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『知的再武装 60のヒント』を読む

本日の読書感想文は池上彰・佐藤優『知的再武装 60のヒント』(文春新書)です。

知的であることへの憧れ

知的(ちてき)
1 知識・知性の豊かなさま。また、知性の感じられるさま。
2 知識・知性に関するさま。
ー デジタル大辞泉

「知的である」とはどういうサマを言うのでしょうか? 知的な人、知的な生活、知的な仕事、知的好奇心… 普段からよく耳にするけれども「知的」って、どこかふわっとしたことばに感じます。

大辞泉の定義にもしっくりきません。「知識」と「知性」の違いを考え始めると、かなり大上段な話になりそうなので、本日は深入りを避けます。

日本を代表する知的な人がこの二人

私が「知的な人」ということばから連想する人物の筆頭は、本書の著者である佐藤優氏です。

多数の著作があって、アクセスがし易い位置にいるからかもしれませんが、数多い評論家の中でも、幅広い分野にわたって広くて深い知識量を誇り、洞察力が半端なく鋭いと感じます。

氏の著書を読むと、「仕事のできる人はここまでやるんだ……」と打ち拉がれた気持ちになります。ただ、外務省でインテリジェンス畑を歩む過程で磨き上げた仕事力は、”知の巨人”を構成する一部に過ぎません。

もう一人の著者である池上彰氏は、現代の数多い事象を咀嚼して一般人にわかりやすく伝える達人です。氏は本書の中で、「わかりやすさ」の危険を説いていますが、テレビで目にする氏の解説は、圧倒的に「わかりやすい」のでついつい傾聴してしまいます。

お二人は、共著を何冊も出されている名コンビでもあります。バックグラウンド(マルクス)を共有しているせいか、お互い波長が合うのでしょう。

知識を蓄えて、知性に換える

「知的な人間」は、私がずっと目指している目標です。

19歳の時、「たくさん本を読もう」と決意してその一歩を踏み出して以来、物事を知る努力から逃げないようにしよう、とやってきました。知的好奇心が枯れてしまった時から真の堕落が始まると、自分を戒めています。

私はナマの自分が、優れた感性とか、カリスマ性とか、天才的な発想力とか、人を惹きつける容姿とか、迅速な行動力とか、他人への共感力とかを持ち合わせておらず、どうやら人間的な魅力に欠けた存在であることにも早い段階で気付いていました。

凡人の自分が世の中を渡っていくには、日々の読書で得た知識の力を知性に変換し、自分の素養の足りない部分を補っていくしかないと思いました。知識≠知性なのはわかっています。闇雲に知識量を詰め込んでも、知性は簡単には身につかないことも、実感しています。

不器用で鈍感な私は、普通の生活を送っているだけでは知性が自然に身につきません。意識して大量の情報のインプットを繰り返し、幾分かを知識として掬い取り、咀嚼しながら自分の中の滋養としてきました。

苦しい時には知性が底力になると信じて今も続けています誰かの説いている知識を蓄えて消化し、自分なりの知性に換えていく、という以外の方法がわからないのです。

60のヒントを噛み締める

知の巨人である二人も、知識を得る努力を日夜愚直に続けておられることが本書からわかります。大量の知を取り入れる経験をされたことで得たであろう大切なもの以外を切り捨てる方法も披露されています。

対談形式にして「わかりやすい」ノウハウになるように工夫されています。とても読み進め易い本です。大切なことの確認作業によいと思います。

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