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『白い新聞』

学校からの帰り道、裕太君はいつもの公園を通っていました。
ふと見るとベンチでおじさんが新聞を読んでいます。
でも、そのおじさんの新聞は真っ白ではありませんか。
裕太君はおそるおそる近づきました。
「おじさん、何を読んでいるの?」
おじさんは白い紙から顔を上げると、
「これは、新聞だよ」
「でも、真っ白じゃないか」
「おじさんには楽しい記事がいっぱい見えるんだ」
納得できない裕太君におじさんは言いました。
「これは不思議な新聞でね、希望のある人には楽しい記事が、希望のない人には悲しい記事が見えるんだ。そうだ」
おじさんはカバンの中から、同じような白い紙を取り出しました。
「ほら、君にもあげるよ」
裕太君はその日の夜、
「明日はいい日になりますように」
翌朝、白い紙を見ると、悲しい事件や事故、戦争の記事でいっぱいでした。
次の日も、その次の朝も同じでした。
裕太君は、おじさんのところに行きました。
おじさんは、笑い出しました。
「馬鹿だなあ。でも、君は子供だから、教えてあげよう」
そして、
「明日の新聞には、今日のことが書いてあるんだよ。だから、明日楽しい記事を読みたかったら、今日という日を希望をもって過ごさないといけないんだ」


※愛媛新聞「超ショートショートコンテスト」で惜しくも(嘘です)落選した作品です。

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