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バランスの悪い乗り物。

アウトドア関連職に身を置いていますが別に登山は好きではない自分。
嘘でも好きと言えと言われますが、「面白いですか山?」と言うスタンスで
顧客も多いし、異動の時はめちゃくちゃ常連さんが来てくれて異動先にも遊びに来てくれているので個人的には嘘は言わない方がいいと思います。

もちろん山は好きですし、テントを担いで縦走をするのも好きですが、
家とどっちが好き?と言われると間違いなく「家」と答えます。
旅行の本質は?と尋ねられたら昔の自分なら
「見聞を広めるため」「知らない世界に身を置きたいから」なんて答えますが、今なら「家の快適さを再確認するため」と言うかもしれません(笑)
山は一人で自分のペースで歩ければ最高なんですが、小屋もテント場も下界以上に混んでたり、時間に厳しいですし…山ってこんなはずじゃと思うことも皆さんあるので充分お気をつけくださいね。

標高200Mでも最高の場所もあるんです。


「じゃなんで働いているの?」よく聞かれますが
「絵は描けないけど相手の頭の中にイメージは描いてあげられる」からとこたえます、、、だいたい「ちょっと何言ってるかわからない」となりますけど。

専門系の販売職種ってなんでか自己肯定感の高い人が多くて割と上からいっちゃう人が多いんですよ(笑)
相手より自分の方が登れるから、滑れるから、知っているからetc…紋切り口調で
「ありえないです」
「こっちの方がいいです」…普通では考えられないのですがなぜかこれが罷り通る。
ただ、山の初心者からすると「お前何様?」と当然なるわけです。
そりゃそうですよね、わからないから店に来てるのに「ありえない」言われたら普通はキレます。
でも売っている側は自己肯定感の高い人が多い(ようは自分が正義だと思っている)から永遠にこの溝は埋まらないわけです。
「俺は登れる(お前よりできる)から教えてやってるんだ」…登山用品店にかかわらず、専門性が高い販売店のクレームトップです(笑)
(商品知識がないってクレームはあまりありません、お客さまお詳しいですねで割とスルーできちゃったりします…

この話、店をカメラ屋に変えても、スノーボードショップに変えても、クレームです。
クレームにならない場合は相手がドMか自分の店かのどっちかだけですね(笑)

そんな修羅場のような場所で迷える子羊がテント泊始めたいんです」なんて来たら
「はい20万持ってきてね」「はい、初心者はダブルウオールの国産テントで、ザックは60Lのこれ」

….
……….ね?ドMじゃなきゃやってられないでしょ(笑)

山岳部ならそれもいいでしょう、先輩よりいいもの買ったら虐められますから。
でもこのお客さんは可愛いテントを張ってテント場で写真を撮りたいのかもしれないし、ザックは心に秘めている物が有るかも知れない、、、
テントを担いだ自分をうまくイメージできていないかも知れない。

そう言う人にテントを何張りか実際に張って見せながら
「これは横開きなんで寝転がって夕日が見れて最高ですよ」とか
「フライが赤いテントは寒い時でも気持ちが暖かくなります」とか
「このテントをあのテン場に張って小屋でビールを買って本を読む!サイコー!」とかね。

スキルで押しきらない接客って本当楽しいし、お客様がまた遊びにきてくれて
「こんどあの山行くんです!」って目をキラキラさせてくれるともっと最高。
写真を見せてくれて「またきます!ありがとうございました」って帰る姿を見送るのも最高。
毎回思うのですが「ありがとうを言いたいのはこっちの方ですよ」と。

ほかにも山岳部の侵入部員が3年後に偉そうに後輩連れてくるのが微笑ましかったり、サマーレスキューよろしく医学部の子が山小屋の手伝いで住み込むにあたり
お婆ちゃんが孫にプレゼントと靴を買いに来たり、、楽しいこといっぱいあるです。

ま、人間ですからそうじゃない時もかなりありますが僕の方こそありがとうですと言う機会が多いからこの仕事が辞められない。
(お金が欲しければ販売員はお金持ちにはなれませんので独立するか、別の道を最初から選びましょう)

山で亡くなるお客様も何人かいましたし、辛いこともいっぱいあります。
前にも娘さんがメンバーズカードの登録を抹消しに店にご来店いただいた時に「本当に母がいつも楽しそうにモジャモジャ頭の店員さんがと話してた」と言われると「ダメですよちゃんと帰らないと!」と僕言ってたんですけどねって言いながらちょっと涙がでてしまったり、正しいことってなんだろうとか思うこともあるんですが、それでもこの仕事を続けているのはやっぱり楽しいんです。

バランスの悪い乗り物の話に突入する前に山の話で終わってしまいましたが

登山用品店に入る時のアドバイスは
・自己肯定感の高そうな店員がいたら避ける
・靴売り場の店員を捕まえる時は履いている靴をみろ
(スポルティバやスカルパを履いてる店員なら靴好きの可能性が高いですよ)
・口うるさい先輩を連れて行かない
(店員のアドバイス+先輩のアドバイスでめちゃくちゃになります)

この3つに注意すると楽しくお買い物ができるかも知れません(笑)


バランスの悪い乗り物の話は…寒くなる前に書きましょう。



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