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けじめをつけるのに18年。このまま向き合わずに人生を終えなくて本当によかったなと思った『青春18×2 君へと続く道』

【個人的な満足度】

2024年日本公開映画で面白かった順位:45/60
  ストーリー:★★★★☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

   原題:-
  製作年:2024年
  製作国:日本・台湾合作
   配給:ハピネットファントム・スタジオ
 上映時間:123分
 ジャンル:ラブストーリー
元ネタなど:紀行エッセイ『青春18×2 日本漫車流浪記』(2014)

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
始まりは18年前の台湾。カラオケ店でバイトする高校生・ジミー(シュー・グァンハン)は、日本から来たバックパッカー・アミ(清原果耶)と出会う。天真爛漫な彼女と過ごすうち、恋心を抱いていくジミー。しかし、突然アミが帰国することに。意気消沈するジミーに、アミはある約束を提案する。

時が経ち、現在。人生につまずき故郷に戻ってきたジミーは、かつてアミから届いた絵ハガキを再び手に取る。初恋の記憶がよみがえり、あの日の約束を果たそうと彼女が生まれ育った日本への旅を決意するジミー。東京から鎌倉・長野・新潟・そしてアミの故郷・福島へと向かう。鈍行列車に揺られ、一期一会の出会いを繰り返しながら、ジミーはアミとのひと夏の日々に想いを馳せる。

たどり着いた先で、ジミーが知った18年前のアミの本当の想いとは。

【感想】

原作のエッセイは未読ですが、綺麗なラブストーリーだなと思いました。読後感が素晴らしいというか、何も言わずに「うんうん」と余韻を嚙みしめたくなる、そんな映画でしたね。

<ストーリー自体は"例の"パターンでオーソドックス>

こんなに美しいラブストーリーを作るのは誰かと思いきや、『新聞記者』(2019)以降、映画にドラマに引っ張りだこの藤井道人監督なんですね。
この方すごくないですか?人間らしい生活できるのかってぐらい作ってる作品が多いですし、そのどれもが高評価なのが凄まじいですよ。まあ、個人的には作品によって好みはマチマチなんですけど(笑)今回の映画は好きな方でしたが、各レビューサイトの評点の高さに期待値が上がりすぎたのか、世間の評価ほどは刺さらずだったんですよね~。

その理由のひとつは、結末が早めにわかってしまったことです。これはもう自分の見方が歪んでるのかもしれないんですが、こういうラブストーリーを観るときって、「絶対ペアのどっちかに何か事情があるだろ」って疑っちゃうんですよ(笑)で、本編始まって30分ぐらい経った頃ですかね。ジミーとアミが夜景を観るシーンでフラグが立っちゃったので、オチが見えてしまって。「あ~、そういうパターンね」って(笑)ネタバレしないために詳細は書きませんけど。いや、それ自体は全然問題ないですよ。単純に僕の好みの問題というか、邦画のラブストーリーってその手のものが多すぎるので、オチに向かっていく予定調和的な面は少しありました。

<綺麗すぎて逆に物足りなさを感じることも>

個人的に刺さらなかったもうひとつの理由は、全体的に綺麗すぎたことです。本当に感動的で切なくて、手をつなぐのもやっとのプラトニックな関係に昔の自分を思い出すぐらい、こっちが照れ臭くなってしまうほどのリアルさがあるのがこの映画のいいところです。いいところなんですが、恋敵だったり、2人の間のトラブルだったり、ちょっとした対立構造を求めてしまったんですよね。この映画、悪い人が誰もいなくて、旅先で会う人会う人みんないい人ばかりで、なんかちょっと出来すぎてる感じがあったんですよ。いや、今の時代、不安定な世の中だからこそ、せめて物語の世界だけは優しさで満たされたいってのもありますけどね。もしかしたら、もう自分のようなおじさんには綺麗な世界はまぶしくて見れないのかもしれません(笑)手紙を書くのもいいですけど、ジミーもアミももっとメールすればいいのでは?と思っちゃったりもしました(笑)野暮ですよね~。なので、これも映画自体には申し分なく、単純に自分との好みのマッチングの問題ですね。

<ロケーションが素晴らしい>

あと、今回の映画で推したいのがロケーションです!台南のちょっとごちゃっとした感じや、アミの故郷である只見の雪景色は訪れたくなるよう魅力的に映し出されていました。もちろん、この映画のストーリーとの相乗効果もあるとは思いますけどね。でも、旅先で出会う人々の優しさもあって、「旅っていいな」と思わせる力がこの映画にはあります。

もはや、ラブストーリーってストーリーや設定は出尽くしているので、アクションやホラーなどのミックスジャンルにしない限りは、キャラクターの細かな心情変化およびそれを演じる役者さんの演技や、こういうロケーションの使い方で差別化していくことになるのではないでしょうか。その点、こうやって国境を超えるラブストーリーを全方位に受け入れられそうな形に仕上げられるのも藤井道人監督の手腕の高さゆえんかもしれません。

<そんなわけで>

しんみりする、でも読後感がとてもいいラブストーリーでした。そういえば、劇中映画として岩井俊二監督の『Love Letter』(1995)が使われていましたが、やっぱりこの映画を作る上でも多少なりとも影響はあった気がしますね。ちょっと雰囲気が似ていると言いますか。とはいえ、今回はメインの2人が海を越える間柄なので、それだけで新鮮な気分になりますけど。この映画、若い人の方がハマるんじゃないでしょうか。自分もあと10歳若ければ、もっと刺さってたんじゃないかなって思います(笑)


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