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芸術分野においてAIと人の共存は可能か?クリエイターの未来について考えてみる

前書き

 今回の記事はタイトルの通り、AI技術と芸術分野、AIとクリエイターさんについて焦点を当てた記事です。最近創作をしている過程で、「AIと人との創作」について考える機会があったので、今回の記事執筆に至りました。

 私は子どもの頃から絵を描くのが好きで、小学校の頃の成績表は図画工作以外の成績は目も当てられないような子どもでした(笑)。そんな少年時代を経て大人になった現在でも、精神統一を兼ねて、落書き程度ですが絵を描いたりしています。

記事後半で紹介するハシビロコウの下書き

 そんな私は2022年の夏頃に衝撃を受けます。Twitter(現在X)でMidjourneyがトレンドに上がっており、そのクオリティと可能性に感動しつつも脅威を覚えました。ちょうどその頃デジタルで絵を描くことを始めたばかりの私は「自分の絵を世に出してもAIに負けるな…」と軽い絶望感に包まれました。
 ですが実際にAI画像生成をいじり始めてみると、その絶望は希望に変わり得るかもしれないと考え今に至ります。

 今回の記事は、私の個人的見解で限定的な物の見方に偏っているかもしれません。それでも以前の私のように「AIに創作の場を奪われるのではないか…」と不安に思う方々へ、何かのヒント・きっかけになればと思っています。

 また、絵に携わるクリエイター以外の方にも何かヒントがあるかもしれません。本文中では知人の役者さんの役に立った例にも触れています。

 色々とAI技術に対して思うところがあるかもしれませんが、最後まで読んで頂けましたら嬉しく思います!それではいってみましょう!


AIは創作の脅威になり得るのか?


 それぞれの創作分野においてAI技術が台頭し始めた昨今。デザイン・イラストの分野において画像生成AIの登場は、絵心に自信のない人でもクオリティの高いイラストを生成できるようになったという喜ばしい一面を見せてくれました。
 その反面、短時間で高いクオリティの作品を生成するAI技術に対し、これまでデザインやイラストを生業にしてきた方々にとっては脅威の存在であることも事実。

 例えばこんなニュースがありました。Midjourneyで生成した作品が美術コンテストで1位受賞というニュース。

 作品はMidjourneyを使用したこと開示し、コンテストの規則を満たした上で「デジタルアート/デジタル加工写真」の部門に応募。その結果1位を受賞。この結果に対し、SNS上では批判が殺到したようです。批判の声を上げた人の中にはクリエイターもいたことでしょう。
 記事の中では、芸術分野において度々起こる技術革新についても触れられています。カメラが開発されると多くの画家が反対し、デジタル編集技術が登場すると画力などのスキルが不要になってしまうなどと非難されてきました。

 では今回の技術革新である画像生成AIの登場はどうでしょうか?

 AIはネット上の画像、ユーザーの任意で上げられた画像を読み込むことによって学習。その学習をもとに作品を作り上げます。つまり、自分の作品がネット上にアップされていれば学習の対象になる可能性があるということ。苦労の末に作り上げた作品のオリジナリティがAI技術に吸い上げられかねないと危惧しているクリエイターの声は、日本でも上がり始めています。
 クリエイターが望んでいない中で、一部の心無いユーザーが勝手にAI学習に利用していたことが問題になり、イラスト投稿サイトは対応に追われました。

 そして対策団体の立ち上げもありましたが、現状としては利用者の倫理観が試される状況。

 先に見たカメラやデジタル編集技術の登場に対する批判と、今回のAI画像生成に対する批判問題の違いは「倫理観」という点で異なります。

 この問題は、真っ当に画像生成AIを利用してるユーザーの足枷になる可能性もありますが、現在はAIイラストの黎明期。今後の法整備・関連団体の動きに注視しつつ、規約に則って利用していきましょう。

 ですが、クリエイターさんの不安はAI学習だけではないと思います。対策団体立ち上げの記事の中でも「契約を結んでいる企業から「あなたが描くイラストは一瞬で作れる」などと言われて契約を打ち切られた」という声が紹介されていました。この様にAIに仕事を奪われてしまうことに不安を感じている人は少なくないでしょう。
 では、今後のデザイン・イラストの分野はどの様な変貌を遂げていくのでしょうか?冒頭でも書きましたが、デジタルイラストを始めたばかりの私は不安に思っていたので対話型AIのChatGPTに質問をしてみました。


