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絵を見る

 絵を見ること。すなわち、それは「読む」ことなのである。絵は語らない。視覚は、あくまでも視覚である。しかし、それを言葉に付与することが、書き手にとって必要だ。見えるもの。言葉では捉えがたいものを、言葉で捉える。物とモノの間を言葉で繋ぐ。
 また、逆の考え方もできる。絵が、言葉を導くのである。自分の中に眠っている言葉を絵が呼び起こすのである。むしろ、言葉を呼び起こすために、僕は絵を見るのである。それは、読書では手に入らない特殊な言語体験である。言葉なきものから、言葉を教わる。そして、言葉なきものを、言葉で捉える。
 それらを媒介するものは自分の肉体だ。肉体が、感じる世界を、自分の精神が体現する。肉体と精神の往来。それが、豊かな世界を知覚する契機となる。

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