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『孤独のチカラ』を読む

本日の読書感想文は、齊藤孝『孤独のチカラ』です。

第一章 失われた十年<孤独と私>

明治大学教授で、テレビ番組のコメンテーターを務めたり、数多くの著作を出版されたりしている齋藤先生に、暗黒の十年、失われた十年と呼ぶ心の闇を抱えた、屈折した時代があったとは全く想像できませんでした。見た目も爽やかで、物腰の柔らかそうな印象の人なので、これまで順風満帆な人生を歩んできたのだろうと勝手に思っていました。このような苦節の時代があったのは意外でした。

第二章 <単独者>として生きる

群れて成功した人はおらず、<単独者>として生きる覚悟を持つべきだ、と断言されています。

自らに期待する力、これを私は自期力と呼んでいるが、若いときほど、『自分はこのまま終わる人間ではない』『他のやつらとは違うんだ』という強い思いがあったりする。私から見ても生意気そうなのだから、クラスメイトなど同世代の人間から見れば、プライド高くて鼻持ちならないタイプに映るだろう。(P33)

主観的評価と世間の評価とのギャップに悩んだ孤独の時期に、先生は「結果を出せ」という言葉を励みに努力を続けたと言います。<単独者>として生きる覚悟が、自分を鍛えるモチベーションになり、人間的に強くする、という考えを披露されています。

第三章 孤独の技法

私は仕事というものは基本的にポジションでやるものだと思っている。仕事を能力でやるもの、才能でやるものと思い込んでいる人は実に多い。だが、たとえば映画やテレビのプロデューサー、広告のプランナーなど憧れの業種であっても、ポジションさえ与えられれば大概の人がこなすはずだ。絶対的な才能がある人も中にはいる。だが、役割を得られれば徐々に経験値は上がり、誰でもそこそこできるようになる。難しいのはそのポジションをつかむまでなのだ。(P54)

この考えには完全に同意します。荷が重いのではないかというポジションに抜擢されて、当初は不安視されていた人が、ぐんぐん能力を発揮するケースはよくあります。逆に優秀と思われていた人が、なかなかいいポジションを与えられず、いつのまにか埋もれてしまうケースもあります。

問題はポジションを得たことで安住してしまい、その後伸びない人がいることです。これは避ける為、自分を検証する方法として
1.内観する
2.教養という反射鏡を持つ
3.<日記>を書く
を提案されます。また、孤独を乗り越えるための手法として、自分も実践されたという
1.手先のことに集中する
2.翻訳、英語本にトライ
3.マニアな読書
を推奨されています。その後古今東西の興味深い例が出てきて一気に読了できます。この章は、本書のメインイベントでしょう。

第四章 ひとりぼっちの世界<孤独の実践者たち>

孤独についての名作文学が紹介されていきます。文学は孤独と相性のいい題材なので、どれも興味深いです。私は個人的にはスナフキンと中原中也を扱った部分が興味深かったです。

第五章 孤独のチカラ

いよいよ哲学が引用されてきます。他にも死・愛・楽器・宗教などのキーワードを使って、縦横無尽に孤独論を展開していきます。

私は今でこそ仕事を最優先にしているが、人生の深い味わいのためには、感情の世界の方がずっと重要だと考えている。感情の世界があって初めて、生きているということが成り立つ。単にポジティブに仕事をするという<生産>にばかり向かうのが人生のすべてではない。(P160)
人間的に成長しようとすれば、精神は少なくとも一度、心地いいある地点からの断絶を引き受けなくてはならない。(P171)

分量的にそれ程の大作ではないものの、最後まで読み通すのがなかなか辛かった一冊です。私自身は孤独に憧れつつも、まだ救い難い孤独感と真剣に対峙していない気がしています。

今の弱い自分では、絶望的な孤独に長期間耐えられないような気がします。それでも、逃げずに自分を掘っていく作業が必要だと痛感します。

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