ChatGPTに聞いてみた


 質問は、「この先15年、AI画像生成の進化によって、画家・イラストレーターの職業形態はどのように変化していくと予想しますか?」。それに対しての回答は以下のものでした。

 私なりにざっくり要約すると、

  1. 創作作品のアイディア・ヒントへの活用、さらに作品のブラッシュアップとして効率的かつ補完としても使用可能

  2. 新たに「AI生成作品」というジャンルの出現

  3. AIを駆使した作品を監修するクリエイター、「AI+人」というクリエイターの役割の変化

  4. より人間の作品に対する気運が高まる可能性。AIの限定的な範囲の作品ではなく、人間の創造性・独自性がより評価されていく

  5. クリエイターにAIツール・プログラミングのスキルが求められる

 と言った感じでしょうか。
 この回答の中に希望を感じました。漠然とAIに創作の場を奪われると不安に思っていましたが、そうではない可能性が見出せました。なぜなら、「人間独自の感性や表現力が重要視されることは変わりない」との回答に、私もそう思う部分があるからです。(後述)

 それに15年後と言わずとも既にChatGPTが出した予想の通りに世は動き始めています。

 2にある様な「AI生成作品」というジャンルは既に登場しています。皮肉にもAI生成作品に対する批判から、先に紹介したニュース記事に出てくるイラスト投稿サイトでは「AI使用作品」や「一部AI使用」といった枠組みや検索設定が既に設けられており、人の手で描かれた作品と、AIによって描かれた作品の棲み分けは始まっています。

 また、「一部AI使用」の作品に該当するものは、背景を描くのが苦手なクリエイターなどが重宝していると推測します。これはChatGPTの予想1・3に該当するのではないでしょうか。

 他にも1に関して、創作アイディア・ヒントへの活用・補完として私の実用例を紹介します。これはイラストレーター・画家という枠組みから飛び出したものですが、役者をしている友人の舞台小道具としてAIに描いてもらった架空の地図を提供したことがあります。役者の仕事の補完としても役立ちました。

役者の友人へ提供したAI生成の架空の地図

 AI生成作品は使い様によってはイラストレーター・画家という枠組みに囚われない使い道もあります。

 また、ChatGPTが答えた15年後の予想について該当するこんなニュースが最近ありました。

 「お〜いお茶 カテキン緑茶」という商品のパッケージデザインを、AIが生成した画像を参考にデザイナーが作成し直してデザインをリニューアルしたというニュース。またしても予想を上回るスピードで世が動いていました。

 このニュースについては特に予想の5が該当するように思えます。予想の5は、「クリエイターのスキルの多様化:(略)AIツールの使用やプログラミングのスキルが必要になるかもしれません。また、AI生成の作品を活用したマーケティングやブランディングのスキルも重要になるかもしれません」というものでした。正にこの予想の好例であり実例が上記の記事ですね。

 現場の中には既にAIツールを使いこなしているクリエイターがおり、プログラミングはもちろん、プロンプトを組める人材が活躍しています。

 「これからプロンプトを組めるスキルが求められていく」と実例が裏付けているように感じられました。

 また、AIツールを使用したマーケティングやブランディングについてヨッシーさんの記事がヒントになるはずです。リンクの記事はプロンプトも公開されていて非常にわかりやすいですし、Midjourneyをはじめたての頃の私は多くのヒントを頂きました!


 ここまで見てきたように、AIに仕事を奪われると不安に思っている人の解決にはなりませんが、AIツールを創作・仕事に取り入れることで効率化や可能性を広げることができます。またそのスキルも求められつつあります。

 プロンプトに関してですが、「AI画像生成で今のうちに遊んでみませんか?」と最近の記事で呼びかけているのは、既に市場の変化や、求められるスキルが変わってきているからでもあります。今ならまだ遊びながら学べますし、いざ仕事で使って下さいと言われても戸惑いますよね?それよりは慣れ親しんだ状態で臨んだ方が色々な可能性を秘めているように私は思います。


AIが作り出せないもの

 ChatGPTが答えてくれた5つの回答でも満足したのですが、私は気になる質問はリロードして2回聞くことがあります。今回もリロードして違う回答がないか確認してみました。すると先の予想4をさらに敷衍したような答えを出してくれました。

