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第35回出雲全日本大学選抜駅伝競走 観戦記

2023/10/9(月)に行われた第35回出雲全日本大学選抜駅伝競走(6区間 45.1㎞ ”出雲駅伝”)をテレビ観戦したので、レビューします。


今年もやって来た開幕戦

出雲駅伝は、2023‐2024年の大学駅伝シーズンの開幕戦です。私の駅伝観戦歴も43年目を迎えました。毎年、今日から箱根駅伝の終わる1月3日までは、駅伝観戦モードに入ります。

今季は、昨季三冠を達成した駒澤大学が、引き続き強力な戦力を擁し、頭一つ抜けた存在と考えられていますが、ライバル校も着実に戦力強化を図っており、今年も熱戦が期待できそうです。開幕戦となる出雲は、全六区間45.1㎞と距離が短く、1つのミスが命取りとなるレースなので、番狂わせが起こる可能性も大いにあり得ます。

優勝候補本命、二年連続三冠を目指す駒澤大学は、ベストメンバーを組んできました。直前の調整レースで好記録を連発し、チームの好調が伝えられている青山学院大学、ロードに強い三本柱が強力な國學院大学、トラックシーズンで好タイムを連発していた創価大学の前評判も上々です。スーパールーキーの吉岡大翔選手が加入した順天堂大学、昨季躍進し名門復活途上にある中央大学も、大砲の三浦龍司選手、吉居大和選手の欠場が決まったものの、実績のある選手を揃え、強力なオーダーを組んできました。

近年の学生長距離ランナーのトラックのスピード向上は目覚ましいものがあり、5000m13分20秒台、10000m27分台の自己ベストタイムを持つ選手が多数エントリーしています。

第1区(8.0㎞)出雲大社正面鳥居前 ~ 出雲市役所・JAしまね前

出雲大社前の出発地点を、4年ぶり参加のアイビーリーグ選抜を加えた21チームがスタートしていきました。

豪華メンバーが揃った中、前半は、アイビーリーグ選抜のミルナー選手がハイペースで引っ張り、そこに有力チームが食らいつく展開となりました。強い向かい風に悩まされ、次々と振り落とされて行く中、駒澤大学のエース格、篠原倖太朗選手が冷静な走りで、タスキを外したあとのラストスパートで後続を引き離し、首位で中継しました。優勝を狙う駒澤大学の盤石のスタートとなりました。

2位の8秒差でアイビーリーグ選抜、3位の21秒差で國學院大學と続き、以下早稲田大学、創価大学、東洋大学、青山学院大学、と関東の大学が続きました。期待の順天堂大学・吉岡大翔選手は11位と出遅れ、ほろ苦い大学駅伝デビュー戦となりました。中央大学も期待の浦田優斗選手が13位に沈み、早くも黄信号が灯りました。

区間賞 22’45” 篠原倖太朗(駒澤大学)

第2区(5.8㎞)出雲市役所・JAしまね前 ~ ゆめタウン斐川前

最短区間ですが、激しい順位変動が起こる重要区間です。先頭でタスキを受けた駒澤大学の佐藤圭汰選手は、杭州アジア大会5000mを出走したばかりの疲れを感じさせない力強い走りで、順調に後続を引き離していきます。向かい風の影響もあって、昨年自身がマークした区間記録には40秒近く遅れたものの、区間賞を獲得する貫禄の走りで2位との差を39秒に広げて、3区に中継しました。後方では、激しく順位が変動したものの、三大駅伝初登場の青山学院大学・黒田朝日選手が好走し、2位に進出してきました。

3位はエース格の山口智規選手が好走した早稲田大学が粘り、4位には國學院大學、5位に創価大学が続きます。優勝候補の順天堂大学、中央大学は、11位、12位に低迷し、浮上できません。

区間賞 16’08” 佐藤圭汰(駒澤大学)・黒田朝日(青山学院大学)

第3区(8.5㎞)ゆめタウン斐川前 ~JAラピタひらた店前


3区は前半の勝負所となるエース区間です。39秒差の大量リードを築いた駒澤大学は、ルーキーで今年の箱根の山登りを好走した山川拓真選手が力強い走りで先頭をひた走ります。4区への中継では、2位に上がった創価大学に57秒差をつけ、盤石の展開となってきました。

創価大学の留学生、リーキ・カミナ選手、城西大学の留学生、ヴィクター・キムタイ選手が実力を発揮し、それぞれ5→2位、7→3位に進出してきました。4位は、青山学院大学。エース格の佐藤一世選手が今一つの走りで、順位を2つ落としました。5位は國學院大學の主将、伊地知賢造選手、6位は、早稲田大学の10000m27分台ランナーの石塚陽士選手です。

区間賞 24’06” ヴィクター・キムタイ(城西大学)

