見出し画像

通販経営者として、或いは中小企業経営者として新卒採用を振り返る

前職時代の採用活動は基本的には新卒採用を中心に行っていました。
人材を採用するためには、企業としては採用活動を行っていきます。
高齢者向け健康通販会社でしたので、おそらくほとんどの学生は知ることがなかったはずの会社が、どのように採用活動を行ってきたか?
そしてその新卒採用者がその後どのように成長していったのか?
その辺を改めて振り返ってみたいと思います。

新卒採用を始めたきっかけ

それは私の発案ではなく、当時の総務担当のベテラン社員からの提案で始まりました。時期としても就活の終盤のタイミングでした。そのためか初期費用はかからず採用が決まった場合の成果報酬という条件での営業があったのです。コストも大してかからないので、物は試しにという感覚が実際のところでした。

中途採用でしか社員を採用してこなかったので、果たして新卒を採用してどのように扱えばいいのかも分かりません。ある意味いい学生がくれば儲けもの、という意識です。
そもそも応募してくる学生がいるのかさえ半信半疑だったのです。

また当時はいわゆる買い手市場の時代でもあり、知名度のない中小企業でもよい人材を得られる可能性が高いと言われていました。

そんなことから、まずはやってみよう!というチャレンジ精神だけでスタートしました。
今思うと私の判断理由としてはそんなレベルの相当曖昧なもので、後先を考えずによくも始めたものだと反省するばかりなのですが、逆に言うと新しいことを始める時というのはこれくらいの勢いで始める方がいいのかもしれないとも思います。
知り過ぎてしまうと、リスクや実務が具体的に見え過ぎてしまうので判断も慎重になり過ぎてしまうこともあります。
結果オーライだった今だから言えることなんですけどね。

新卒社員が入社した

こんな形でスタートした新卒採用。採用を始めてみると何人かの応募者が来ました。本当に来るものだとびっくりしたのが正直な感想でした。
そして面接を行い2名に内定を出しました。果たして4月に本当に出社してくるのかという不安を抱きつつその日を迎えると、無事に2名とも出社してくれました。

よかったよかった!

となるところですが、ここから新人研修をどう進めていくか、という現実が始まりました。一応は多少の新人研修を用意してはいたものの、実際に始めてみると予定通りにはすすみません。その理由はこちら側の準備不足がほとんどでした。OJTとなっても教える側の教え方も不慣れだったこともあり、苦労も悩みも多かった。
当時も勿論ですが、今思い出してもその2名には本当に申し訳なかったなあと思います。

そしてそれから10数年経ちました。

ありがたいことにその2名は今や立派な社員に成長して現在も働き続けていてくれます。仕事もできて知識も経験も豊富。頼りになる人として上司からも部下からも頼りにされています。

何とかなるものだ!と言ったら怒られそうですが、なんとかしてくれたそのふたりには感謝しかありません。

一度経験した強みというのは大きいもので、新卒採用はその後もずっと継続して行ってきました。その後リーマンショックなどもありさらに買い手市場となっていたのも、企業側にとっては幸いでした(当時の学生さんは本当に苦労されたと思います)。
その結果、しばらくは母集団形成にはさほど困らずに採用活動を続けることができました。

募集を行い母集団を形成する

採用活動についてまず大事なことは、会社の存在を学生に知ってもらうことです。

2期目以降は主にマイナビを使い、そのパターンにそって採用プログラムを作りました。
自社の募集ページを作り、登録している学生向けにDMを送り、説明会に参加してもらい、面接予約に進んでもらうといった流れの時代です。

当時は人事専任がいなかったので、社員の協力を得ながら主として私が実作業を行っていました。

なぜ私が自ら実業務を行っていたのか?

その理由は、私が楽しかったから!

先方の担当者と話し合いながら募集ページのコンセプトを決めます。ライターやカメラマンが来て取材や撮影を行います。そして出来上がったページに修正を加えて校了する。

そして私が希望するタイプの学生がいそうなセグメントを絞り込んでターゲット設定する。これを管理者画面にて操作するのですが、なにやら通販をしているステップと同じなので、非常に楽しい!DMの文章も自分で作成して送信します。

そんなこんなしていると学生からエントリー登録、説明会予約といったレスポンスが返ってきます。もはや通販そのものといっても過言ではないのです。
なんらかのレスポンスが返ってくるので、その数を増やそうと躍起になりました。そんなわけで自ら率先して行いました。

