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通販商品開発担当者の人材育成について

通販会社の社長は得てして、自ら起業し業績を伸ばし成功したオーナー経営者が多い業界です。そうした会社の場合、商品開発にあたっては社長自らが行うケースも多々あります。
それ自体に対しては、それぞれの会社の方針があるので特段異論はないのですが、商品開発が社長の専任業務となってしまうのも問題があるのではと私は思っています。
ひとりの人間で出来ることには偏りもあれば限界もあるからです。となると当然商品開発の担当者を育成しなければなりません。
しかしどうやって?
商品開発担当者の育成は非常に通販の人材育成において最も高い難易度だと私は思っています。今回はこの点について振り返りつつ考えてみたいと思います。

商品開発のプロセス

商品開発の人材育成方法を考えるということは、商品開発をどのように行なっていくのかを考えることでもあります。そこでまずはその業務フローを分解してみることから始めます。

そして分解したひとつひとつの工程を整理し、それぞれの工程で必要になる観点を示し、その観点を活かす情報収集を行うことから始まります。このような分解をしていくことで、担当者が何を学び、どんな経験を積み、どんなスキルを高めていくのが良いのかを言語化していきます。こうして工程を整理したものを人材育成のステップに落とし込んでみよう、というのが私の考えです。

と言っても実際には会社の数だけ商品開発プロセスは存在し、また開発担当者の数だけ存在するといってもいいかと思います。それぞれの会社がどうすれば効率よくヒット商品を生み出せるのかを考え、担当者も日々頭を悩ませながら進めているのが実情だろうと思います。
ここでのプロセスはあくまでも私なりのものであり、私が経営していた会社なりのプロセスということをまずはご理解いただき、あくまでも一事例として参考程度にしていただければ幸いです。

さて、以前にこちらで、ひとつのアプローチとしてこんな記事を書きました。

商品を作る前に先に売れそうな広告を作ってみる。その広告で売る商品を探すことから開発を始めるというものです。
これもひとつのプロセスとしてご参考にいただければと思います。

上記のようなアプローチがある一方で、今回はゼロから開発しない場合。
例えば売れそうな商品を街で探している時、このサンプルを売れる商品にしてくれと上司に命令された時、メーカーさんや商社さんからご紹介いただいた商品を売れる商品へ改良していく時。こんなケースから商品開発始める時に、どのようにしていけばよいのか?そしてこれらのケースから、商品開発の人材育成についてを考えてみたいと思います。

上記の記事とは異なり、こちらは実際にその商品が目の前にあるわけですから、実際にはこちらの方が分かりやすいかもしれません。むしろ通販会社の商品開発においては、このプロセスで進むケースの方が多いような気が致します。(自分調べです)

商品開発とは、嚙み砕いた言い方をすれば売れる商品を考える、そして作るということです。そして人材育成とは、その工程を出来る人を育てる、または育つ環境を作るということでもあります。
私はこの工程には1つの大前提と3つの大事なポイントがあると考えています。この前提とポイントを手順として捉えることで、商品開発のプロセスを手順化し、また育成にも取り入れるようにしていきました。

大前提

大前提は、自分が販売する相手は誰か?ということです。
自社は、または現在の自分は、どんなターゲットを対象にした商品開発をしているのかをきちんと認識していないと商品開発はできません。
ヒット商品と言っても、全人口、老若男女誰もが欲しくなる商品というものは、まずは存在しません。

・ターゲットは誰か、(セグメンテーション)
・その人はどんな悩み、不便を解決したいのか、(提供するメリット)
・その人は、そのためにどれくらいの費用を払える人なのか、(開発商品の販売価格帯)

少なくともこれくらいは事前にきちんと整理し、担当者であれば上司とすり合わせておく必要があると思います。
もし緻密なターゲット設定がされているのであれば、それに基づき進めていけばよいかと思います。

商品が写真映えするか?

