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『ユダヤの商法』を読む

本日の読書感想文は、藤田田『ユダヤの商法 世界経済を動かす』(KKベストセラーズ2019新装版)です。

語り継がれる名著の新装復刻版

著者の藤田田(1926/3/13-2004/4/21)氏は、『銀座のユダヤ人』と言われた国際的な実業家です。1950年に創業した自身の会社、藤田商店を核に輸入/輸出を手掛けて富を築き、「日本マクドナルド」「日本トイザらス」「日本ブロックバスター」の創業者でもありました。

藤田氏は、本書の中で自らをたびたび”商人”と称しており、ユダヤ系ビジネスマンからも『銀座のユダヤ人』と呼ばれて一目を置かれたことを誇りに思っていたことが伺えます。そして、ユダヤの公理、ユダヤの商法を学び、実行したことが自ら成功の礎になっていることを隠しません。

この所、渋沢栄一、五代友厚など幕末から明治の近代日本の草創期に貢献した実業家の功績・思想への関心が高まっています。戦後日本の傑物の一人であった藤田氏の功績も、いずれ注目される日がきそうです。

ユダヤの商法 ~必読の書を今噛み締めて読む

本書の初版発行は1972年です。新装版でも初版本の内容を忠実に再現したとのことで、現代のコンプライアンス感覚や空気だと収録が難しい内容もあえて注釈付きでそのまま収録されています。既に古典的名著という評価を受けているということでしょう。

1971年7月20日、銀座三越の1階にマクドナルド1号店がオープンした直後に出版された本なので、当時の雰囲気が漂っています。

ユダヤ商法に商品はふたつしかない。それは女と口である。(P34)

という「ユダヤ商法四千年の公理」(公理なので、その証明は不要)を実践し、ハンドバックやダイヤモンドなどの第一(女)の商品を取り扱って実績を上げてきた藤田氏が、新たに手がけた第二(口)の商品が、ハンバーガーでした。

タンパク質の摂取量が少ない日本人の体質改善を目論む目的でハンバーガーを手掛けたといい、

日本人が金髪になる時こそ、日本人が世界に通用する時だ。日本人が金髪になる日まで、私は、一生懸命にハンバーガーを食べさせる。(P39)

という破天荒な目標と必ず成功するという算盤をはじいてスタートさせた事業は見事に成功し、ハンバーガーは日本人の間に完全に定着しました。ハンバーガーがなぜ普及すると考えたかの洞察や、マーケティング、広告宣伝方法などは、PartⅥに詳しく書かれています。

時代の空気とは若干合わないかもしれないが…

約50年前の日本で書かれているので、そのまま現代の事例に当て嵌められない教えもありそうです。しかしながら、まずは虚心坦懐に読むべきだと思いました。

例えば、冒頭の『78:22の宇宙法則』は現代でも間違いなく活きるものです。数字に鋭くなること、判断が的確で迅速であること、「減らない」ことを重視すること、メモをとること、雑学に詳しくなること、などは、お金もうけの上手い人に共通する特徴だと感じられます。

こういう基本的な知識を知らずに生きていると、必ずカモられて結果的に生きづらい人生になってしまいます。自己防衛の為にももっと早く読んでおくべき本だったかなあ、と後悔しました。

特に以下の二点は、刻んでおいた方がいい法則かもしれません。二点目は藤田氏もなかなか克服できなかったという懐疑主義です。

何かを狙った場合、まず「買う」のはシロウトである。クロウトはまず売る。売ってから儲けるのである。商売は『売り』と『買い』があって、初めて成立する。そして、『買い』よりも『売り』の方が、はるかに利幅が大きいのである。(P207)
他人を信じずに自分ひとりを信じようとする態度はいいが、他人の言うことを全て疑ってかかることは、行動のエネルギーを阻害する以外の何物でもない。懐疑主義は結局無気力に陥ってしまうだけだ。それでは金儲けなど、とてもできないよ。(P175)

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