file2. いろんな意味で一線を越え続ける女、ミザリー
ミザリーはドイツ人で、私がアメリカに住んでいた時の仲良い友達(こちらもドイツ人女子)の友達でした。
友達の紹介で出会い、元々仲よかった友達も含めてアメリカで何度か遊びに行きました。
その時のミザリーに対する印象は、
天然?というか不思議ちゃん?
という感じ。
ただ、
炎天下45度の太陽の下自転車で(15キロの長距離移動)めちゃめちゃドレスアップして汗だくでパーティー会場にやって来たり
と、なんか…うん、まあ…変わってる…な?w くらいに思って流していました。まあ友達の友達だしそんな別に関係ねえやろってな感じに。
日本に帰国してから、ある海外旅行の際、私は途中ドイツのフランクフルトに立ち寄ることにしました。
本来の目的地は南米で(友達を訪ねに行った)、その国が日本から相当遠かったので、中継地のフランクフルトで一泊して体を休め、その後目的地に向かうためでした。
そのことをインスタにポストしたところミザリーから電話がかかってきて、
「私の友達がフランクフルトに住んでるから、そこをホテル代わりに自由に使って!
あなたはホテルをとる必要はまったくない!」
と意気揚々と言うのです。
「うーん、でも私ホテル泊まるの元々好きだし、今回は観光じゃなくてただ身体を休めるためだけにフランクフルトに立ち寄るだけだから、申し訳ないけど楽しく過ごすよりも1人でのんびり過ごしたいな」と伝えると、
「大丈夫! 友達の家は絶対ホテルよりずっと心地よくて快適だって誓う!安心して!
あなたはホテルより心地いい場所に泊まるのを諦めて、ホテルに高いお金を払うの!?
馬鹿げてる! 絶対にやめなさい!
それとも私が信用できないの?
私を信じて!!!!!」
とそれぁまあ長々とすごい熱量で説得してくるわけです。
ついに私は折れて、フランクフルトに着いたらミザリーの友達の家に泊めてもらうことにしました。(もちろんミザリーも一緒に)
その電話でミザリーはフランクフルトの空港に着いた私を車で迎えに来てくれること、ミザリーの友達の家ではただリラックスして寝てればいいよと約束してくれました。
ーしかしこれが悲劇の始まりだったのであるー
フランクフルト国際空港に到着した時、時間は昼の2時。
私はもうクッタクタに疲れていました。
飛行時間は13時間、7時間の時差あり、しかもその時私は風邪をひいていて偏頭痛も重なってかなり体調が悪く、とにかく横になりたい今すぐに状態でした。
しかしミザリーと再会した時、私は信じられないものを目にしたのです。
寝袋
※寝袋(ねぶくろ)とは、袋状の携帯用寝具である。 オートキャンプや登山などの際にテント内で使用される他、防災用品などとしても用いられる。 英語ではスリーピングバッグ(sleeping bag )と呼ぶ。 シュラフ(シュラフザック/ドイツ語:Schlafsack から)と呼ばれることもある。
ねぶくろ?
え、 ねぶくろ???????
ん?
待って???
なーんとなんと2つあるヨ?
寝袋×2ダヨ?
ってことは
その中のひとつはわっちの寝袋でやんすか?
あまりの出来事に私は寝袋について触れることができず、寝袋を見たことを一旦寝かせました。
ただ脳内では、
寝袋…ねぶくろ…ネブクロ…NEBUKURO…
と今までの人生でいちばん寝袋という言葉を反芻していました。
とりあえず気を取り直そうとミザリーに「車どこに停めてるの?」と尋ねると、
「え?車で来てないよ? 運転だるいもん。
電車で来た☆」
という回答が返ってきました。
更にミザリーは、
「私の友達、夜の11時過ぎまで家に帰らないらしいから、それまで外で時間つぶそう」
とまじでおやおや私の耳バグっちゃったの?と疑うレベルの言葉を発しました。
当時の時間は昼の2時。
ミザリーの友達の帰宅に合わせると、9時間ものあいだバカでかいスーツケースを持って街を歩き回らなければならないわけです。
地獄!!!!!!!!!!
私の思考は完全に停止しました。フライトの疲れと、時差ボケと、風邪で頭がまったくまわっていませんでしたが、
神さま、いらっしゃるのでしたら
今すぐここから走り去って
そのへんのホテルをとって
ふかふかのベッドで眠ることをお許し下さい
という願いが頭の片隅にふわりと浮かんでサラサラと砂のように消えていきました。
その後は予想通り、重たい特大サイズのスーツケースを持って街を歩き回り、
レストランに行ってご飯を食べ(ミザリーはこの時なぜか店にある全種類の生春巻を注文し、生春巻がまじで20個くらいテーブルにあったが私はあまりの食欲のなさにまったく手をつけられずミザリーが食い尽くした)、
そしてよーーーーーーーーやく、夜の11時がやって来たわけです。
やっと地獄が終わった……!
これでやっと眠れるぞーー!!!!!
わーいわーい!ひゃっほー!いぇいいぇい!
私の胸はうきうき弾みました。
しかしここから更なる悲劇が始まります。
ーつづくー