【短編小説】・続「ロザリオ」
「レオ、起きて」レサが僕を揺り起こした。
「なに? どうした?」僕は時計を見た。朝の七時だ。「もうすこし眠らせてくれよ」
「なに呑気なこといってるの。今日は個展の最終日でしょ」
「わかってるよ。でもまだ早いじゃないか」
「昨日シャワー浴びてないでしょ。きちんとした格好で行くのよ。髪もセットしてね」
「そんなに気合い入れなくても、いつもの自分でいいじゃないか」
レサは世話焼き女房だ。まだ結婚はしていないが。
レサの夫はいよいよ体が動かなくなって施設に入所した。余命も幾ばくもない。レサは一日おきに夫のところに通っている。ピアノ教室も続けている。彼女はいつも慌ただしい。こうして僕もいつも尻を叩かれている。僕の時間軸ではなく、彼女の時間軸で動かされるのだ。それでも、個展の仕切りをすべてレサがしてくれているので、文句はいえない。彼女はバイタリティーに溢れている。見習わなくてはとは思うが、いつもおんぶにだっこになってしまう。彼女も好きでやっていることなので、僕を責めることはない。
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