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夢と多幸感にあふれたド直球のファンタジー映画だけど、平和すぎて前作を知っているとちょっと物足りなさを感じる『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:93/168
  ストーリー:★★★★☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★★☆
     音楽:★★★★★
映画館で観たい:★★★★☆

【作品情報】

   原題:Wonka
  製作年:2023年
  製作国:日本
   配給:ワーナー・ブラザース映画
 上映時間:116分
 ジャンル:ミュージカル、ファンタジー
元ネタなど:児童小説『チョコレート工場の秘密』(1964)
      映画『夢のチョコレート工場』(1971)
      映画『チャーリーとチョコレート工場』(2005)

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
ウォンカ(ティモシー・シャラメ)の夢は、亡き母と約束した世界一のチョコレート店を開くこと。世界一おいしくて、空だって飛べるウォンカの"魔法のチョコ"は町のみんなを虜に!

しかしそこは<夢見ることを禁じられた町>――その才能を妬んだ"チョコレート組合3人組"に目をつけられてしまう。さらに、ウォンカのチョコを盗むウンパルンパというオレンジ色の小さな紳士も現れたから、さあ大変!

果たしてウォンカは無事にチョコレート見瀬をつくることができるのか?

【感想】

原作小説は未読ですが、映画化された過去の2作品は観ました。あの天才チョコ職人・ウィリー・ウォンカの若かりし頃を描いた前日譚的な話で、ミュージカル×ファンタジーで大人も子供も楽しめる映画でした。

<設定としては旧版に近い>

チャーリーとチョコレート工場』(2005)の前日譚という印象を持つ方が多いと思いますが、正確にはその前に映画化されている『夢のチョコレート工場』(1971)の方につながっていくんじゃないかなと思いました。『夢チョコ』と『チャリチョコ』は、単に原作が同じというだけで、続編やリメイクの関係ではありません。ただ、今回の映画と『夢チョコ』には共通点があります。それは、両作品とも完全なミュージカル映画であること、そしてウンパルンパの歌やキャラクターデザインが同じということで、とても結びつきを感じる作りなんですよ。『チャリチョコ』はウンパルンパ以外歌わないのでミュージカル映画ではないですし、父親との確執が描かれてウォンカの性格がやや狂気じみているところもあったので、この映画とのつながりはあまり感じられませんでした。

<設定の経緯が語られないところにモヤる>

今回の映画は、ウォンカがチョコレート店を開くという目的に向かって前進していく中で、チョコレート組合との対立があり、それを仲間と共に乗り越えるというわかりすい構図になっています。さらに、陽気な歌とダンス、ファンタジーな映像表現で包み込んでいるので、老若男女問わず楽しめる内容にはなっていると感じました。

ただ、物語の前提となる設定が「そういうものである」と言わんばかりに、いろいろ“出来上がった状態”からスタートするので、気になる点はあるんですよ。僕が特に大きく疑問を感じたのが2つありました。それは、なぜウォンカは魔法のチョコレートを作れるのか。また、町が夢を見ることを禁止している理由は何なのかということです。特に後者は、夢を見ることを禁じられた町で、夢を持つことの大切さを伝えるのが本作の要なので、そこは明確にしておいた方がいいと思うんですよね。まあ、チョコレート組合が自分たちの利益を守るためなんでしょうけど、それなら単にチョコレート店を開くことを禁止すればいいだけだと思いますし。子供の頃なら何も考えずに楽しめたと思いますけど(笑)

<前作を知っていると平和すぎる世界観に刺激が少ないと感じる>

この映画は全体的に平和で、それはそれですごくいいんですけど、逆に個人的にはちょっと物足りなさを感じてしまいました。過去作では、生意気な子供たちが自らのわがままによって自滅していくのが面白くて、「悪は滅びる」的なところに爽快感を感じられたんですよね。一方で、本作は平和で誰も傷つかない分、幸せな気持ちで観ることができるものの、過去作を観ている身からすると、「ざまあみろ」っていう展開を期待してしまったので(笑)そもそも、今回のウォンカはすごく純粋でいい人なんですよ。チョコレートを作りたいという気持ちと仲間を想う優しさを持ち合わせていて、絵本の主人公にピッタリな感じなんですよね。後の物語で、やや他人に対していじわるというか、あまり関心がないようになってしまうことが信じられないぐらいに好青年です。きっとこの後に何かあるんだろうなあと勝手に想像してしまいます(笑)

<そんなわけで>

幸せな気持ちになれるミュージカルファンタジーでしたが、過去作を知っている身としては、もう少しウィリー・ウォンカに取っつきにくさがあってもよかったかなあと思いました。各レビューサイトの評価が高いですけど、それは主演のティモシー・シャラメのファンが釣り上げているんじゃないかっていう邪推をしてしまいます(笑)いや、映画自体は素晴らしいと思いますし、その世界観にハマる人がいるのもわかりますけどね。それにしても、ヒュー・グラントはかつてラブコメの帝王みたいな感じだったのに、最近はちょっと不思議な役どころが多くて面白いですね。


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