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阿部サダヲのすべてを飲み込むような目が夢に出てきそうな『死刑にいたる病』

【個人的な評価】

2022年日本公開映画で面白かった順位:40/68
   ストーリー:★★★☆☆
  キャラクター:★★★★☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【ジャンル】

サスペンス

【元になった出来事や原作・過去作など】

・小説 櫛木理宇『死刑にいたる病』(2017)

【あらすじ】

ある大学生・雅也(岡田健史)のもとに届いた一通の手紙。それは世間を震撼させた稀代の連続殺人鬼・榛村(阿部サダヲ)からだった。

「罪は認めるが、最後の事件は冤罪だ。犯人が他にいることを証明してほしい」。

過去に地元のパン屋で店主をしていた頃には信頼を寄せていた榛村の願いを聞き入れ、事件を独自に調べ始めた雅也。しかし、そこには想像を超える残酷な事件の真相があった―。

【感想】

さすが『孤狼の血』シリーズの白石和彌監督ってだけあって、ダークでグロく、恐怖を見事に演出できた映画でした。原作の小説は読んでいませんが、これは見ごたえ抜群です。劇場にはけっこう若い人が多かったんですけど、なんでだろう。そんなに若い人がハマる要素があるとも思えませんでしたが、、、岩田剛典効果、、、?(笑)

<阿部サダヲさんの演技が恐怖そのもの>

この映画、何と言っても榛村役の阿部サダヲの存在感に引き込まれます。あの榛村というヤバい男。物腰が柔らかく、穏やかで誰にでも優しいおじさん。30歳以上も年が離れた10代の若い子たちとうまく信頼関係を築いていくそのコミュニケーション能力がすごいんですよ。変にしつこくせず、ほどよい距離感を保ってて。人たらしとでも言うんでしょうかね。

そうやって出来上がった関係性を、残酷なまでにぶち壊すんですよ。やられた方からしたらたまったもんじゃないです。ある日突然拉致され、燻製小屋に閉じ込められ、少しずついたぶられる。爪を剥ぐシーンなんて、「ひっ」って声が出ちゃうぐらい背中に寒気が走りました。まるで、かわいい子犬を見るかのような目で見つめながら、ベリッベリッて剥がしていく榛村のサイコパスっぷり。あの死んだ目が頭から離れません。

<結局踊らされている雅也>

本作を観ていて気になったのが、大学生の雅也です。彼は何であそこまでして榛村の最後の事件の真相を追うんでしょうか。わざわざ彼の弁護士のところに行き、アルバイト扱いになってまで事件の詳細を調べ上げます。勝手に名刺を作って関係者に会いに行くほどですから。そもそも弁護士の事務所に行くだけであんなに事件の詳細がわかるものなのかっていう疑問もあるんですけど(笑)とはいえですよ、いくら雅也が中学生のときに榛村にお世話になったからといって、あそこまでするかなあってのは思いますね。ちょっと動機の弱さを感じてしまいますが、逆にそこまでしちゃうぐらい榛村に何かを感じているってことなら、それはそれで榛村の洗脳というか、人たらしっぷりがとてつもないってことですよね。結局は榛村の手の平の上で踊らされているだけって気もしますけど。

そんな彼が榛村との面会のとき、ガラス板が反射して両者の顔が重なる演出があるんですけど、あれはよかったですね。「もしかしてこの2人は何か特別な関係にあるのでは、、、?」っていう期待をもたらしますから。

<そんなわけで>

阿部サダヲさんの圧巻の演技を観たいならオススメです。ただ、けっこうグロいシーンも多いので、苦手な人にはちょっと注意が必要かもしれません。


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