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自己啓発ビジネスを考える

あなたの周囲にも自己啓発が好きそうな人はいないでしょうか? 現状改善の意識は高い‥ 自己啓発系の本を熱心に読んでいる‥ 日常の会話は『私(I)』が主語でビッグワード(人生、成功、経験…)の話題が多い‥ その割に実績はイマイチ… 私はまさにそういうタイプです。本日は、そんな私のような人を相手にする『自己啓発ビジネス』を考えてみたいと思います。

キャリアポルノ?

「確かに自分は自己啓発を考えている時間が長いかもなあ…」と意識するきっかけになったのは、谷本真由美『キャリアポルノは人生の無駄だ』(朝日新書 2013)という本を最近読んだことです。図書館から今も借りてます。

『キャリアポルノ』は著者の造語で、2013年に書かれたブログはネット上で当時かなり話題になったようです。『キャリアポルノ』というインパクトの強い言葉の語源は、著者の説明によれば、英語圏では一般的に使われる『フードポルノ(Food Porn)』に由来するようです。

『フードポルノ』とは、

ウェブサイトや雑誌、テレビ、広告などに美しくて、ゴージャスでおいしそうに見える食べ物や料理のシーンの写真や動画を掲載し、眺めて満足する、という行動 (P45)

のことです。読んだり眺めたりして楽しんで欲望を満足させるだけで、実際に料理をしたり、レストランに足を運んで料理を味わったりしない点が、『ポルノ鑑賞』という行為と似ているためにできた言葉のようです。

また『フードポルノ』には、もう一つの意味合いがあって、アメリカでは

栄養バランスが悪くて高カロリーで健康に悪い食べ物を、食品業界が広告やテレビではさもおいしそうに見せかけて消費者に売りつける行動(P47)

を指すようです。医療団体などから、食品業界はフードポルノ効果で悪質商品を売りつけることによって、消費者の健康を害させることを助長しているとの批判があるようなのです。

著者がこの本で『キャリアポルノ』という造語を使って対象にしているのは、自己啓発本(=キャリア)を読んだだけで満足し、行動しない意識高い系読者達と一見見栄えのよい内容ながら、実際には害の大きい自己啓発本を濫造して金儲けを目論む製作者Gr.達ということになるかと思います。

本書の内容は賛否両論あるようなので一旦離れまして、ここから先は私の私見です。

自己啓発本を読むこと

自己啓発本を手に取る人には、『現状に満足していない人』『自信が不足している人』が多いのは事実だろうと思います。私は自己啓発ビジネスの格好のターゲットになりやすいユーザーであるとの自覚はありますが、比較的安いコストで済む自己啓発本の衝動買いは自分に許しています。駄目と判断すれば、そのまま本を置けば良いだけなので。

「昨日の自分よりも少しだけ良質な自分になりたい」という健全な向上心を持つことは必要だと思っていますし、凹む経験をした時や悩みを抱えて自信が揺らいでいる時の回復ツールとして自己啓発本を使うことにネガティブな感情はありません。

私の感覚では、自己啓発本は健康維持目的のビタミン剤のようなもので、読む目的を意識し、実用的なアイデアを定期的に触れる程度の関係であれば、意識的に遠ざける必要はないように思っています。普段スゴイ人に接する機会もなく(スゴイ人ってバカは相手にしないので)、平凡な環境で生きている人にとって、自己啓発本は、比較的信頼度の高い情報に出会う確率の高いツールだろうと思っています。

自己啓発ビジネス

自己啓発ビジネスは、情報ビジネスの一種であり、識字率がほぼ100%で、社会が成熟していて、経済の先行きが不透明な日本では、競争は益々厳しくなるにせよ、一定数の需要が期待できる市場なのは疑いがありません。

書籍から他のメディアへとコンテンツが提供される媒体は徐々に変わっていったとしても、不安感の大きい人達に知恵を授けたり、感性の強い人達の自尊心をくすぐったりするビジネスニーズは消えることはないでしょう。

供給側の参入障壁が低く、供給過剰で競合は激しくなる一方なので、好循環に乗れば、提供される商品の質やコストはどんどん改善すると思います。利用者側の目も肥えてくるので、仕掛ける側のマーケティングはどんどん巧妙になっていきます。ユーザーとしては、好意的に捉えて一層の進化を期待したいですね。




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