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『二〇三〇年 日本』を読む

本日は、産経新聞社会部『二〇三〇年 日本』の読書感想文です。

本書は2010年12月に発売されたもので、【「不安」の論点】というサブタイトルが付いています。2009年3月~2010年3月にかけて産経新聞に掲載された記事がベースになっています。取材はそれ以前に行われていると考えられますので、約10年前の日本から、20年後に想定される日本社会を描く、という構成になっています。

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本書発行以降の、2011年3月11日に起こる東日本大震災、2013年9月8日に開催が決定する東京オリンピック/パラリンピック、スマホの大々的な普及、といった出来事は想定されていない状態での20年後の未来予想図です。

目次 あなたの20年後を想像してください
第一章 働く場所はありますか ➡ 派遣労働者
第二章 ふるさとはありますか ➡ 地方の過疎化、一次産業の消滅
第三章 親を超えられますか ➡ 階層の伝承、固定化
第四章 都市はもちますか ➡ 個人の孤立化
第五章 日本はありますか ➡ 外国人居住者の増加

2008~2009年頃は、リーマンショックを契機とする世界大不況の真っ只中でした。先行きには深い暗雲が立ち込め、意気消沈していた時期です。結果的に、日本経済が完全崩壊してしまうようなハードランディングは避けられた形で終息しましたが、今に至るまで確実にダメージは残っています。

本書の各章で取り上げられている日本の課題の多くは、2030年が10年後に迫った現在でも燻り続けています。当時浮上していた「不安」は解消されないまま、ずっと持ち越されてきています。世襲化は政治家、スポーツ界、芸能界で確実に進んでいるし、収入の低い家庭に生まれてしまうと社会の中でなかなか這い上がれない傾向は当時よりも一層強くなってきています。

当時に限らず、【危機的状態】を煽る風潮はどの時代でも常に存在したし、「不安」は様々な形を変えて、常に社会の中に残り続けていきます。たとえ一つの「不安」が対処・解消されても、副作用として新たな「不安」が現れてくるのが世の常です。

「不安」の正体を認識しておくことは大切です。自分が変えられないものを嘆いても仕方がありません。この国に限らず、生き続けるかぎりは、あらゆる「不安」とうまく付き合っていくしかないと感じました。

第四章には「ホリエモンの賃貸論」という項があり、当時六本木ヒルズ・レジデンスに在住だったホリエモンこと堀江貴文氏がインタビューに応じています。当時は保釈中で、居住場所を自由に動かせなかったという事情もあったようですが、住む理由として「僕の場合、完全にセキュリティーと快適性に尽きる」と語っています。世界中を転々として、「家自体がいらない」という発想の人なので、タイトルずれてないか?、と感じました。

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