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「かかし」の見方がそのまま人生を表している2人の男の珍道中『スケアクロウ』

【個人的な満足度】

「午前十時の映画祭13」で面白かった順位:20/25
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

   原題:Scarecrow
  製作年:1973年
  製作国:アメリカ
   配給:ワーナー映画
 上映時間:112分
 ジャンル:ヒューマンドラマ、ロードムービー
元ネタなど:なし

【あらすじ】

※公式サイトの文章を元に記載。
寒風すさぶカリフォルニアの路上で二人の男は出会った。6年の刑期を終え、刑務所から出所したばかりのマックス(ジーン・ハックマン)と、5年の船員生活から足を洗ったライオン(アル・パチーノ)。彼らは見た目も性格も正反対だがなぜか意気投合、一緒に旅をすることになる。

二人は、マックスが洗車屋を開業するというピッツバーグに向かうが、その途中、ライオンが長らく会っていなかった妻アニー(ペネロープ・アレン)と子供が住むデトロイトに寄り道することに。

【感想】

午前十時の映画祭13」にて。1973年のアメリカ映画。男2人がピッツバーグを目指して移動していくロードムービーで、若き日のジーン・パックマンとアル・パチーノが観れるだけで眼福な作品でした。

<真逆の価値観を持つ2人の男>

タイトルの『スケアクロウ』は日本語で「かかし」の意味。みなさんはこのかかしに対してどんな印象を持つでしょうか。畑を荒らすカラスを“恐怖”で追いやるように見えるか、その逆で“笑い”を取って畑から去らせるように見えるか。この映画の主人公であるマックスとライオンは、まさにその相反する2つの価値観を持っていました。

マックスは自身でも言うようにひねくれ者で、他人を信用せず、短気ですぐに手が出ます。そんな彼は、カラスはかかしを恐れて逃げていくと考えており(多くの人はそう捉えるでしょうし、「スケアクロウ」の語源もそうですが)、暴力や恐怖でトラブルを解決するタイプのようです。

一方でライオンは、かかしは笑いでカラスを遠ざけると考えていました。カラスがかかしに対して、「変な帽子に変な顔。あの百姓はいいやつだから、荒らすのをやめておこう」と思っていると。だから、彼はトラブルを自ら笑いを取ることで解決していくんです。

こんな2人がよく意気投合するなと思いますけど、逆に真逆だからこそ、磁石のように惹かれ合うものがあったのかもしれませんね。

<マックス兄妹の感覚が信じられない(笑)>

冒頭の出会いで、なぜ2人があんな車も滅多に通らないようなところにいたのかは謎ですが、マックスとライオンははヒッチハイクを繰り返しながらピッツバーグを目指します。どこか駅まで送ってもらって電車で移動した方が早くないかって気もしますけど、お金がなかったんでしょうか(笑)

道中、マックスは妹のコーリー(ドロシー・トリスタン)を訪ねます。この妹がなかなかにびっくりな人物で。当時のアメリカがそんなもんなのか、それとも民度の問題なのかはわかりませんが、マックスとコーリーの貞操観念というか、人との距離感がすごいんですよね。コーリーは友達のフレンチー(アン・ウェッジワース)といっしょにいたんですが、フレンチーはマックスにゾッコンです。家でみんなで夕食を囲んだ後、マックスとフレンチーは部屋によろしくしに行くんだけど、コーリーは笑って見送るんですよ。自分の親友がアニキと部屋にフ〇〇クしに行くのをニコニコしながら見送れるの、自分にはちょっと信じられませんね(笑)いや、マックスもマックスですが。妹がいる前でその親友とヤリに行くかって(笑)

<笑いに走るライオンだからこそラストが衝撃>

この映画の一番印象的なところは、ラスト20分でした。もともと、ライオンは5年前に身重の妻を残して家出した身で、5歳になる子供に会うためにデトロイトに向かおうとしていたんですよ。で、ピッツバーグに行く前にそのデトロイトに寄って、公衆電話から家にかけるんですが、、、さすがに5年も経ってるから状況が変わっていましたね。。。妻は再婚していて、子供は死産だったとウソをつかれちゃうんですよ。ライオンは子供が生まれたかどうかも知らなかったので、それを信じちゃって。妻としてはもうライオンに会いたくなかったし、子供がいると知れたら何が何でも会いに来ると思ったからウソついたんだと思います。まあ、妻の気持ちもわかるっちゃわかりますが、ライオンからしたら生きる拠り所にもなっていた子供がいなかったと知って相当なショックだったと思いますよ。

でも、ライオンはそのことをマックスに言わないんですよね。「元気な男の子だ!」ってウソをついて。きっと現実を受け入れたくなかったのと、もともと笑いでトラブルを解決する人間だから、笑って終わらせたかったんでしょう。とはいえ、さすがの彼も心に深い傷を負ったようで、テンションがおかしくなってマックスに病院に連れて行かれるほど。薬のおかげで眠りにつくも、医師もいつ治るかわからない状況に陥ります。いつの間にかライオンと強い友情で結ばれ、お互いがお互いの居場所になりつつあった中で、マックスは彼を治すと決意して、、、まさかのおしまいですよ(笑)「えっ、ここで終わり?!」という尻切れトンボ感に驚きますが、後日談も続編もなく、本当にここで完結しちゃうんです。すごい終わり方だなとは思うんですが、ずっと笑いに徹していたライオンが悲劇で終わるというこのギャップある結末は、この映画で唯一にして最大のインパクトでした。ただ、ライオンが家出した理由や、子供が生まれたであろうことをどうやって知ったのかは語られていないので、そこは気になるところでもありますけど。

<そんなわけで>

男2人のロードムービーってことで、『イージー★ライダー』(1969)のような雰囲気がありました。やや淡々とした印象はあるものの、若い頃のジーン・ハックマンとアル・パチーノという同じ男から見ても色気を感じる2人をスクリーンで観れるのは最高に目の保養になります。特にアル・パチーノはマジでかっけぇです。。。生まれ変わったらアル・パチーノになりたい。。。


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