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高畑淳子の演技が全部食ってた『母性』

【個人的な満足度】

2022年日本公開映画で面白かった順位:86/179
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★★★★★★★★
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★★

【作品情報】

  製作年:2022年
  製作国:日本
   配給:ワーナー・ブラザース映画
 上映時間:115分
 ジャンル:ミステリー
元ネタなど:小説『母性』(2012)

【あらすじ】

女子高生が遺体で発見された。その真相は不明。事件はなぜ起きたのか?

普通に見えた日常に、静かに刻み込まれた傷跡。愛せない母と、愛されたい娘。同じ時・同じ出来事を回想しているはずなのに、ふたりの話は次第に食い違っていく……。

母と娘がそれぞれ語る恐るべし「秘密」――。2つの告白で事件は180度逆転し、やがて衝撃の結末へ。母性に狂わされたの母か?娘か?

【感想】

原作小説は未読です。『告白』(2010)がすごく面白かったのでかなり期待値上がっての鑑賞でしたが、うーん、個人的には『告白』の方が好きですね(笑)

<どちらの視点かによってニュアンスが変わる構成>

今回の映画は、母・ルミ子(戸田恵梨香)と娘・清佳(永野芽郁)の2人がメインになっており、同じ出来事を回想しても両者では食い違いが発生しているというのが面白いところです。特に、ルミ子は同じセリフなのに言い方を使い分けて印象をガラッと変えてしまうので、演じた戸田恵梨香の演技がよかったと思います。ちなみに、同じような手法は、直近の映画だと『最後の決闘裁判』(2021)と似ていますね。あれも三者三様の言いっぷりがありましたから。

<母の特異な人物像>

ルミ子は、とにかく自分の母親(大地真央)に気に入られたい欲が強い人物として描かれています。じゃあ、その母親がヤバい人なのかっていうと、そんなことはなく、裕福で常識人なマダムという印象なんですよね。いや、あまりにもできた人だからこそ、ルミ子はそんな人に気に入られたいと思ってしまったのかもしれませんけど。それは自分に娘ができても変わりませんでした。かといって、娘に対していわゆる毒親みたいなのともちょっと違う気もします。単に、「娘の母」というよりも、「母の娘」でいたいという認識が強いだけなんですよ。そんな一般とはかけ離れた変わった母親像ってのが特徴的な内容です。

<この映画で最も推すべきはココ!>

設定としては面白そうな映画なんですが、全体を通して観ると、「母親こわっ」っていう印象を受けるぐらいで、基本的には母と娘の食い違う認識が淡々と流れるだけなんですよね。驚くような展開や、感動的なオチがあるわけでもないので、そこを少し退屈に感じる人はいるかもしれませんし、僕もさほど心が動かされたわけではありませんでした。

でも、この映画で推したいのはストーリーや設定じゃないんですよ。。。彼女なんですよ。。。彼女しかいないんですよ。。。もうね、「こんな演技できる人他にいるの?!」って言いたいぐらい、圧倒的な存在感を放つひとりの女優さんによって、この映画は成り立っていると言っても過言ではありません。

高 畑 淳 子 !

この映画で最も印象に残り、最も観る人を魅了するヴィラン的なポジション!呼吸するようにルミ子に嫌味を言う意地悪さ、自分の主張を押し通す傲慢さ、たまりません。。。あまりにも抜きんでてしまっているがゆえに、全員食われてましたね(笑)ここまで来ると「逆に浮いているんじゃないか?」と思われるかもしれませんが、そんなことはまったくなく、主人公であるルミ子の悲惨さを際立たせる最高の脇役になっているのがまたすごいところです。高畑淳子さんが出てきてから、彼女が次にどんな意地悪をするのか楽しみで仕方ありませんでした(笑)

<キャスティングはよかったのか>

強いて気になるところを挙げるとすれば、キャストの年齢ですかねぇ。戸田恵梨香さんって、大地真央さんとは32歳離れているので親子ってわかりやすいんですけど、永野芽郁さんとは11歳しか変わらないから、これで親子のイメージはつきづらいんですよ。そもそもこのお二方は、『ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜』(2021)というドラマで先輩・後輩の間柄だったので、そっちのイメージの方が強いんですよね(笑)

<そんなわけで>

これは高畑淳子さんの演技を目に焼きつけるためだけに観に行ってほしい映画です。それぐらい彼女の演技は観る価値ありでした!作品としては、おそらく本の方が面白いんじゃないかと思いますけど。


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