに携われる期間を伸ばしたいです。

前半にもお話した同世代の農家の仲間と立ち上げた共同出荷団体「THAT.」での活動ももちろん、まるかじり農園に関わる人が自由に楽しく農業と関われたり、次の世代がまたそんな僕たちを見て、農業を職として選んでくれたらいいな。
なんてちょっとかっこいいことを言って締めくくってみます。
みなべさん本当にありがとうございました!

ーー 農家さんの抱える課題の解決に繋がる新しい取り組みを応援しています。そして新商品もとても楽しみです!こちらこそ今日はありがとうございました!

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【インタビュー&執筆】
みなべさとこ
Twitter:@satopeminako

【撮影】
Mana Kato
Instagram:@kt____mn

サポートいただきありがとうございます! より美味しいトマトとまるかじり農園の日常をお届けできるよう、家族を大切に、日々まわりに感謝し過ごしていきます。