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【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説

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フリムンという言葉は沖縄の方言で、バカ・愚か者という意味で使われる。この物語は、日本最南端の石垣島に生まれ、後に全日本空手道選手権大会を制する田福雄市氏の空手人生、そしてフリムン…
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2023年11月の記事一覧

【自伝小説】第2話 小学校時代(3) |最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

【自伝小説】第2話 小学校時代(3) |最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

未来少年

その頃の石垣島にはまだ民放はなく、テレビ放送はNHKのみ。更に少年が5年生になるまでアニメ放送は皆無で、子ども向けに放送されていたのは人形劇のみであった。

その日、石垣島に激震が走った。遂にお茶の間でアニメが見られる日が来たのだ。

子どもたちは飛び上がって歓喜し、「ビートルズがやってきたYAYAYA」どころの騒ぎではなかった。

そんな記念すべきアニメ放送の第一弾は、未だ根強いファ

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【自伝小説】第3話 中学校時代(1) |最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

【自伝小説】第3話 中学校時代(1) |最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

実験室少年は生粋の野球少年だった。

野球少年なら誰もが憧れる甲子園を目指し、日々血豆が潰れるまで素振りを繰り返す真面目な少年だった。

しかし、少年野球で2年間も主将を務めるほど努力を積み重ねてきたものの、いつしか団体競技に見切りをつけるようになっていた。

そう、個人の努力が報われないというジレンマが団体競技にはあったのだ。

当時、他の学校に後れを取っていた少年の通う中学校。

どんなに努力

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【自伝小説】第3話 中学校時代(2) |最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

【自伝小説】第3話 中学校時代(2) |最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

ドラゴンロード

あの時代は、全国的に校内暴力が蔓延り、日常的に不良少年が我が物顔で跋扈していた時代であった。

例外に漏れず、この島でもビーバップワールドが広がっていた。

少しばかり郊外に行けば、必ず金銭を巻き上げられるのが常であった。

そんな中でも、群を抜いて暴君が蔓延る地区があった。

通称「七町内」である。

そこは泣く子も更に泣き出す悪夢のような地区だった。

ちなみにそこを通過する

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【目撃談】第2.2.2話 第二の血ぃーごーごー事件?|そのとき私は空手フリムンを目撃した!|by 友人S

【目撃談】第2.2.2話 第二の血ぃーごーごー事件?|そのとき私は空手フリムンを目撃した!|by 友人S

夢にまで見た一番棒‥‥少年二人は感動のあまり言葉さえ失っていた..地獄の特訓も笑顔でこなし少年二人はメキメキと上達して行った。

小学生の域を超えたある日..夕暮れの校庭で雄市が俺に向かってこう言い放った‥‥

『俺達はこれで満足していいのかぁ!?』

熱く燃え上がる瞳はまるで星飛雄馬。そしてこう言った‥大人がやるように槍を大きく振り回してから俺の足元を突いて始めよう‥と。

本編の写真は槍を振り

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【自伝小説】第3話 中学校時代(3)最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

【自伝小説】第3話 中学校時代(3)最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

実戦の定義いきなり始まった代表戦。二人を取り囲んだ敵側の仲間が、少年にのみ次々と罵声を浴びせてきた。

これ以上の恐怖は他にない。しかし、何もしなければフルボッコは確実だ。

少年は仕方なくジークンドー(李小龍が考案した武術)のサイドキック(足刀横蹴り)を繰り出した。

だが、いつもよりスピード、タイミング、角度までもがイマイチだ。

足がすくんでいるのだから当然だ。

直後、その空手野郎が「フシ

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【自伝小説】第3話 中学校時代(4)最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

【自伝小説】第3話 中学校時代(4)最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

警察故事「オワタ」
「完全にオワタ」

少年は心の中でそう呟きながら、人生初となるパトカーの後部座席に身を委ねた。

そして、署でおまわりさんにこっぴどく叱られた後、保護者に連絡を取るため自宅の電話番号を聞き出された。

時計の針は既に深夜を指していたが、寝ているはずの祖母の事を思いながら、泣く泣く電話番号をおまわりさんに告げた。

それから僅か数分後の事であった。

「いや…あの……」「〇×▼※

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