『立方体の思い出』 # 毎週ショートショートnote

私の職場は立方体。
他にも色々ある中で、私の職場は立方体。
いつもと同じ立方体。
空も飛ばない立方体。

高層ビルの最上階。
そこならお空も見えるけど、遠くの海も見えるけど。
私の職場はその３階。
そこが私の立方体。
私の机も立方体。
それでもそこが窓際ならば。
向かいのビルの男の子。
ちらっと見ては目をそらす。
ごめんなさいね、3階で。
いえいえ、僕こそ3階で。
そんな出会いもあればこそ。

けれどもここはドアの横。
立方体の隅の角。
向かいのビルも見えません。
鳥の飛ぶのも見えません。
雨が降るのもわからない。
風が吹くのもわからない。
花が咲いてもわからない。
立方体の隅の角。

だから私は踊ります。
いえいえ私は踊らない。
私の指が踊りだす。
私の前のキーボード。
そこが私のステージよ。
タッタタ、タッタタ、タッタタタ!
カチカチ、カチカチ、タッタッタ!
タップダンスを踊ります。
私の前のキーボード。
私の指が踊ります。

こんな私の思い出いかが？
立方体の思い出いかが？