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こんな映画を見せられたらアジア映画の覇権を握っているのは韓国だろうと思ってしまうほどの面白さだった『モガディシュ 脱出までの14日間』

【個人的な満足度】

2022年日本公開映画で面白かった順位:6/117
  ストーリー:★★★★★★★★★★
 キャラクター:★★★★★★★★★★
     映像:★★★★★
     音楽:★★★★☆
映画館で観たい:★★★★★★★★★★

【作品情報】

   原題:Escape from Mogadishu
  製作年:2021年
  製作国:韓国
   配給:ツイン
 上映時間:121分
 ジャンル:アクション、スリラー
元ネタなど:実際に起こった脱出劇

【あらすじ】

1990年、ソウル五輪で大成功を収め、勢いづく韓国政府は国連への加盟を目指し、多数の投票権を持つアフリカ諸国へのロビー活動に励んでいた。ソマリアの首都モガディシュで韓国大使を務めるハン(キム・ユンソク)は、現地政府の上層部に何とか取り入ろうとしている。

一方、韓国より20年も早くアフリカ諸国との外交を始めていた北朝鮮のリム大使(ホ・ジュノ)も国連加盟のために奔走し、両国間の妨害工作や情報操作はエスカレートしていく。

そんな中、ソマリアの現政権に不満を持つ反乱軍による内戦が激化。暴徒に大使館を追われた北朝鮮のリム大使は、絶対に相容れない韓国大使館に助けを求める決意をする。

果たして、ハン大使は彼らを受け入れるのか、全員で生きて脱出することができるのか。そしてその方法は──?

【感想】

なんて、、、なんて面白い映画なんでしょうか。。。いや、、、もうさ、、、ちょっと韓国映画すごすぎない?って。濃かった、、、すべてが濃かった。。。共通の目的のために敵対する2つの国が共闘するストーリー性。そこに絡む人たちの人間模様といったキャラクター性。それらがうまくかみ合って、テンポよく進むから、ものすごく中身の詰まった最高の2時間でした。。。2021年度韓国でN0.1になったというのもうなずけます。

<前提となる時代背景>

この映画の舞台は1990年のソマリアです。1990年と言えば今から32年前。日本はバブル最後の年で、世間はまだ浮かれていたかもしれませんね。『ちびまる子ちゃん』の放送が始まったり、スーパーファミコンは発売されたりと、小さい頃の僕はそっちの方ばかり興味があって、社会情勢のことなんて何にも知りませんでした。

1990年時点では、まだ韓国も北朝鮮も国連に加入していません。公式サイトにも書かれていますが、1986年のアジア競技大会と、1988年のソウルオリンピックを経てグローバル化を掲げていた韓国は、その流れで国連加入を見据えていました。国連に加入するためには加盟国の投票が必要なので、ソマリアがどの国に投票するのかが重要だったんですね。一方、北朝鮮は20年も前から対外外交を行ってきたので、彼らの方が優勢ではあったようです。

しかし、その頃のソマリアはちょうど内紛が激化し始めた頃でもありました。反乱軍と警察の攻防は日に日に勢いを増し、ソマリアにある他国の大使館も「よその国は出ていけ!」と標的にされるほどのカオス状態。そんな危険地帯と化した当時のソマリアからいかして脱出するのかというのが、この映画のメインストーリーです。

<前半は外交戦がメイン>

この映画は大きく前半と後半で2つの話に分けることができます。前半は韓国と北朝鮮の外交戦に焦点を当てています。ソマリアからの投票を得るために、お互いに妨害したり情報操作したりと、相手を蹴落とすことが日常茶飯事の日々。外交官らしく頭を使った知能戦というよりも、現地のチンピラを雇って脅したり、裏の取れてない週刊誌みたいな情報を新聞に載せたりと、もはや手段を選ばないやり方に必死さを感じました。

<後半は脱出劇がメイン>

政治色の強い前半に対し、後半はソマリアからの脱出劇というアクション映画寄りでした。内紛が激化してきたら、もはや外交どころじゃありません。警察すらもろくに機能しない中、ついに北朝鮮は大使館を捨て、韓国に助けを求めることを決めます。突然の北朝鮮からの救助要請に、韓国側も最初は見捨てようとします。だって、ずっと敵対していた相手ですし、感情的にもすぐに助けたいとは思わないでしょう。でも、やりたい放題の反乱軍の手がすぐそこに迫ってきている上に、北朝鮮側には幼い子供たちもいました。そんな切羽詰まった状況に、韓国側もついに救いの手を差し伸べます。そこからはいがみ合いもありつつ、「生きてソマリアを出る」という共通の目的のためにお互いのツテをたどりながら、脱出方法を模索するために奔走していきます。

<圧倒的な映像表現>

ここまでで、敵対する2国が同じ目的のために協力する設定や、そこで奮闘する人たちの人間模様が面白いっていうのは何となく伝わったんじゃないかなと思います(伝わってなかったらごめんなさい。僕の文章力のなさです)。

でも、それだけじゃないんですよ、この映画は、、、!実は映像もとんでもないスケールなんです!再現したソマリアの街並みはもちろんのこと、暴動シーンがあまりにもリアルでして。至る所で行われる殴り合いや蹴り合い。警官が警棒でぶっ叩きまくったり、お店や民家から物を盗みまくったり、たまにニュースなんかで流れる暴動の様子がそのまんま再現されているんです。それも壮大なスケールで。多分エキストラだと思うんですけど、画面いっぱいにおびただしい数の人たちがいて暴れまわってるんです。演技未経験の人にもトレーニングを積ませたらしいんですが、そのこだわりようがハンパないですよね。

さらに、銃撃戦やカーチェイスなど、前半の政治色が強い雰囲気はどこへ行ったんだとツッコミたくなるぐらいの大迫力のアクションシーンもたくさん盛り込まれていて、視覚的にも楽しめる内容でした。個人的には、韓国側の参事官であるカン(チョ・インソン)と、北朝鮮側の参事官であるテ(グ・ギョファン)のケンカのシーンが好きでした。ただのケンカのはずなのに、カンフーみたいになってるのがかっこよくて(笑)こうやってうまくエンタメ要素を組み込むところが、韓国映画の好きなところです。

<目頭が熱くなるラストシーン>

そういう流れがあってからの、あのラストシーンですよ、、、!これはもう、、、なんというか、、、言葉に言い表せなぐらいのやるせない気持ちですね。あれだけいっしょに死線を潜り抜けた韓国と北朝鮮の面々。そこには敵対感情を超えた、人と人との絆が芽生えていたに違いありません。でも、世間的に両者が仲良くすることはできないんですよ。だから、最後のあの別れ方、、、わかるけど悲しいし、悲しいけどわかる、、、そんな複雑な気持ちになりました。。。両国の大使が一番わかっていたでしょうね。人としてあるべき姿よりも、国としてあるべき姿を取ったことが。。。

<そんなわけで>

秀逸なストーリーとキャラクター、大迫力の映像にしんみりするラスト、、、極上のフルコースなんじゃないかってぐらいの大スペクタクル映画でした。さすが韓国映画。とにかくメチャクチャ面白からぜひ映画館で観て欲しいです(もうすぐ終わっちゃいますけどw)。


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