第4区(6.2㎞)JAラピタひらた店前 ~鳶巣コミュニティセンター前


首位を走る駒澤大学は、ここまで理想通りの展開。この区間でも地元の出雲工業出身、伊藤蒼唯選手が区間3位で手堅くまとめ、首位をがっちりキープしました。2位は、メンバー唯一の四年生、山森龍暁選手が好走した創価大学、3位には、青山学院大学の山内健登選手が城西大学を秒差抑えました。4位は、城西大学、5位は國學院大學、6位は早稲田大学と続きます。

区間賞 17’35” 山森龍暁(創価大学)・山内健登(青山学院大学)

第5区(6.4㎞)鳶巣コミュニティセンター前~島根ワイナリー前

後半区間に入っても、流れは変わりません。首位を走る駒澤大学・安原太陽選手は、昨年も区間賞を獲得したアップダウンのあるこの区間で、安定した力を発揮しました。後半ペースダウンしたため区間賞こそ、創価大学・吉田響選手に譲ったものの、39秒差でアンカーにタスキを繋ぎました。2位は創価大学が死守し、3位には城西大学が桜井優我選手が青山学院大学をかわして進出し、4位青山学院大学、5位國學院大學、6位早稲田大学と続きます。

後方では、中央大学が溜池一太選手が区間3位の力走でようやく9位まで挽回してきました。

区間賞 17’45” 吉田響(創価大学)

第6区(10.2㎞)島根ワイナリー前~出雲ドーム前


駒澤大学は、今年度の主将で学生長距離界のトップランナーの鈴木芽吹選手を二年連続アンカーに起用していました。鈴木選手は自信に満ち溢れた堂々たる走りで、後続を全く寄せ付けず、テープを切りました。昨年更新した大会記録を上回る、初の2時間7分台の大会新記録を樹立しました。

2位は、創価大学の安定感抜群の吉田凌選手が着実に走る切った創価大学、3位は、今年の箱根駅伝5区で区間新記録をマークし、「山の妖精」の異名を持つ山本唯翔選手が力走した城西大学が滑り込みました。ロードに強い國學院大學のエース格・平林清澄選手は力走したものの、4位まで上がるのが精一杯で、目標の表彰台を逃しました。青山学院大学は、これまで力がありながら、三大駅伝の出場がなかった期待の鶴川正也選手が順位を落とし、5位となりました。

区間賞 29分00秒 鈴木芽吹(駒澤大学)

最終結果

優勝 駒澤大 2時間07分51秒(大会新記録)
2位 創価大 2時間09分34秒
3位 城西大 2時間10分35秒
4位 國學院大 2時間11分07秒
5位 青山学院大 2時間11分28秒
6位 早稲田大 2時間11分36秒

勝手に総評

レースは、史上初の2年連続三冠を目指す優勝候補の駒澤大学が、1区で区間賞の篠原選手が首位に立つと、その後は一度もトップを譲らず、大会新記録で圧勝しました。経験豊富な実力者を並べる隙の無い布陣で、全く危なげのない横綱相撲でした。名将・大八木総監督からチームを引き継いだ藤田新監督の初陣を飾りました。

狙い通り出雲を制した駒澤大学の、三冠獲得への視界は良好です。今季も「打倒、駒澤大学」が各校の目標になりそうです。

2位の創価大学、3位の城西大学は、今季のトラックシーズンで躍進した期待の選手達が順当に力を発揮し、自校の史上最高順位を更新しました。ともに、1、2区を好位置で滑り出すと、3区のエース区間で力のある外国人留学生が快走して上位に進出すると、創価大学は4区、5区で連続区間賞を獲得してレースを盛り上げました。3位の城西大学もエースを起用したアンカーが地力を発揮し、表彰台をもぎ取りました。

逆に前評判の高かった、國學院大學、青山学院大学、早稲田大学は、収穫もあったものの、課題も色濃く残るレースとなりました。目標の表彰台を逃した國學院大學は、3区、4区、青山学院大学は、5区、6区、早稲田大学は、主力を並べた1~3区が物足りない内容だったのではないでしょうか

優勝候補にも挙がっていた中央大学、順天堂大学は、1区で出遅れたことで後方からの苦しいレースを強いられました。一部の区間で好走はあったもののやや期待外れの7位、10位に終わりました。チームの看板選手である、吉居大和選手、三浦龍司選手の欠場が響き、爆走が期待されていた期待の吉居駿恭選手(3区)、吉岡大将選手(1区)が不発に終わったことも誤算でした。

今年の大学駅伝は、「打倒、駒澤」がテーマになりそうです。実力伯仲の中、1区の出遅れが致命傷になることを証明した格好です。区間数が増え、区間距離も延びる全日本、箱根では、今回出場を回避した有力選手達の動向や、秘密兵器となる新戦力の台頭も気になるところです。

おまけ

駅伝観戦歴43年のベテランである私は、時々、中長距離、マラソン、駅伝の観戦記を書いています。過去分などは、以下のマガジンからどうぞ。

過去の観戦記


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