見出し画像

人生の一コマ 第16話

第15話の続きです。

友人達のあたたかい無償の優しさが私の食べる機能を動かした。

これは 本当に奇跡だと思う。

友人達はこの奇跡を起こしてくれたのだ。

ありがたい    

本当にありがたい。

       

    私は当時  深い悲しみにおおわれていたためか   時間の感覚が無かった。

朝・昼・夜と時間が過ぎて行く感覚が無かった。

そして、嗅覚や味覚がまだ機能していなかった。

まだ料理を作る事が出来なかった。

すると   友人達は食事当番を作り食事を届けてくれた。 

ありがたい

本当に  ありがたい

こうして 友人達に支えられ    生活を始める事が出来た。

 子供達は小学校と幼稚園に通っていたが

私の回復力では送迎が出来ない為、休ませていた。

すると友人が毎日送迎をしてくれると言ってくれた。

友人達のお陰で子供達は学校や幼稚園に行けるようになった。

友人達の無償の思いは   どんどん私を回復させて行った。 


次は第14話で書いた 私に起きた不思議な現象の

⑵     「  字が読め無くなった  」  について。

この現象に気づいたのは夫が亡くなって数時間後だ

知人に電話をしようと思い  手帳を開いて見た。

何も頭の中に入ってこない。

目では見えている。

しかし 見えているものが何なのか認識していないのだ。

長い時間をかけて手帳から知人の名前を見つけた。

次は電話番号を見て電話機のダイヤルを押そうとするが

数字が記憶されていない事に気付いた。

数字は読めたが  読んだ数字が頭の中に記憶されていない。

だから ダイヤルを押せないのだ。

私は  手帳をダイヤルの側に付けるようにした。

例えば  手帳に書かれている「3」と   ダイヤルの「3」 と言ったように

同じ数字を並び合わせダイヤルを押して行った。

あまりに時間がかかり過ぎたのか「ツー」と音がしてしまい、

また、最初の数字から押し直す事になった。

何度か繰り返しやっと途中で切れる事なく電話をかける事ができた。


    文字が書けなくなっていたのにも困った。

困ったのは住所を書くことも出来なくなていた事だ。

わたしは使うだろう文字を手帳に書き留め持っているようにした。


   一年程経った頃だと思う

なかなか文字が読めるようにならなかったので、

夫の愛読書で読む練習を始めた。

     一文字めを声に出して読み上げる。

     二文字目を声を出して読む、

     三文字目を声を出して読む頃には

     一文字目の字を忘れている。

     一つの単語になるまで  何度も繰り返す。

     例えば    「あさがお」と書いてあるとする。

     「あ」と読む。

      「さ」と読む。

        「あさ」と読む。

          「あさが」と読む。

            「あさがお」と読む。

       すると  頭の中で、 あさがおの イメージ出来上がる。

「あ」と言うひらがなが読めない訳ではなかった。

「あ」と読んで 一度では 記憶にとどまってくれないのだ。

最初は 一行を読み上げるのに30分はかかっていた。

だんだん  読みなれてくると1ページを30分で読めるようになって行った。

私は  毎日  本を読んだり   書いたり  計算をしたり。

なんとか 自分を取り戻す為に色々やってみた。 



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?