不浄と煩悩を焼き尽くす、仏法の守護神「迦楼羅(カルラ)」 - 『神々の意思を伝える動物たち 〜神使・眷属の世界(第五十一回)』
「神使」「眷属」とは、神の意思(神意)を人々に伝える存在であり、本殿に恭しく祀られるご祭神に成り代わって、直接的に崇敬者、参拝者とコミュニケーションを取り、守護する存在。
またの名を「使わしめ」ともいいます。
『神々の意思を伝える動物たち 〜神使・眷属の世界』では、神の使いとしての動物だけでなく、神社仏閣に深い関わりのある動物や、架空の生物までをご紹介します。
動物を通して、神社仏閣の新たなる魅力に気付き、参拝時の楽しみとしていただけたら幸いです。
眷属「迦楼羅(カルラ)」
今回は、前回の『神と人を媒介する、烏天狗の使い「鵄(トビ)」』でもご紹介をした「迦楼羅(カルラ)」について、もう少し詳しくお伝えしてまいりましょう。
不動明王と迦楼羅
不動明王の背中には炎(光背)が燃え盛っています。この炎のことを「迦楼羅炎(かるらえん)」といいます。
これは、異教の神々が仏教に取り込まれる中において、仏法を守護する護法善神となった「八部衆(天龍八部衆ともいう)」の一尊である「迦楼羅」の吐く炎を指します。
この炎は、不浄なものや、煩悩を焼き尽くし、清める炎であるとされています。
十二支それぞれに、守り本尊があることをご存知の方も多いと思います。
酉年生まれの守り本尊が不動明王であるのは、この迦楼羅との深い関わりがあるからです。
ガルーダと迦楼羅
前回もご紹介したように、迦楼羅はインド神話に登場する神鳥「ガルーダ」が前身であり、金翅鳥(こんじちょう)、食吐悲苦鳥(じきとひくちょう)などと漢訳されます。
ガルーダは、太陽や炎、また毒蛇を食べる猛禽類を神格化した神であるといわれています。
インド神話では、蛇族(ナーガ)と敵対し、退治する聖なる鳥として崇められました。
ガルーダが毒蛇を食べるという言い伝えは、以下の神話が基となっています。
ガルーダは、姉妹であるカドゥルーとナーガ族に奴隷にされた母ヴィナターを救うために、天界にある不死の霊薬「アムリタ」を手に入れました。
母のために神々を打ち倒して霊薬を手に入れた、その勇気と力に感動したヴィシュヌはガルーダの願いを叶えると約束をします。
そこへ神々の帝王「インドラ」が現れ、ヴァジュラ(金剛杵)を手にして襲いかかって来ました。
しかし、これを返り討ちにしたガルーダの強さに感服したインドラは、不死の体と蛇族を食料とする力を与えられたのでした。
迦楼羅は、護法善神の「那羅延天(ならえんてん)」の乗り物としても知られています。
これは那羅延天の前身であるヒンドゥー教の神「ヴィシュヌ神」が、ガルーダを乗り物としていたことに由来します。
インドの神鳥「ガルーダ」を前身とした迦楼羅は、鳥頭人身として表されます。
雲を呼び、雨を降らせる煩悩の象徴、悪龍(毒蛇のこと)を常食とする迦楼羅は、まるで鳳凰のように美しく、翼を広げると336万里(1300万km!!)にも及び、口からは火炎を吐く霊鳥として信仰されてきました。
密教では、この迦楼羅を本尊として降魔、病気平癒、家内安全、防蛇毒、祈雨、止風雨を祈願する「迦楼羅法」と呼ばれる修法が行われていました。
三十三間堂の迦楼羅王像は、笛を吹いていることから音楽の神であるされています。
八部衆では他に、緊那羅(歌)、摩睺羅伽(琵琶・笛・太鼓など)、乾闥婆(香気と音楽)も音楽神です。
迦楼羅と所縁ある神社仏閣
参考文献
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