通販のような細かなテストまでは出来ないのですが、それでも上手く行ったり行かなかったり試行錯誤が重ねられてその結果も直ぐに分かる。通販で蓄積した経験も結構活用できたので、中小企業の割には母集団形成は上手に出来た方だったと思います。実際にマイナビの営業担当さんからも驚かれたくらいです。

通販会社はある意味採用活動においては、他の業種よりもかなりのアドバンテージがあると思います。

説明会を開催する

そして会社説明会を開催して学生に実際に会社に来てもらうことになります。
基本的には学生は自社のことは何も知りません。募集ページの会社案内や会社紹介、社員の仕事内容(いわゆる体験談的な)を見て興味を持ったという程度です。

HPをみて調べてみる人もいたはずですが、通販会社なので通販サイトしかありません。いわゆるコーポレートサイトはなかったのです。そして通販サイトの商品は高齢者向けの健康雑貨や健康食品ばかり。今思うとよく来てくれたと改めて思います。

説明会では主に商品開発や広告企画の話をしました。その理由は学生の関心が強いからです。商品は地味ですが職種としては一般的に人気がある部類に入るためか、そこで関心を高めてくれる学生は多かったと記憶しています。
また主な説明は当初は基本的に私が自ら行っていました。私は通販の仕事は本当に楽しい、という思いで仕事をしていたので、その楽しさを一番伝えられるのではと思ったのです。
「この社長、本当に通販の仕事が楽しんだろうなあ」
と感じてもらう。それが狙いでした。

他では中小企業の良さをアピールしました。
・若い社員でも比較的裁量があること
・上司、社長との距離が近く判断が速い
・人数が少ない分仕事の幅が広い
こういった点も反応はよかったと思います。学生は大手志向が強いと思われがちですが、このようなイメージから敢えて中小企業志望という学生も一定数はいます。大手にはない良さを打ち出すことは重要だと考えます。

しかしその一方で中小企業への不安もあるわけです。
・ワンマン社長の独裁体制では?
・給料安いんでしょ!
・ブラック体質(当時はブラック企業という言葉はあまり聞きませんでしたが、同じようなことは言われていました)
これらの点は実際に会社に来てもらって、そこで会社の空気感を感じてもらうしかありません。説明会では若手社員にも参加してもらい、ざっくばらんな懇談の時間や社内見学ツアーを開催することで、学生に感じてもらう工夫をしました。

今までの私の記事を読んでいただければ、ワンマン独裁でもブラック体質でもないことはお判りいただけると思いますが、それを私から感じてもらうだけでなく、社員の雰囲気から感じてもらう方が説得力があるという理由です。

良く言えば大らか、悪く言えばぬるい空気感の会社です。
それを良い方の感覚で感じられた人こそが社風に合うだろうという読みです。
そしてこれらのおかげか、
・説明会が楽しかった。
・他社では見たことのないプログラムだった。
・若手社員がのびのび働いている様子が良くわかった。
といった感想となり、実際に面接への誘導と志望動機を強めてもらうことに繋げられたと思います。

最初は勢い任せで始めた新卒採用でした。
試行錯誤というよりも行き当たりばったりで反省点も多いのですが、続けることで次第に経験が積み重なり、ノウハウも習得できたかなと思っています。

そして10数年たって

そして最後に、今日この記事を書いた理由を告白をします。

私は通販の現場で育ってきましたが、経営者になってからは現場仕事からは手を放しました。本心ではやりたかったのですが、社長が現場に口を出すよりも現場に任せる経営方針にしたからなのです。しかし心の底ではやりたい思いに蓋をしていたのです。
しかし、採用においては私が現場になれる領域でした。そんな背景もあって私自身が通販の現場というか広告企画、マーケティング、テスト、そしてそのレスポンス。これらを疑似体験できる場として新卒採用を続けたという理由だったのです。
企画を考えて実行しその結果に一喜一憂したい。レスポンスでワクワクドキドキしたい。そんな思いをまた味わいたかった。

採用は通販広告のように、広告を出せば直ぐに売上に繋がるわけではありません。
しかしそこにレスポンスしてきた学生が後に社員となり、経験を積み、そして大きな売上を上げる人材となっていきます。時間はかかりますが、実は非常に魅力的でワクワクする仕事だったということをお伝えしたかったのです。

さらに言えば、そうした新卒採用者の中から私の後継社長を誕生させることすら実現できました。

そのすべては冒頭に記した、
「物は試しに」
から始まったことなのです。

今回の記事はこちらに続きます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?