同性カップルの備え③【税金編】

こんにちは。まるもちです。

同性のパートナーと一緒に暮らしています。

同性カップルが将来に向けて備えておいたほうがいいこと、第三回は【相続税編】です。

第一回の相続編、第二回の遺言編を通して、同性のパートナー間でも一定の手続きをすれば遺産の相続はできる、と書きました。

▽前回の記事はこちら

第一回:同性カップルの備え【相続編】/まるもち

第二回:同性カップルの備え【遺言編】/まるもち

パートナーへ遺産を相続することはできますが、法律で定められた親族と同じようにはいきません。戸籍上身内でない同性のパートナーに相続をする際は、税金の仕組みも変わってきます。

今回は、相続にかかる税金について、知っておいた方がいいことをまとめます。

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相続するには税金がかかる

■相続税とは

相続税とは、亡くなった人の財産を受け継いだときに発生する税金です。

相続税が発生するのは、以下の3パターンです。

①相続:法定相続人(身内)に相続する場合

②遺贈(いぞう):遺言によって相続する場合

③死因贈与:生前に財産贈与の契約を結んでいた場合

遺言によってパートナーに財産を相続することは、②の遺贈にあたります。

■遺贈とは

遺言によって、指定した人に無償ですべての財産や財産の一部を与えることを「遺贈(いぞう)」といいます。相続税がいくらになるかは、相続金額から基礎控除額を引いた金額によって決まります。

基礎控除額の式は、以下の通りです。

基礎控除額=3,000万円+法定相続人の人数×600万円

数式だけ見ると少しややこしいので、例をあげます。

事例:相続税はいくら?

■異性婚ファミリーの場合は?

・夫婦と子ども一人の家族で、夫が亡くなった

・夫の遺産は7,000万円

この場合、基礎控除額は、3,000万円+二人(妻・子ども)×600万円=4,200万円になります。

遺産7,000万円ー基礎控除4,200万円=残り2,800万円

この残った2,800万円分に、相続税がかかります

ちなみに相続税率は以下の通りです。

【相続金額   ー税率ー控除額】※円省略
・~1000万    ー10%ー0
・1000~3000万 ー15%ー50万
・3000~5000万 ー20%ー200万
・5000~1億    ー30%ー700万円
・1億~2億   ー40%ー1,700万円
・2億~3億   ー45% ー2,700万円
・3億~6億   ー50%ー4,200万円
・6億~      ー55%ー7,200万円

妻と子どもの相続分は半々なので、相続税の対象となるのは妻・子どもともに1,400万円ずつです。この1,400万円に相続税率(上記税率により15%)がかかり、控除額が差し引かれます。

その結果、

・妻の相続税 1,400万円×15%ー50万円=160万円

・子どもの相続税 1,400万円×15%ー50万円=160万円

上記のように、それぞれ160万円の相続税がかかります。

■相続税の配偶者控除とは?

妻と子ども、それぞれに160万円となりました。が、配偶者には、「配偶者控除」という制度が用意されています。残された配偶者の生活が脅かされないように、という法律のセーフティネットですね。

法定相続分の範囲内、もしくは遺産相続分が1億6千万円以内であれば、非課税、つまり妻にかかる相続税は0円になる制度です。親族が亡くなった辛いときにこの配慮は大きいですよね。

そして配偶者控除を利用できるのは、婚姻関係にある配偶者だけです。1日だけでも婚姻関係にあれば、相続税は免除されます。(紙切れ一枚の効力すごい)

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では続いて、同性カップルのケースです。

■同性のパートナーに遺贈する場合は?

・同性カップルAとBで、Aが亡くなった

・Aの両親は健在

・Aの遺産は6,000万円

・Aは遺言で「3分の2をパートナーBに渡したい」と残している

この場合の基礎控除額は、以下の通りです。

3,000万円+法定相続人は2人(両親)×600万円=4,200万円

亡くなったAの遺産が6,000万円なので、

遺産6,000万円ー基礎控除4,200万円=残り1,800万円

これをAの遺言の通りに分けると、相続分は以下のようになります。

・父、母:300万円ずつ×2人=600万円

・パートナー:1,200万円

パートナーの相続税を計算するには、この1,200万円に相続税率をかけて、控除を引きます。

相続財産1,200万円×相続税率15%ー控除額50万円=130万円

パートナーが支払う相続税は130万円となりますが、そうはいかないのです。法定相続人以外への相続の場合、相続税は2割増しになります。いきなりの2割増し。

この2割増しにより、

・相続税130万円×2割増し=156万円

となるので、パートナーの負担する相続税は156万円になります。

異性婚の夫婦と同じように生活を営んでいたとしても、残されたパートナーを支える配偶者控除が受けられないどころか、2割増しになります。

法律で決まっていることとは理解しつつ…、うーん、なんだかモヤモヤ。当然残した遺産の額が大きいほど、相続税の負担は大きくなります。

不動産を相続する場合にかかる税金

補足として、財産の一部に不動産を相続する場合もあげておきます。

■①登録免許税

不動産を取得したときには登録免許税がかかります。これは不動産の所有権登記を移転するための費用です。登録免許税も、法定相続人と、法定相続人以外の相続の場合とでかかる税率に違いがあります。

・法定相続人の登録免許税…物件の価格×0.4%

・法定相続人以外の登録免許税…物件の価格×2%

物件の価格とは、最新の固定資産税評価額のことです。たとえば、固定資産税評価額が4,000万円の物件をパートナーに遺贈する場合、親族なら16万円、パートナーなら80万円ということですね…。物件の価格が高くなるほど、この差額は大きくなります。

■②不動産取得税

もう一つ、不動産取得時にかかる不動産取得税。これは親や兄弟など法定相続人への相続の場合にはかかりません。

しかし、法定相続人以外、つまり同性のパートナーが不動産を相続する場合には、不動産取得税がかかることがあります

不動産取得税がかかるのは、「特定遺贈(特定の遺産を相続)」の場合です。特定遺贈とは、同性のパートナーに「この不動産を相続します」と指定するケースです。

特定遺贈ではなく、「包括遺贈」とすれば不動産取得税はかかりません。包括遺贈とは、「遺産のうち2分の1を相続します」などと取り決めすることです。

ただ、特定遺贈とする場合でも、不動産取得税は物件の条件等によって様々な軽減措置があるので、相続検討前に確認してみることをおすすめします。

・参考:不動産取得税の税額計算ツール(東京都の場合)https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shisan/syutokuzei.html

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まとめ

3回に分けてまとめましたが、調べれば調べるほどやはり今の日本では同性カップルは様々な場面で想定されていないと感じます。

日本で同性婚が認められるにはまだ時間がかかりそうなので、いざというときにパートナーや家族が困らないよう、現状確実に困ることを知って、今できる対策はしておこうと思います。

とはいえやはり、身近な友人や会社の同僚、近所の人、自分の家族には当たり前にある様々な法律の支えが私たちにはないんだなと思うと、寂しいものですよね。

安心して暮らしていくために、法律の中に私たちも想定された未来がきてほしいと願っています。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

住宅不動産関連業界で働いていることもあり、当事者の方のお役に立てることがあればと思っているので、住まいに関する相談があればお気軽にご連絡ください。

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パートナーが頑張って書いた「同性カップルの家購入ブログ」

※2020年5月時点の内容です。法律の専門家ではないため、認識違いがあった場合はご容赦ください。

※参考…国税庁ー相続税 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/shinkoku/sozoku/sozoku.htm

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