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『家康はなぜ、秀忠を後継者にしたのか 一族を繫栄に導く事業承継の叡智』を読む

今日も、天気がすぐれません。雨が激しく降っていた午前中は部屋で過ごし、雨の上がった午後にはカフェに出掛け、読書三昧で一日が暮れました。今日読んだ加来耕三『家康はなぜ、秀忠を後継者にしたのか 一族を繁栄に導く事業承継の叡智』(ぎょうせい2014)の読書感想文を残します。


父と子の事例研究として

本書は、歴史家・作家の加来耕三氏が、月刊『税理』に連載した「一族繁栄の叡智~歴史に学ぶ事業承継の法則」を単行本化したもので、全四章、23の事例が収められています。タイトルが、このようになっているのは、著者の加来氏が、

家康が身を呈して示した後継者育成計画ほど、日本史上、見事なものはなかった、と考えてきた。

P3

からでしょう。加来氏は、家を繁栄に導く土台を築いた傑出した二代目後継者として、藤原不比等(第一章の四事例目で解説)、徳川秀忠(第一章の一事例目で解説)を、高く評価しています。

私の人生後半戦の重要課題には、息子との関係をどう構築するか、父として息子の未来のためにどういう支援・貢献ができるのか、という重たいテーマがあります。私が優秀な偉人ではないにせよ、本書の事例で扱われているような内容は、大変興味深いものでした。

人の運命とは……

つくづく思ったのは、人の運命は最終的には偶然の積み重ねで決まってしまうとはいえ、愚直に精進する姿勢が欠かせないなあ…… ということです。持って生まれた器量の善し悪し以上に、教育や環境によって培われて、磨かれていく人間性や価値観によって、最終的な運命が左右されていることを思い知らされます。幼い頃に苦労を重ねた経験の有無が、その人の人生に与える影響は少なくないものの、決まった法則はなく、幼少期の経験がプラスに働くか、マイナスに働くかは状況次第のようです。

時流を読み解く先見性や分析力を評価されている人物であっても、生涯において常に成功してきた訳ではなく、複数の失敗や挫折を乗り越えていることがわかります。調子に乗らないこと、必要以上に巨大権力者の嫉妬や疑念を招かないように持てる能力をセーブしたことが、存命のポイントになっているケースもあります。(細川家、前田家…)「禍福は糾える縄の如し」という歴史書『史記』のことばが、そのまま当てはまるような事例も数多くあります。

英傑、藤原不比等

戦国時代や幕末の物語は出版物も多く、私もそれなりに熟知している人物が多かったものの、日本の代々受け継がれる統治形態の基礎を築いたひとりと著者に絶賛されている、藤原不比等(ふひと)については、これまで殆ど興味がなく、本書を読んで漸くその凄味を知った人物です。

彼は、大化の改新の主要人物として歴史にその名を残す藤原(中臣)鎌足の次男です。しかし、父親の鎌足は、不比等の若い頃に亡くなっており、必ずしも父親の偉業を継承し、七光りによって出世した人物ではありません。法学者としても、政治家としてもすこぶる優秀であり、慎重な振る舞いで周囲から慕われつつ、時には権謀術数も使って運を味方にすることもできた稀有な人物だったようです。不比等についての書物は、色々出版されているので、是非理解を深めてみたいと思います。

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