同性カップルの備え①【相続編】

同性カップルには備えが必要

こんにちは、まるもちです。
同性のパートナーと二人暮らしをしています。二人とも女性です。いわゆるLカップルです。

2019年に二人でマンションを購入しました。二人ともマイホームの居心地をとても気に入っています。

家を購入するにはいくつか選択肢がありますが、私たちは色々検討した上で、共有名義のペアローンを組むことにしました。

そのときに身を持って実感したことは、同性婚が認められていない今の日本では、同性カップルは異性カップル以上に備えが必要になるということです。

いざというときに困るのは、自分とパートナーとお互いの家族です。

必要な備えは人それぞれですが、それでも同じ境遇の人にとって何か参考になればと思い、私たちの場合についてまとめてみます。

家購入の進め方については、パートナーのハリコがブログでまとめていますので、よろしければこちらをどうぞ。

LGBTハリコの耳寄りメモ(カテゴリー:家)https://lgbt-note.com/category/house/

こちらのnoteでは、「法的な備え」について以下の3つにまとめたいと思います。

・同性カップルの備え①【相続編】(このページ)

同性カップルの備え②【遺言編】

同性カップルの備え③【税金編】

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同性カップルに必要な備え ー相続編

不動産の相続を一言で表すと、その物件の持ち主が亡くなったときに、その物件は誰のものになるの?ということです。

まずは家を購入したとき、二人で暮らしている間、相続が発生したとき、その物件は誰のもの?をまとめてみます。

■物件を購入したとき

同性カップルで物件を購入する方法は、主に以下の2つになります。

・片方が単独名義で買う

・二人で共有名義で買う

単独名義の場合、その物件はローンの名義人の持ち物になります。パートナーが金銭的にローン返済に協力していたとしても、です。

ペアローンを組んで共有名義とした場合は、「一つの物件を二人で共有している」状態になるので、二人とも所有者になります。

ペアローンを組む場合、「持ち分(もちぶん)」を決めます。持ち分とは物件に対する所有権の割合のことです。50平米の物件を半々で所有する場合は、「25平米ずつ各々のもの」ということになります。

持ち分の割合は、均等(50:50)にもできますし、ローン負担額に応じ、(60:40)など割合を定めることもできます。

共同名義の場合、持ち分割合も含めて二人の名前が登記されます。この登記が完了して、晴れて二人名義の物件となります。

登記とは?:権利関係などを公示するため、一定の事柄を法務局に備える登記簿に記載すること、またはその記載をいいます。登記によって、一定の事柄を一般に公開することで、権利の内容を明確にし、取引の安全と円滑を図るための重要な役割を果たします。

引用:LIFULL HOME`S不動産用語集https://www.homes.co.jp/words/t5/525003044/より

■二人で暮らしている間の権利

二人で物件を50:50の割合で所有しているケースをあげます。二人で所有しているので、様々な権利をお互いに持つことになります。

例えば、民法で定められている内容では、以下の内容があります。

共有名義の場合、室内のリフォーム等の大がかりな改修や、物件の売却など、大事な判断は一方の判断ではできない、共同所有者の合意が必要、とされています。大事な判断の際には、持ち分割合(※持ち分価格)の過半数の同意が必要になるからです。

あまり考えたくはありませんが、10年20年と長く暮らしていると、二人の関係性が変わることもないとはいえません。

そうなったとき、単独所有の場合は、物件の売却など二人の生活に関わる大事な判断を、所有者だけの判断で進められるということになります。

その物件で暮らす間のお互いの対等な権利を守るという意味では、共有名義は将来的な可能性に対するリスクヘッジにもなるといえます。

■片方が亡くなったとき

これもあまり考えたくありませんが、同性カップルAとBがペアローンを組んでいて、Aが亡くなった場合、団体信用保険の適用によって亡くなったAのローン返済債務は免れます。Aの分の返済額はゼロになるということです。Bの分のローン返済は残ります。

Aが死亡し、Aに相続人等がいないときはその持ち分はもう一人の共有者Bにのものになります、と民法では定められています。

しかし、Aに相続人がいる場合は、亡くなったAの持ち分は法律で定められた法定相続人に相続権があるので注意が必要です。

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相続の基本

相続とは、亡くなったときに一定の相続人が、財産を受け継ぐことです。法で定められた相続人は、配偶者や子どもなどです。私たち同性カップルには現行の制度では相続の権利がありません。

