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PRマーケティングのプロによる国家レベルの詐欺を楽しめると同時に、広告・宣伝の在り方を考えさせられた『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』

【個人的な満足度】

2024年日本公開映画で面白かった順位:60/87
  ストーリー:★★★★☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★☆

【作品情報】

   原題:Fly Me to the Moon
  製作年:2024年
  製作国:アメリカ
   配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
 上映時間:132分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:なし
公式サイト:https://www.flymetothemoon.jp/

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
1969年、アメリカ。ケネディ大統領が宣言した〈人類初の月面着陸を成功させるアポロ計画〉から8年――。未だ失敗続きのNASAに対し、国民の関心は薄れ、予算は膨らむ一方。この最悪な状況を打破するため 政府関係者のモー(ウディ・ハレルソン)を通してNASAに雇われたのはニューヨークで働くPRマーケティングのプロ、ケリー(スカーレット・ヨハンソン)。

アポロ計画を全世界にアピールするためなら手段を選ばないケリーは、宇宙飛行士たちを「ビートルズ以上に有名にする!」と意気込み、スタッフにそっくりな役者たちをテレビやメディアに登場させ、“偽”のイメージ戦略を仕掛けていく!そんな彼女に対し、実直で真面目なNASAの発射責任者コール(チャニング・テイタム)は反発するが、ケリーの大胆で見事なPR作戦により、月面着陸は全世界注目のトレンドに!

そんな時、モーからケリーにある衝撃的なミッションが告げられる――!

【感想】

アポロ計画を題材とした映画。ではあるんですが、宇宙開発事業そのものに焦点を当てているというよりは、国民にアポロ計画をアピールするために奔走するPRマーケティングのプロに焦点を当てた話でしたね。なので、宇宙に関わる仕事をしている方よりも、広告や宣伝に携わっている方のほうが楽しめるかもしれません。

<PRマーケティングのプロとかいう詐欺師>

この映画はとにかくケリーのとんでもない行動に驚かされます。PRマーケティングのプロってことになっていますが、半分、、、いや8割ぐらい詐欺師じゃないですかね(笑)冒頭の自動車会社でのプレゼンだって、お腹にクッションを入れて妊婦を演じたほど。プレゼン相手が男性しかいないからって、うまく"女"を使って感情に訴えかけようとしたってワケです。ある意味戦略とも言えますが。

そんな彼女の手腕を見込んで近づいてきたのが政府の人間モー。国民の関心を集めよとアポロ計画のPRを彼女に依頼します。大役を任されたケリーですが、手段を選ばずとんでもない暴挙に出ました。NASAの職員に似た役者を起用してメディアに登場させ、情に訴えるありもしないウソをペラペラ話させて国民の心をわしづかみにしたり、腕時計のオメガを始めとした各企業とのタイアップも決めてアポロ計画の予算も増やしたりと、強引に物事を進めていきます。決して褒められるやり方ではありませんが、宣伝マン、いやウーマンとしてはやり手であることは間違いないですよね。自らの美貌を利用し、呼吸するようにウソをつける口のうまさを駆使してどんどん実績を上げていくその姿はビジネスマンとして見習いたい部分もあります(自分は性格的に絶対無理ですがw)。真面目な発射責任者のコールも、当初はケリーのやり方に難色を示していたものの、着実に国民の関心が向いてきていることに彼女の腕を認めざるを得ませんでした。

ただ、全部1969年という時代だから可能だったと思うんですよね。物事の真偽なんてほとんどわかりませんから。現代はコンプライアンスが厳しいですし、SNSで簡単に裏事情がリークされてしまうので、まず絶対に通用しないでしょう(笑)

<国にとって大事なのは世界からの見え方>

そんな中で降りてきた政府からの通達。それは、アポロ計画が失敗したときに備えて、月面着陸のフェイク映像を用意しておくというものでしたNASA内にある巨大な建物の中に月面を模したセットを組み、役者に宇宙服を着せ、ワイヤーで吊るし、あたかも宇宙にいるかのような映像を全国に流すのです。ケリーはコールたちには内緒でその準備を進めていきます。確かに失敗に備えてプランBを用意しておくのはビジネスとしては定石かもしれませんが、それは同時にコールたちを信用していないということにもなりますからね。多大な時間とお金を投じて進められてきているアポロ計画に対してとてつもなく失礼な行為です。言い方は悪いですが、ケリーはこれまで詐欺のようなことばかりしてきました。とはいえ、性根は腐っていなかったようで、コールたちのがんばりを間近で観てきたからこそ、水面下で動くようにしたのでしょう。ちなみに、ケリーはもともといい人だったんじゃないかという過去のエピソードが本人の口から語られますので、ぜひそこも注目してみてください。

そして、アポロ11号は無事に月面着陸に成功します。「あれ、あのフェイク映像はどうした」って?実はそこですったもんだがあるんですけど、そこはネタバレになるのでここでの記載は控えます。ぜひ劇場でお楽しみください(笑)ただひとつ、アメリカという国にとっては「月面着陸が成功しようが失敗しようが、ソ連よりも先に月に降り立ったという見せ方の方が大事」っていうのがマジで怖いなと思いました。

<広告や宣伝の在り方とは>

今回のプロジェクトを受けて、ケリーが最後に言っていた「みんなが信じなくても真実は真実。みんなが信じてもウソはウソ。」というようなセリフが個人的にはとても刺さりました。なぜなら、広告や宣伝において大事なことは何かっていうことを考えさせられるからです。商品のよさを伝えるのが広告や宣伝の本来の役割だとは思いますけど、現実に本当に秀逸な商品やサービスってそこまで多くないのかなと、今までの人生を振り返って思います。まあ、商品やサービスの良し悪しって自分が何を求めているのかっていうところにも大きく依存しますけど、あるがままの姿を映しただけじゃ意外とパッとしないモノやサービスは少なくないですよねー。大したことないのにすごく価値があるように見せるのも広告や宣伝のやり方ではありますが、果たしてそれは正しいのかなとも思うんですよね。現実以上の見せ方をすることで、それが誇張なのか、下手したらウソになるのか、でもみんながそれを信じて買って、人って自分が買ったものを正当化したがるので、そのためにまたいいように言うっていう流れになってしまうと、なんだか歪んでるなと感じる自分もいます(笑)

ケリーはこれまで詐欺に近いことをしてきたと自分でも語っていますが、何かの広告や宣伝を担うって大変ですよね。現実と誇張とウソの線引きをどこにするかって難しそうで。例のフェイク映像も本物の映像とほぼ変わらないってことで、「もはや本物って何だろう」とさえ思いました。

<宇宙関連で有名な人>

本編とはあんまり関係ないんですが、僕自身が宇宙に行った人でガガーリンとアームストロングをしょっちゅう間違えてしまうので、この際以下にまとめておきます(笑)

人類で初めて宇宙に行ったのが、ロシア人のユーリイ・ガガーリン。
人類で初めて月面に降り立ったのが、アメリカ人のニール・アームストロング。
人類で初めて民間人の宇宙飛行士として宇宙に行ったのが、日本人の秋山豊寛。

また、現時点で日本では有人宇宙ロケットは打ち上げておらず、アメリカが月面への着陸計画を終了した1972年12月までに月に行ったのは合計12人で、いずれもアメリカ人の宇宙飛行士です。

<そんなわけで>

実話ではないけれど、実話であってもおかしくないようなアメリカらしい設定の映画で楽しめました。コメディタッチで観やすい上に、広告や宣伝の在り方についても考えさせられるので、広告ビジネスに携わる方は観てもいいかなと思いました。

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