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『恋の墓場』

ある男が、面白い場所があるので行きましょうよと言ってきた。
特に予定もないので、ついていくことにした。
なぜか、深夜に待ちあせわせ、明かりのない道を歩いた。
都会から離れて、まだ男は歩き続けた。
それでも、不思議に疲れることはなかった。

橋を何度も渡り、小さな集落をいくつも過ぎた。
低い山をふたつほど越えたところで、男は振り向いた。
「もうすぐですよ」
しかし、これまでと同じくらい男は歩き続けた。
林を抜けると、開けた場所に出た。
「着きました」

「恋の墓場です」
男は言った。
「あまり知られてはいませんが、ここが恋の墓場です」
なるほど、たくさんの恋が打ち捨てられていた。
傷だらけの恋。待ち続ける恋。恨んでいる恋。優しく寄り添う恋。
見覚えのある恋は、もしかして私の古い恋なのか。

そして、妻の過去の恋を見つけた。
「ごらんになりますか」
少し迷ったが、見るのはやめておこうと思った。
男と2人で、また長い道を戻った。

静かな寝息をたてる妻の顔を見つめた。
何事もなかったように、その隣に横になった。

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