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監督以上に映画を理解していた作曲家の生涯を描いた『モリコーネ 映画が恋した音楽家』


【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:1/7👑
  ストーリー:★★★★★
 キャラクター:★★★★★★★★★★
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★★★
映画館で観たい:★★★★★

【作品情報】

   原題:Ennio
  製作年:2021年
  製作国:イタリア
   配給:ギャガ
 上映時間:157分
 ジャンル:ドキュメンタリー、伝記、音楽
元ネタなど:作曲家「エンニオ・モリコーネ」(1928-2020)

【あらすじ】

1961年のデビュー以来、500作品以上もの映画やテレビの音楽を手がけ、2020年7月に惜しまれながらこの世を去ったエンニオ・モリコーネ。

スクリーンの中では、モリコーネ自らが自身の半生を回想。かつては映画音楽の芸術的地位が低かったため、幾度もこの仕事をやめようとしたという衝撃の事実を告白する。

クラシック音楽の道へ進まなかった葛藤と向き合いながら、いかにして音楽家としての誇りを手にするに至ったのか。『ニュー・シネマ・パラダイス』や『荒野の用心棒』、『アンタッチャブル』など、45作品にも及ぶ傑作から選ばれた名場面や、最高の音響技術で再現されたワールドコンサートツアーの演奏と共に紐解かれていく。

また、クエンティン・タランティーノやクリント・イーストウッド、ウォン・カーウァイ、オリバー・ストーンら錚々たる顔ぶれの監督・プロデューサー・音楽家へのインタビューを通して、モリコーネがいかにして偉業を成し遂げたのかを解き明かしていく。

【感想】

これは映画好きにはぜひ観てほしい作品ですね。過去の名作と共に、その作曲家が振り返る自らの人生というのはとても趣深いものがありました。とか言ってますけど、恥ずかしながら、僕がエンニオ・モリコーネの名前を知ったのは、実はこのドキュメンタリー映画なんですよね。もちろん、彼が楽曲を担当した映画は観たことありますが、作曲した人の名前までは意識がいかずで(笑)でも、すごい人ですよ。とにかく絶賛しかされていませんでしたから。それほど、モリコーネの才能は類稀なものだったということですね

<父の影響で音楽の道に>

もともと、モリコーネは医者になりたかったようです。ところが、父親がトランペット奏者だったこともあってか、無理矢理音楽学校に入れさせられてしまいました。厳しい指導と練習の日々。そのおかげで技術は上達していったようです。その後、著名な作曲家であるゴッフレード・ペトラッシに師事し、作曲も学んでいくことになります。

<映画との出会いは偶然かつ必然>

卒業後は生活のためにRCAレコードと契約。数々の編曲を手掛けてきましたが、自らが学んだクラシックな作曲技法と、実験的な音楽を融合させた独創的なアレンジが評判となり、いろんなアーティストからの指名が入ります。やがて映画音楽の仕事も舞い込むようになり、これが彼の運命を決定づけることとなりました。そこでも彼の独創性は如何なく発揮され、これまでの映画音楽とは一線を画していたようですね。音楽学校からのレコード会社、そして映画音楽というのはごく自然なキャリアの歩み方だなと思いますが、そこでの評判は彼の才能ですよ。クラシックと実験音楽の掛け合わせなんて、当時誰も思いつかなかったでしょうから。

<自らのキャリアに対する悩み>

仕事自体は順調だったと思いますが、モリコーネの中には葛藤があったようです。アカデミックな音楽を学んできた身なのに、商業的な映画音楽をやっていていいものかと。実際に音楽学校の同窓生たちからは、映画音楽は下に見られていたようで、モリコーネを認めようとしない人も少なくなかったそうです。それを変えたのが『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(1984)です。ここで使われた音楽を聴いて、「ああ、これはちゃんと音楽をわかっている人じゃないと作れないな」ということを同窓生たちに知らしめ、中にはこれまでのモリコーネへの対応を謝罪した人もいたほどでした。

<監督以上に映画を理解している>

今回、インタビューを受けていた映画人たちはこぞってモリコーネを大絶賛しており、さすがにやりすぎじゃないかっていう感じがしなくもなかったですが、それはモリコーネの生み出す音楽が素晴らしかっただけではなく、彼が監督や編集者よりも映画のことを理解する能力に長けていたことも関係しているのではないかと思いました。だから、だから、彼はその映画のひとつひとつのシーンにマッチする音楽を提供できたと。中には、監督の意向と違うものもあったそうですが、いざ公開してみると、監督自らが「モリコーネの方が正しかった」と認めることもありました。もはやモリコーネはただの作曲家だけに留まらず、映画を活かす神様のような存在だったことがうかがえます。その才能には嫉妬を通り越して、ただただ尊敬の念を抱くばかりですね。

<そんなわけで>

映画および映画音楽が好きな人には絶対観てもらいたい作品です。モリコーネがいなかったら、映画音楽はここまで発展していなかったとも言われるほどです。常に映画音楽のことを考え、どんなに最低な仕事でも最高の技術を注ぎ込んできたスタンスあってこそなんでしょうね。偉業を成し遂げる人っていうのは、何かひとつのことを愚直にやり続け、常に全力を出すんですよ。当たり前のことですが、これはなかなかできることじゃないっていうのは、今までの人生の中で僕も身に染みてわかります。ぜひ、多くの映画人が絶賛するモリコーネの才能と彼の歩んだ人生をその目に焼きつけてほしいです。


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