通販は紙面や画面、ディスプレイ上で読み手の目に入ります。商品そのものは写真で見てもらうことになりますので、写真映えするかどうかは大きなポイントです。
もちろんインパクトのある形状であれば、それに越したことはありません。
形状にインパクトがないものは、容器はパッケージでインパクトを与えるデザインを行なうことで補うこともできるでしょう。

この場合のインパクトとはその広告を目にした刹那に印象に残るか、それ以前に目が止まるかが重要です。
目立つだけではなく、逆に地味であることでも成り立ち得ます。写真はキレイに撮りたいと思うのは人情ですが、実はキレイな写真というのは逆に普通過ぎて印象に残りにくいケースもあります。私はむしろ「違和感」を大事にすると良いと思っています。
違和感といっても、販売する以上は不快感を与えてしまっては本末転倒ですので、「あれ、何か変?」とか「「なんだこりゃ??」という、心ならずもつい目が止まってしまうレベルがよいと思います。

商品に物語はあるか?

商品そのものは、消費者に何らかの便益を与えることで価値があります。しかし便益というのは必ずしも実利的、機能的なものとは限りません。いわゆる情緒的価値と言い換えてもいいかもしれません。

高級ブランド品などは、そのブランドを所有することに価値を感じるケースがあります。機能ではなく、持っていること、身に付けていることが価値なわけです。そのためにブランドはそのブランドの価値を高めるために大きな投資を行ない、価値を高め、世界に広める活動を行ないます。しかし中小通販会社にはそんな余力はありません。ここでいう物語とは、その商品がどのような経緯で考えられ、作られたかというストーリーにスポットライトを当てるとお考えいただければよいかと思います。

以前のこちらの記事も近しいことを書いていますので、併せてお読みいただければ幸いです。

こちらの記事で書いた商品に関する様々な情報が集まると、自然とそこに物語が存在しています。その物語が、売り手が想定する顧客のニーズやウォンツにハマるかどうかを見極めることが重要になるかと思っています。
もしその物語がターゲットにハマるとイメージできたら、その人に対して自分自身が言葉で説明できるかを考えてみることで、なんとなく広告のイメージが湧いてくるのではないかと思います。

一言では説明できない

通信販売は言葉で説明し、写真や画像でイメージを掴んでもらい読み手のニーズやウォンツを喚起させる商売です。言い換えれば言葉で説明する、ということが特徴です。
ということは、一目見て読み手が何だか分かる商品というのは、実は通販向けではないとも言えると私は考えています。一目見て欲しいと思える商品であれば、お店の棚に並んでいても売れてしまう商品とも言えるからです。

  • 一見何の商品だか分からない。

  • 一言では説明できない。

  • 1回聞いただけでは何が良いのかよくわからない。

こうして書くとダメな商品のように思えてしまいますが、実はこれが大事だと思うのです。
一見では何だかわからないから、説明を読んでみようと思う心理もあります。広告にある写真をみて「なんじゃこりゃ??」という違和感、或いは好奇心でもいいかもしれませんが、なにか引っかかって、それで文字を読んでみる。何となく分かったような気がするが、広告を読み進めているうちになんとなく分かってきた気がする。

単なる商品と思っていたら、

  • 実は何やら色々と工夫が凝らされているらしい。

  • 作った会社は実は知られざる名工だったようだ。

  • この通販だけでしか販売していないので、他では買えない。

  • 今この機会を逃すと次にいつ販売されるか分からない。

という読み手の読んでいる時の心理を想像しながら、どのように説明していくかを考えてみる。すると広告の文章構成が定まってきます。どの順番で説明していくかは、読み手の興味、共感をどのように感じ、またそこで生じる疑問や不安をどのように払しょくしていくかに大きな影響を及ぼします。慎重に推敲を重ねて読み手が最終的に「欲しい」と思ってくれる文章を紡いでいくことが大切です。

ここまでが私が考える商品開発のプロセスであり、人材育成に活用したポイントとなります。

この文章でどれだけの人が、「なるほど!」と思っていただけるか甚だ不安ではありますが、その人の持つセンスに依存せずに、言葉としても抽象的になり過ぎず、できるだけ具体的な手順を示すことで、商品開発の人材育成に活かすことができたのではと思っています。


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