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『チーズはどこへ消えた?』を読む

本日は、世界中で今も読み続けられている名著、スペンサー・ジョンソン(Spencer Johnson, M.D. 1938/11/24-2017/7/3)・門田美鈴訳『チーズはどこへ消えた? Who Moved My Cheese?』(扶桑社 2000)の読書感想文です。

読んでいなかった名著

私は、この有名すぎる作品をこれまで読んでいませんでした。日本でも大いに話題になった著作であったことは勿論知っていたし、意識高い系ビジネスマンであれば必読のビジネス書だったにも関わらず、私は食わず嫌いで背を向けたままでした。その気になれば、一時間程度で読み終えることすら可能なこの薄い本にかかわることを拒否したのは謎です。縁がなかったとしか言えません。

20数年経って、初めて読み通した結果、本書は噂に違わぬ深い内容が詰まっていることを認識しました。正確に言うと、自分がいつまで経っても克服できない弱点を、わかりやすいストーリーによって真正面から指摘されてしまった居心地の悪さを感じました。話題になっていた頃にきちんと読んでおけば良かったかもしれませんが、紆余曲折はあっても、自分はホーのメッセージ(教訓)通りに行動しているような気もしています。

スニッフ、スカリー、ヘム、ホー

ストーリーはあまりにも有名だし、世に解説記事や分析記事も無数に存在するので、ネタばれを気にする必要はないでしょう。「チーズ」は、幸福、人生の目的、成功、「迷路」は自分の直面している人生や環境の比喩だと考えると、色々な思いを巡らせることができます。ネズミのスニッフとスカリー、小人のヘムとホーが、類型的に色んな人間像を象徴していることも容易に読み取れます。

ホーが消えてしまったチーズへの未練と怨念を断ち切って、新しいチーズを探し求めるべく再び迷路に立ち向かうことを決断するまでの葛藤は、よく理解できます。また、決断した後に学んだ要点を、新しい旅に出るのを逡巡し続けていたヘムの為に、壁に書き残した格言もかなり深いものがあります。

変化は起きる
変化を予期せよ
変化を探知せよ
変化にすばやく適応せよ
変わろう
変化を楽しもう!
進んですばやく変わり、再びそれを楽しもう

P68

自分の中には、それぞれのキャラクターが同居していることに気付きます。一番しんどい立場で滑稽なのは、おそらくヘムでしょうが、自分がヘムとは無関係なタイプとは言い切れません。私には、彼の頑なな態度を嘲笑う資格なんてありません。

何度も読み返した方がいい本

多くの人が指摘するように、何度も読み返した方がいい本です。短い文章ですので、気軽に取り組めると思います。20年以上の時を経て、「チーズ」の意味は、当時以上に多様化していますが、本書が呼びかけるメッセージは何ら価値を喪うものではありません。

表層だけ読み取ってもいいし、深く考え抜いてもいい。いかなるニーズにも耐える本だと思います。つまり、名著なのでしょう。

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