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同性カップルの備え②【遺言編】

こんにちは。まるもちです。

同性のパートナーと一緒に暮らしています。二人とも女性、同性の同棲です。

パートナーも私も会社員として働き、世の中の夫婦と同じような日常ですが、同性婚が認められていない日本では、法的に二人の関係性を表すものは何もありません。

その中で、パートナーと二人でマンションを購入するために公正証書を作ったり、二人で安心して暮らしていくために制度や法律を調べたり、少しずつ動いているところです。

備忘録の意味でも、今まで調べてきたことを【相続編・遺言編・相続税編】の3回に分けてまとめます。

若い同性カップルさんや今の制度に不安を抱いている方に読んでいただけたら嬉しいです。

▽相続の基本については、前回こちらにまとめました。

同性カップルの備え【相続編】/まるもち

同性カップルは、現在の日本の法律では相続する権利がない、というお話でした。

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家族とトラブルにならないために

二人の関係性を示すものがない以上、カップルのどちらかに万が一のことがあったとき、親族とのトラブルを回避するための対策が必要です。

自分の財産を、パートナーにすべて残したいのか?親や兄弟姉妹、パートナーを含め均等に渡したいのか?様々な気持ちがあると思います。

自分の財産をどのように受け渡すか、自分の意思を公的な形で残しておくことを、遺言(ゆいごん・法律上は「いごん」)といいます。

20、30代で遺言のことを考える日がくるとは、という感じですが、同性愛者に限らずどんな人でも事前に自分の考えを整理して残しておくことは大切かなとも思います。

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遺言とは

■遺言は誰でも作れるの?

遺言は、15歳以上で自分の意思を示せる人であれば誰でも作成することができます。遺言は一度作成したあとに、その内容を撤回したり、一部を変更したりすることもできます。遺言を作成してから時間が経ち、人間関係や法定相続人の構成が変わることもあるからです。

■遺言の効果

相続には、

1)法定相続(法律で定められた相続)

2)指定相続(意思を反映させた相続)

の二つがあり、遺言がある場合には「指定相続」が優先されます。

遺言を残すことで、本来、相続人になることができないパートナーを、指定相続人にすることができます
遺言で「パートナーにすべて相続したい」と記しておけば、法定相続人である親や兄弟姉妹がいたとしても、原則はパートナーに相続することができるのです。

ただし、自分の意思を書いたからといって、ただの走り書きだけでは正式な遺言にはなりません。

正式な遺言でないと、遺言の効力はないものとされてしまいます。正式な遺言を作るには、次の3つの方法があります。

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遺言を作るには

遺言は、以下のいずれかの方法で作成する必要があります。主流は(1)と(2)の方法といわれています。

1)自筆証書遺言…自筆で作成します。PCで作成したものはNGです。遺言の全文と、日付、氏名を書いて、押印が必要です。

最近の改正で、相続財産の目録など詳細部分については、自筆でなくPCでの作成でもよくなりました。自筆の場合は、遺言の偽造等を防ぐために、家庭裁判所に遺言の内容を確認してもらう必要があります。

・メリット:費用がかからない

・デメリット:自宅保管のため紛失の心配あり

2)公正証書遺言…本人が伝えた内容を、公正役場の公正人が遺言として作成する方法です。

・メリット:記載の内容等、相談しながら進めることができる、紛失や偽造の心配がない

・デメリット:作成費用がかかる(数万~十数万円程度が一般的?)

3)秘密証書遺言…自筆した遺言に、署名押印し、封印したのち、公証人が日付等を記入する方法です。あまり一般的ではない作成方法ですが、内容の詳細を明かしたくない場合には有効です。

・メリット:遺言の内容を明かさずに、遺言の存在だけを公証人に証明してもらえる、PCで作成してもOK

・デメリット:自宅保管のため、紛失の心配あり

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遺留分(いりゅうぶん)とは

上の方法で遺言を作成すれば、パートナーも遺産を相続することができます。ただし、すべてを相続できない場合があります。

日本の法律では、一定の法定相続人に、「最低限の相続権利は残そうね」という決まりがあるからです。この最低限の取り分のことを、「遺留分」といいます。

■同性カップルにとって遺留分とは?

遺留分を受け取る権利があるのは、配偶者と親のみです。(同性カップルにおいては親のみになります。「愛人に全財産譲るよ」なんていう場合に配偶の最低限の権利が守られる仕組みになっています。)

兄弟姉妹は法定相続人ですが、遺留分はありません。

親の遺留分(最低限の取り分)は、相続財産のうち、1/3と定められています。同性カップルで両親がいない場合には、遺留分を請求できる人はいない状態になりますので、遺言に残した相続内容を100%反映できることになります。

■同性カップルの遺留分の例

例をあげてみます。同性カップルAとBのうち、Aが亡くなり、Aの財産は3,000万円あったとします。

Aは遺言で「すべての財産をパートナーのBに相続させる」と残していたとします。しかし、Aの親は「遺留分」として3分の1にあたる1,000万円分は受け取る権利があるということです。両親がいる場合は、二人で1,000万円(一人500万円ずつ)ということになります。

もし、財産3,000万円=不動産の場合、残されたBは、Aの親から、遺留分として現金1,000万円を請求される可能性があります。

手持ちの資金から捻出するのか、不動産を売却して資金を用意するのか、どちらにしてもパートナーの負担は大きくなってしまうので、この事態はできるだけ避けられるように準備したいですね。

■遺留分には有効期限はあるの?

Aの親が、遺留分を請求することができるのは、遺言のことを知ったときから1年以内とされています。

遺言のことを知ったあとに、親が「遺留分を請求させてね」と1年間伝えてこなければ、遺留分を受け取る権利はなくなるということです。

でも、Aが亡くなってから、Aの両親が遺言の存在を知り、そのときになって初めてパートナーのBとAの両親が、遺留分の話し合いをし、どう相続するか最終決定する、という流れは、あまり想像したくないものです。

パートナーにすべてを相続させたいなら、親には「遺留分は請求しないでほしい」ことを伝えるか、親に遺留分を残したい場合は、パートナーにそのことを事前に伝えておくなど、トラブルを避けるためには事前のコミュニケーションが必要かなと思います。

親の方から「遺留分をもらわない」という意思表示があった場合には、事前に家庭裁判所に行って、遺留分放棄の手続きをすることもできます。

また、もしどうしても事前の話し合いが難しく、様々な事情でパートナーに財産を残したい場合は、遺言の中に、「こういった事情で、遺留分は請求しないでほしい」と付け加えることもできます。

遺留分請求の権利が消えるわけではありませんが、自分の意思とその背景まで伝えることで、トラブルを避けられる可能性は高くなると思います。

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次は相続税について

今回は、パートナーに財産を残すための遺言について、まとめてみました。公的なところで手続きをして遺言を準備できれば、同性パートナー間でも相続はできます。

次回は、相続税についてまとめる予定です。

今の日本では、配偶者にはなれない同性カップル間での相続には、相続税がかかります。


備えることがたくさんありますね。日本でも同性婚が認められたら、こういった手続きの手間も不安も心配も諸々解決なんですけれども。と思いつつ、今できることをしていきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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※2020年4月時点の内容です。法律の専門家ではないため認識の誤りなどがあった場合はご容赦ください。

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