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『優しい彼女』

理想の彼女をあなたの手で。
それがうたい文句だった。
要するに、AI搭載のアンドロイドだ。
毎週届く部品と雑誌。
それを組み立てていけば誰でも作り上げることができる。
雑誌には、アンドロイドの話題や、自分好みに作り上げるためのコツが掲載されている。
ちょうど、別れたばかりだった。
最初から、自分好みにできるのならうまくいくんじゃないか。
そんな欲望もあった。
まあ、飽きれば途中でやめればいいと、創刊号を購入してみた。
創刊号は半額以下のお得な価格だ。

過去にも、あの名車が蘇るだとか、懐かしい豪華客船を飾ろうだとか、そんな言葉に乗せられて、何度かこの手の雑誌を購入したことがある。
どれも、途中で投げ出してしまった。
一度購入日を忘れると、まあ明日でいいやとなり、そのうちに、冷静に、本当にこれが欲しいのかと考え始めてしまう。
部屋の中には、作りかけのスポーツカーや、帆船、区分けされたケースの3分の1しか埋まっていない石のコレクションなどが散乱してる。
しかし、今回は違った。

毎週毎週、少しずつ、自分の好みの彼女が目の前にできあがっていく。
その楽しみは予想以上のものだった。
最初は、毎号発売のたびに購入していたが、途中から定期購読に切り替えた。
完成が近づくと、部分的に動かせるようにもなってくる。
速度とか、角度とかを、微調整するのも楽しみだ。
声や笑いかたも好みのものに作ることができる。
連日、深夜まで没頭した。

2年後、ようやく完成した。
非の打ち所がない。
こんな彼女を待っていたんだ。
さっそく、稼働させてみる。
動かない。
名前を呼んでみる。
反応しない。
表情のない瞳がこちらに向いている。
今夜はもう遅い。
明日、サービスセンターに聞いてみよう。
メールよりも、直接話した方がいいだろう。
少しでも早く解決したかった。

目覚めると、彼女がベッドの傍に立ち、優しく微笑んでいた。
僕は、もう半分ほど解体されていた。

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