パートナーシップ証明書やパートナーシップ合意契約公正証書も、相続についての法的効力はありません。何年一緒に暮らしていても、家族ぐるみで良好な関係を築けていても、生計を共にしてローンを一緒に返済していても、です。

亡くなったAの持ち分は、親族のものになります。

この相続の基本に対抗するためには、遺言(いごん)の作成が必要になりますが、遺言については次回のページにまとめます。

■相続する順番

亡くなったAに複数の相続人がいる場合は、各相続人が分割して相続を受けます。

遺産を相続する割合を、「相続分」といいます。相続分の割合は後述しますが、相続が優先される順番は以下の通りです。

・第一位…配偶者(=同性カップルの場合は、ここが不在)

・第二位…子ども

・第三位…親(父母)

・第四位…兄弟姉妹

■相続の観点でいうと合理的な「養子縁組」

子どもは配偶者の次に相続する権利があります。つまり、法律上は配偶者となる人物がいない同性カップルにとっては、子どもが相続において最も優先されることがわかります。

現行の制度で相続権を確保するためには、同性カップルで「養子縁組」を結ぶむことは合理的であるといえます(戸籍上、親子関係となることについてどう思うかは別の問題として)。

■相続の割合は?法定相続分とは

各相続人が相続する取り分(割合)を定めたものを、「法定相続分」といいます。

文字で書くとわかりにくいので、同性カップルの具体的なケースごとに、相続の仕方を見ていきます。

ケース① 同性カップルAとBで、50:50で物件を所有、亡くなったAの両親は健在の場合

☆原則:配偶者も子どももいない場合は、すべて両親に相続されます。

▷結果:Bの持ち分50%はそのまま、Aの父親に25%、Aの母親に25%が相続される

ケース② 同性カップルAとBで、50:50で物件を所有、亡くなったAの両親も亡くなっているが、兄が2人いる場合

☆原則:子どもも両親もいない場合は、兄弟姉妹に分割して相続されます。

▷結果:Bの持ち分50%はそのまま、Aの兄二人にそれぞれに25%ずつ相続される

ケース③ 同性カップルAとBで、60:40で物件を所有、亡くなったAの母親は健在の場合

☆原則:どちらか一方でも親が健在の場合は、親に相続されます。

▷結果:Bの持ち分40%はそのまま、Aの母親に60%が相続される

ケース④ 同性カップルAとBで、Aの単独名義100%で物件を所有、亡くなったAの両親は健在の場合

☆原則:単独名義の場合は、すべて相続人に相続されます。

▷結果:Bの持ち分は0、Aの父親が50%、Aの母親が50%を相続する

ケース⑤ 同性カップルAとBで、50:50で物件を所有、AとBは、Bを子として養子縁組を結んでいる。亡くなったAの両親は健在の場合

☆原則:養子縁組の場合、養子も実子と同じ扱いになります。両親が健在の場合でも、子どもに第一位の相続権があります。

▷結果:Bの持ち分が100%となる


ちなみに、同性婚が認められ、パートナーが配偶者とみなされた場合は、以下のようになります。

・相続人が配偶者のみの場合

▷結果:所有権はすべて配偶者に相続されます。

・相続人が配偶者と子どもの場合

▷配偶者に2分の1、子どもに2分の1が相続されます。

・相続人が配偶者と親の場合

▷配偶者に3分の2、親に3分の1が相続されます。

・相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合

▷配偶者に4分の3、兄弟姉妹に4分の1が相続されます。

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法定相続以外の選択肢

いくつかケースを挙げましたが、確実に相続権を得るには、現時点では養子縁組が確実な方法ではあります。それでも、様々な考えで養子縁組を選ばないカップルも多いと思います。

その場合は、相続に関わる遺言を作成することで、民法上で定められた法定相続とは別の相続(指定相続)を行うことができます

遺言をこの年で考えるとは…と思いつつ、安心して長く暮らしていくためには、「もしこうなったらこう対処する」という想定を、たくさん考える必要がありそうですね。

遺言の作り方や効力については、次回にまとめます。

※2020年4月時点の情報です。法律の専門家ではないため認識違いがあった場合はご容赦ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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