 先の予想4では、AIの作品には限定的な範囲があるため、人間の創造性・独自性を活かした作品がより評価されていくとChatGPTは答えていました。

リロード後の新たな予想

 新たな答えでは、クリエイティブな付加価値が重要になることを指摘し、具体的にはオリジナリティ、ストーリーテリング、顧客とのコミュニケーションスキルが重要になると予想してくれました。

 私もそう思います。AIはクオリティの高い絵を作ることができますが、特にストーリーテリングが苦手であると思います。先の予想4にもあった「AIの作品は限定的な範囲がある」はこの部分でもあると私は考えます。

エドウィン・ロング『バビロンの花嫁市場』1875年

 例えばエドウィン・ロングの『バビロンの花嫁市場』は素晴らしいストーリーテリングだと思います。この絵の主役は二人。段の上で競売にかけられている女性と、手前に座っている中央の女性。画面の中央に位置し、こちらをこちらを見ている事から二人目の主役になります。
 また、絵の動線も手前の女性たち(こちらを見ている主役女性)から段の上の女性へと他の人物の動作・視線、明暗差が流れを作っています。
 競売にかけられている最中の女性・これから競売にかけられる女性。この対比と動線の中にストーリーを感じさせることから名画と呼ばれるのではないでしょうか。これは人間にだからできる表現であり創造性。そして、そのストーリー性を投げかける作者の感性に人間は感動するのだと思います。AIは正にこの部分が苦手であり、描けない範囲であると考えます。

 先の予想まとめ部分には、「人間独自の感性や表現力が重要視されることは変わりない」とありました。この部分が人間の強みであり、AIとの明確な棲み分けの決定材料がこの部分であると私は予想します。AIアートの普及によって今後、名画が名画である理由を多くの人が知るきっかけになれば良いなと一人ワクワクしています。

 また付加価値について、AIはプロンプトを入力すればすぐに作品を完成させてくれます。ですが作品完成までの過程は簡素なもの。芸術は制作過程にも魅力はありますし評価の対象になることもあります。そして、込められた想いも作品の魅力です。その制作過程自体も立派なストーリーテリングではないでしょうか?

 その人物に魅力があるから、偶然の出会いで知り合ったアーティストだから、そこにコミュニケーションが生まれ、価値が生まれる。「人対人」のやり取りや出会いもストーリー・付加価値。この付加価値はAIには作り出せない大切なバックグラウンドであると私は思います。


 と、ここまで大分長くなってしまいましたが、いかがでしょう?AI技術の可能性と人間にしか生み出せないものが見えてきませんでしたか?それぞれの得意と持ち味を理解し、活用すれば不安も解消されそうですよね。
 私は芸術分野においてAIと人間の共存は可能であると思いますし、どちらも大好きです!
 今後もっとAI技術は発展を遂げていくかと思いますが、それぞれにあったスキルを磨いていけば、きっと棲み分けは可能なはずです。不安や絶望に陥って諦めるのではなく、必要なスキルを磨いていきましょう!



AIとの共同制作


 ここからは私の創作の一例を紹介して記事の締めへと向かっていきたいと思います。ChatGPTの予想にもあったAIツールを使って創作・共同制作です。

 先日、AIイラストでハシビロコウのアイコン画像を作ってほしいとの依頼があったので制作をすることになりました。前回の記事『AI画像生成でアイコン画像を作ってみよう!』を投稿した後だったので「お茶の子さいさいですよ!」と意気揚々と制作に取り掛かることに。

 まずはMidjourneyで「ハシビロコウ」とだけプロンプトに組んで生成してみました。すると…

何ですかコレは…不気味な生き物を描いてきました…。

もしかしてAIはハシビロコウを認識していないのか?と思い別のLeonard AIでも試してみました。

 さっきよりは不気味じゃないだけで、全くハシビロコウ要素がありませんでした。何度か生成してみましたがMidjourneyの方がハシビロコウに近い”何か”を描いてくれていたのでLeonard AIとはここでお別れです。

