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肉欲ババアの過去に何があったのか。その全貌が明かされるホラー映画『Pearl パール』


【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:63/103
  ストーリー:★★★★☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★☆

【作品情報】

   原題:Pearl
  製作年:2022年
  製作国:アメリカ
   配給:ハピネットファントム・スタジオ
 上映時間:102分
 ジャンル:ホラー、スプラッター
元ネタなど:映画『X エックス』(2022)

【あらすじ】

1918年、テキサス。スクリーンの中で踊る華やかなスターに憧れるパール(ミア・ゴス)は、敬虔で厳しい母親と病気の父親と人里離れた農場に暮らしている。若くして結婚した夫は戦争へ出征中、父親の世話と家畜たちの餌やりという繰り返しの日々に鬱屈としながら、農場の家畜たちを相手にミュージカルショーの真似事を行うのが、パールの束の間の幸せだった。

ある日、父親の薬を買いに町へ出かけ、母に内緒で映画を見たパールは、そこで映写技師に出会ったことから、いっそう外の世界への憧れが募っていく。そんな中、教会にて地方を巡回するショーのオーディションがあることを聞きつけたパールは、オーディションへの参加を強く望むが、母親に「お前は一生農場から出られない」といさめられる。

生まれてからずっと“籠の中”で育てられ、抑圧されてきたパールの狂気は暴発し、体を動かせない病気の父が見る前で、母親と掴み合いになるのだが……。 

【感想】

X エックス』シリーズ第2作目。A24初の三部作となる予定で、前作の前日譚となるのが本作です。相変わらず、狂気に満ちた主人公が見ものでした。

<前作のおさらい>

タイトルに書いた"肉欲ババア"というのは前作に出てきた老婆のことです。前作の流れを簡単に書いておくと、ポルノ映画を作ろうとした若者グループが、撮影場所として農場を借りたんですが、そこに住む老夫婦に次々と襲われていくんです。で、そこの老婆がパールって名前なんですが、もう80歳近い年齢にも関わらず、いまだに肉欲が強くて若い男性を誘うものの、あっさり断られたことに逆上して殺しちゃうんですよ。最後は夫(これもおじいちゃんなんだけど)と無理矢理体を重ねるも、彼は心臓が弱くて死亡。エロとスプラッター、若者と老人を対比させたシュールな映画でした。

<パールの若かりし頃に何があったのか>

本作は、その肉欲ババアであるパールの若かりし頃のエピソードです。なぜ彼女が肉欲ババアかつ殺人鬼になってしまったのか、その理由がついに明かされます。ちなみに、今作でパールを演じたミア・ゴスは、前作でも特殊メイクを施して老婆のパールを演じています。なので、前作でミア・ゴスは主人公のマキシーンと老婆パールの2役を演じていたことになります。

さて、結論から言いますと、もうあらすじ読めば想像つくとは思いますが、とにかく抑圧されすぎた環境にいたことが、パールのせいかくを歪めた大きな要因だったんですね。時代的にはスペインかぜと呼ばれるパンデミックが起こっていて世間は混乱の最中。父親は病気(これはスペインかぜとは関係なさそうでしたけど)で体がまったく動かず、母親はとにかく厳しく、パールの言うことやることにいちいち文句をつけます。そんな中で、パールは「いつか映画の中で踊るスターになりたい」と夢見ているんですが、現実は父親と家畜の世話に追われる日々。さらに、母親からはあらゆる行動を制限され、自由が一切ない生活に鬱憤しか溜まりません。ある日、ついにそれが爆発してしまい、彼女は次々と身近な人をその手にかけていきます。。。

パールは抑圧された環境にいたから、人一倍自由への憧れが強かったんだと思うんですよ。だから、自分が自由を手に入れるためには、まずはこの農場を出るしかないと考えました。そのためには、鎖となって自分を繋いでいる存在を消す以外にない。そういう思考回路になるのは短絡的ではありますが、彼女の置かれた状況を考えると理解はできます。母親なんて話し合いとか通じなさそうな感じでしたしね。途中、パールと不倫関係に陥る映画技師はとばっちり感満載でかわいそうすぎましたが(笑)

<殺人シーンよりも見どころがある場面とは>

この映画、一応はホラー映画、スプラッター映画に分類されるので、やっぱり殺人シーンが見どころなんじゃないかなーって思っていたんですが、実際そういうシーンは思ったよりも少なく、かつ地味だったこともあり、個人的にはあまり惹かれませんでした。むしろ、パールが殺人鬼へと変貌する理由となる心情を吐露するシーンが、キャラクターの掘り下げっていう意味ですごく重要だと感じました。終盤、5分以上にわたる長セリフでパールが自分の気持ちをポツリポツリと語っているところは、シリーズ三部作の中で彼女のキャラクターを決定づける一番注目すべきところなんじゃないでしょうか。夫への想いや、自らの過ちなど、いろんなことを語るんですが、結局はもともとの人間性がやべぇじゃんって感じではあるんですけどね(笑)

ただ、全部説明セリフになってしまっているので、そこが気になっちゃう人はいるかもしれません。明確に答えを出してくれている分、わかりやすくはなっているものの、自分で考える楽しみが減ってしまう部分はあると思うので。

<そんなわけで>

夏に観るホラー映画としては、イマイチヒヤッとしきれない部分はあるにせよ、三部作の真ん中の作品としてはよかったと思います。前作はスプラッター映画として面白かったですし、完結編(いつ公開かはわかりませんが)に向けてこの機に観てみるのはアリだと思います!


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