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一輪の一生

今年は外でお花見ができないからピンクの花を一輪連れて帰った。

角にある小さなお花屋さんに初めて入ってみることにした。
ぐるぐる回り、結局店の一番目立つところに置いてあった花に決めた。

花を買うことはわたしにとってまだ贅沢なことだけど、この贅沢が生活を飾るひとつの手段なのだとしたら厭わない。


この花が枯れてゆく過程を知ることのできないまま部屋を去る。

思ったよりも部屋の外の状況は深刻で、わたしは地元に帰ることにした。

毎朝水をかえる手間、花びらをそうっとなぞり感触を確かめて一番外側の花びらだけが色濃く枯れてゆくことに愛しさを感じる日々。

下に住んでいる管理人さんにプレゼントし、わたしはキャリーケースを引いて駅に向かう。

大切に花の生涯を見守ってくれるひとが近くにいてよかったな。

短い短い一輪の一生を共にできる生活の美しさをまたいつか、今度は部屋の外へ出て。


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