 もしかしてイラストに関するプロンプトを組んだらハシビロコウになるか?と思いMidjourneyにてプロンプトを組み直して再トライ。

 …全然ダメでした。こうなったらと手描きでイラストを描き、プロンプトに組み込んで再トライ。

 徐々に近づいてきましたがまだ程遠いです。「ハシビロコウ(Shoebill)」というプロンプトが通らないとここでようやく諦めました。こうなったらポップなキャラクターにしてみようとデフォルメアニメ調にプロンプトを変更しつつニジジャーニーでもう一度調整。

 大分可愛らしく、ハシビロコウに近づいてきましたが納得がいきません。この絵を元に微調整を繰り返したのがこちら。

 もう私はハシビロコウをAIに描いてもらうのを諦めました…。私の実力の無さかもしれませんが、これ以上AIにこだわる必要はないのではと思いました。 

 ここからは方向修正で、ChatGPTが予想していたAIと人による共同制作に舵を切りました。ハシビロコウは私が手描きし、Midjourneyにエンブレムを描いてもらう構想です。そして手描きしたのがこちら。

そして背景となるエンブレムをMidjourneyで生成。

 この画像の色を微調整しつつカラーパレットとしてハシビロコウに塗っていきます。そのことにより手描きとエンブレム部分の色を馴染ませるのが目的です。

そして完成したのがこちらッ!!

 今回のハシビロコウのアイコン共同制作では、ハシビロコウの絵と塗りを私が、そしてエンブレムと色はMidjourneyが担当。エンブレムなどのデザインが苦手な私をAIが補完、ハシビロコウを描くのが(今は)苦手なAIを私が補完。初めてのAIとのコラボレーション、なかなか楽しむことが出来ました。

 それに、誰にも伝わらなくても今回の制作過程には私なりの付加価値がありました。


他にもAIを活用した創作の一例

 最後にAIを活用した創作の一例を紹介します。ハシビロコウのアイコン制作で色塗りの楽しさに少し目覚めたので塗り絵について!

 ヨッシーさんのポストではMIdjourneyで塗り絵を制作、その絵をインペインティング機能(Region)で色塗りをされていました。

 これ色々な可能性を秘めていると思います。AI生成だけで絵本や漫画を描いている人がいますが、作品のブラッシュアップにも使えたりします。
 また、純粋に色塗りの練習題材として画像を生成しても良さそうです!

Coloring page, manga anime style, illustration by Hirohiko Araki, Rabbit gangster, gangster suit, dynamic pose, full body, city background, outside, thick lines, low detail, black and white, no shading --ar 2:3 --niji 5 --s 750(太字部分は上記リンクのポストからお借りしました)


 と言うわけで、簡単にですが私も実際に塗ってみました!(ジョジョをイメージ)


 以上、簡単にですがAIとの共同制作について紹介しました。いかがだったでしょうか?ここで紹介した以外にもAIツールを創作に活かすことが出来ると思います。AI技術の進歩によって創作のあり方に変化があるかと思いますが、同時に可能性も広がっていっています。実際、私のような素人でも楽しく創作に活かすことが出来ました!もし機会があれば、是非お子さんと遊んでみてくださいね!学びにも繋がるはずですから!



終わりに


 これは最近思うことなのですが、努力のために努力をするのではなく、目標に向かっていく過程こそが努力であり、その過程が大切だと思います。

 努力が足りないなどと言われるような事があっても、目標を達成すればいいのです。過程(努力)が緩やかでも達成すれば良い。
 趣味や生業など人それぞれです。目標を掲げる目的によってその過程は人それぞれ異なるものですから。優劣も正しい・正しくないも関係ありません。

 強い目的があり、高い目標を掲げたいのであれば高く設定してみてはいかがでしょうか?
 その目標に向かっていく過程の中で、困難なことがたくさんあったり、人一倍その目標に打ち込めば、その過程は努力の結晶として目標が結果となり返ってくる事でしょう。

 例え低い目標であろうと達成できた自分を褒めてあげ、自己肯定感を高めていき、次の目標をもう一段高く設定して行けばきっと高みを目指せるはずです。

 他人からの評価でパフォーマンスに影響が出るなら無視した方がまし。

 何事もコツコツと状況に応じてアクセルを踏んでいきましょう!道は続いています。得られたスキルは別の道でも活用できるはずですから!

 それでは今回の記事はこれにておしまいです。最後まで読んでいただきありがとうございました!もし面白いと思って頂けたらスキを押してやって下さいませ!





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