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名言が与えてくれるもの14:死ぬ気でやれよ、死なないから

誰にも心に響いたことばや、心の奥に抱き続けておきたい大切なことばがあると思います。第14回は『死ぬ気でやれよ、死なないから』です。

嘘と妥協を許さない熱いことば

このことばは、杉村太郎氏(1963/11/10-2011/8/20)のものです 

杉村氏は、慶応義塾大学の同窓生の伊藤洋介氏とSHINE'Sを結成し、サラリーマンとの二足の草鞋で音楽活動もしていました。最大のヒット曲である『私の彼はサラリーマン』のプロデューサーは秋元康氏です。

1980年代後半の日本を包んでいたバブル経済の絶頂期を象徴する曲の一つだろうと思います。当時を知らない平成生まれの方々の中には、この曲の素っ頓狂な空気感に強烈な違和感を感じるかもしれません。

杉村氏は、サラリーマンを辞めた後は実業家に転じて精力的に活躍され、時折メディアでも活動を取り上げられていました。パワフルで社会的影響力もある人でしたが、2011年に癌により47歳の若さで早逝されています。

英語勉強法の先輩として

私の一番大きい杉村氏体験は『TOEIC900点・TOEFL100点への王道』という著書との出会いです。杉村氏が、ハーバード大学ケネディ行政大学院への留学を目指して英語を勉強した際の体験を、本にまとめたものです。

私は2001年にアメリカへの社内留学が決まって、英語力向上が急務だったので、この本に書かれていた杉村氏の英語勉強法を採り入れました。留学後も自分の思い描く英語力がなかなか身に付かなかったので、伸びが停滞して挫けそうな時は何度も読み返して喝を入れてもらっていました。

「英語力向上の肝は英単語力=語彙力」という私の持論は、杉村氏の考えに強く影響を受けたものです。英語圏で生活するために重要な能力は、聴解力(Listening Comprehension)で、 その基礎になるのが語彙力です。

そもそも自分が知らないことばや理解していないことばが大量にあっては、英語を聴き取れたとしても、内容を理解することはできません。もしも、英語の知識は人並みにはあるのに、運用能力がなかなか高まらないと悩んでいる場合は、知っている/使える英単語の蓄積量が絶対的に不足していることを疑った方がいいと思います。

頭はクールで、心はホットで、ちょっとゲス

頭はクールで、心はホットで、ちょっとゲス……

これが、私が杉村氏に対して抱いていた印象です。御本人と面識はなかったので、あくまでも著書や雑誌のインタビュー記事から抱く印象です。

周囲に自然に人を集めてしまう魅力を持った人だったのだろうと推測しています。好奇心が旺盛で桁外れの努力家、確実に結果を出せるだけの腕力と行動力もある。先行きが不透明な令和の時代こそ、時代の空気を面白がって、果敢に生き抜いていきそうな雰囲気を漂わせていた人です。世間から必要とされる人材だったと思うので、亡くなってしまったのは本当に残念です。

杉村氏から学んだ教えは、「ガムシャラにやれ」です。効率を重視しながら、質も量も二兎を追え、トライ&エラーを繰り返し、何度も見直せ、というメッセージでした。本気でやれば、絶対やれる、というマッチョな信念が根底にあったのだと思います。

この本の中には、「外国の美女相手に、Here's looking at you, kid.(君の瞳に乾杯! 映画『カサブランカ』の名言)を決めてみよう」みたいなゲスいこともさらっと挿入されていて、当時の私にササりました。

今この本が手元にないので、『死ぬ気でやれよ、死なないから』という名言がこの本でずばり書かれていたものだったかどうかは確認できません。ただ本書からは、夢を叶えたい…… ひとかどの人物になりたい…… 本気でそう思っているのならば、死ぬ気でやれ! 最後は意志の強さの差だ! そんなメッセージが、ひしひしと伝わってきました。そして、私はそのアプローチは(前提条件付きで)正しい!と信じてきました。

字義通りには解釈しないで!

『死ぬ気でやれよ、死なないから』(死なねぇから、としている説もある)を、字義通り受け取れば、現代日本では、パワハラ・ワードと言われても仕方がありません。

今回ネットで調べてみると、
● 上司からこのことばを浴びせられてドン引きした、
● 死ぬ気でやったら本当に死ぬよ、
● 既に頑張っている人を更に追い込む危険なワード、
というようにネガティブに捉えて、このことばを引用している例も少なくありません。ことばの響きだけが表面的に切り取られて、独り歩きしているようで、悲しく感じました。

確かにそのように解釈はできます。ですが、このことばを吐いた杉村氏の思いや本質までは歪めないで欲しい、間違った形で伝わらないで欲しい、と強く願っています。

このことばは、本気で何かを取りに行きたい人に向けたエールであって、信頼関係のない他人に命令したり、強要したりする目的で使用すべきことばではありません。

このことばに出会って影響された一人として、このことばから貰える大切なもの、逃げられない真実を支持したいと思います。どう生きるかは「心構えが全て Attitude is everything.」だと思うのです。

ダラける、休む、怠ける、といった行為であっても、覚悟を決めてやっているのなら、それはそれで構わないと思います。しかしながら、叶えたい目標や壮大な夢に立ち向かうのであらば、死ぬ気でやる覚悟と実践し続けたという経験を避けては通れないと思います。

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