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私の好きだった曲⑦:マイ・ウォン・タイム

『私の好きだった曲』シリーズの第七弾は、エイジア(Asia)の『マイ・ウォン・タイム My Own Time』です。

アルバム収録曲

この曲はイギリスのロック・バンド、エイジアのセカンドアルバム『アルファ Alpha』(1983)の4曲目に収められています。彼らが得意とした壮大で、美しいバラードです。

シングルヒットした曲も多いエイジアの楽曲の中では、知名度こそ今一つながら、私が洋楽修行を始めた駆け出しの時代から、よく聴いているお気に入りの一曲です。

エイジアとは?

エイジアは、1970年代に人気プログレッシブ・ロック・バンドでならした猛者たちによって結成されたスーパーグループ(スーパーバンド)です。結成時のメンバーは、

ジョン・ウェットン(Vo/B, John Wetton 1949/6/12-2017/1/31)…元キング・クリムゾン、U.K.
スティーブ・ハウ(G, Steve Howe 1947/4/8-)…元イエス
ジェフ・ダウンズ(Key, Geoff Downes 1952/8/25-)…元バグルス、イエス
カール・パーマー(Ds, Carl Palmer 1950/3/20-)…元EL&P

の四人です。

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ファーストアルバムの『詠時感〜時へのロマン Asia』(1982)は、話題を集め、全世界でヒットする成功を収めました。米国だけでも400万枚以上売れ、ゴールドディスク認定されています。私がお小遣いを貯めて、初めて買った洋楽タレントのアルバムでもあります。

エイジアは、「プログレッシブ・ロックのエッセンスをポップスとして鏤めた3分半の楽曲」というスタイルを確立し、"プログレ・ハードの元祖"と呼ばれたりもしました。昔ながらのファンからは賛否両論があったものの、耳障りのいい楽曲は、ロック初心者の私にはカッコよく映っていました。

この音楽性以上に私がエイジアに惹かれた理由に、ロジャー・ディーン(Roger Dean 1944/8/31- )が描くアルバム・ジャケットが魅力的だったことがあります。私は、彼のイラストが描き出す色彩感覚と、幻想的でどこかアジアのテイストを感じさせる世界観が好きです。

エイジアのスタジオアルバムのタイトルには、AではじまりAで終わることばが付けられているのが特徴で、『Asia(1982)』『Alpha(1983)』『Astra(1985)』『Aqua(1992)』『Aria(1994)』『Arena(1996)』と続き、7作目の『Aura』(2001)まで守られました。

主要メンバーだったジョン・ウェットンの逝去前最後の日本公演となった2014年6月19日渋谷公会堂でのステージを生で体験できたのは、今となっては、よい思い出です。

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バンドは、メンバー・チェンジ、解散と再結成、活動休止を繰り返しながらも、ジェフ・ダウンズを中心に、結成から30年近くなった今でも存続し続けており、定期的に作品を発表し続けています。

意味深な歌詞の世界観

私はこれまで、ドラマチックに盛り上がるメロディアスな曲調を好んで、この曲を聴き続けてきたのですが、改めて歌詞を確認すると、何やら意味深な臭いもします。不安定な身の上に揺れ続ける自分を勇気付けてくれるように感じて、最近また聴き直す機会が増えています。

特に、以下のような表現が沁みます。

I was always busy playing by rules.
Faith in myself, give me the strength to carry on
I'll do what I want to anyway
I'll do what I want and I'll do it in my own time

また、以下の歌詞は意味深です。自分を侮り、騙し通せていると思い込んでいる狡い相手への復讐のことばのようにも受け取れます。

Don't give that same old pack of lies
I'll tell you the story how it really is
You think you always had me under ties
Someone better tell you that the table's turned
Getting your fingers burned, how does it feel?
Now it's for real this is the deal

あるものを目一杯楽しんでいたあの頃

この曲を収めた彼らのセカンドアルバムの評価は、ファーストアルバムほど高くはありませんし、セールス的にもファーストを下回っています。メンバー個々の演奏技術とポップ感が絶妙なバランスで融合されていたファーストと比較すると、豪快さが消え、楽曲やアレンジをより無難にまとめ、売れ筋に寄せたあざとさが見え隠れします。

中学生の私は、この頃、自前のアルバムを三枚(エイジアの2枚とエアサプライのベスト盤)しか持っておらず、その三枚を繰り返し聴いていました。どれも、ほぼ毎晩ワクワクしながら聴いた大切なアルバムです。

今、音楽の楽しみ方は、気に入った曲をDLする方式が主流だし、サブスクを選択すれば、気になった最新の曲も聴き放題です。音楽を手に入れるためのコストと手間隙は劇的に下がったものの、思わぬ掘り出しものに出くわす機会も、アルバム発売日を待ち侘びて手に入れる悦びも減っています。

どちらが幸せなのかなあ…… と疑問に思うこともあります。

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