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書評『ケアする人も楽になる マインドフルネス&スキーマ療法 BOOK1&2』


想定読者層
・黒い文字ばかりの本が苦手な人
・難しい言葉づかいが苦手な人
・イラストや図解がカラーで入っている本が好きな人
・はじめてスキーマ療法に触れる人
・スキーマ療法についてざっくりと知りたい人
・マインドフルネスに興味がある人
・マインドフルネスのワークをたくさん知りたい人

書籍情報


ケアする人も楽になる マインドフルネス&スキーマ療法 BOOK1+BOOK2

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 https://www.amazon.co.jp/dp/B084ZF2PR2/ref=cm_sw_r_cp_api_i_frG1Eb88R4JMN

著:伊藤絵美 価格:4,400円
BOOK1:190ページ BOOK2:200ページ

全体評価

オススメ度 ★★★☆☆
読みやすさ ★★★★★
専門性   ★★☆☆☆

日本のスキーマ療法の第一人者である伊藤絵美が入門向けに書いたもの。
スキーマ療法について知りたい人は伊藤絵美の『スキーマ療法入門』が最適だが、文字ばかりでページ数も多く、本を読みなれていない人には少し難しい。
長い文章を読むのが苦手な人は『ケアする人も楽になる』のシリーズをオススメする。

内容としては専門性は低いが、入門としてはわかりやすく、とにかくスキーマ療法を知りたい人に向いている。
1センチ程度の薄い本2冊組なのでそれほど時間をかけずに読むことができる。

本書は、「読み物」ではなく「実用書」であると著者が述べているが、実際はこれだけを読んでスキーマ療法に取り組むことは不可能であるので注意してほしい。
あくまでも、「スキーマ療法がどんなことをするのか、部分的に具体的に知ることができる「やろうと思えばワークもある」けれども「完遂するにはまったく不十分」というふうに思って読んでもらいたい。

追記:別の本の中で、『ケアする人も楽になる』のシリーズは治療者向けであると著者が述べています。もともとは一般人向けの本ではないということにご注意下さい。

本の目次と読書ガイドBOOK1


はじめに 私はなぜこの本を書いたのか
序章
認知行動療法の基礎知識
ストレスとは
ストレスコーピングとは
認知行動療法とは一基本モデルを理解しよう
なんで「認知行動療法」 と呼ぶの?

「はじめに」を読み飛ばす人がいるかもしれませんが、この本は「はじめに」から大切なことが書いてあるので、読み飛ばさないようにしましょう。

「はじめに」では、著者がなぜ「マインドフルネス」と「スキーマ療法」に注目するのかの説明と超超超ざっくりとしたマインドフルネスとスキーマ療法の説明があります。
また、この本の使い方や読み方も紹介されています。

「序章」では、超超超ざっくりと「認知行動療法」について説明しています。
ただ、ざっくりと言っても非常にポイントを押さえているので、とてもわかりやすいです。
認知行動療法について詳しい人は読まなくてよいですが、かじった程度の人は復習もかねて読んでおくといいと思います。もちろん、認知行動療法をよく知らない人は必読です。

第1章 マインドフルネス超入門
受け止め、味わい、手放す
セルフモニタリングとは
マインドフルネスとは

必読。

マインドフルネスがセルフモニタリングとセットで行われるものであることを説明しています。

セルフモニタリングは認知行動療法の主なワークの一つですが、セルフモニタリングができなければマインドフルネスは不可能であると述べるほど、セルフモニタリングが大切であると述べています。

ここでは、セルフモニタリングで使われる言葉の説明や簡易的なセルフモニタリングのやり方が簡単な言葉で具体的に説明されています。

マインドフルネス関して、説明自体はかなりおおざっぱです。
ここでは、マインドフルネスをセルフモニタリングと組み合わせるとどのようになるのかについて具体的に説明しています。

第2章 スキーマ療法超入門
スキーマとは
スキーマ療法とは
オリジナルモデルのスキーマ療法
「早期不適応的スキーマ」 の理解
モードモデルのスキーマ療法
ー「スキーマモード」 という新たなアプローチ


必読。

ここでは、スキーマ療法と認知行動療法の違いを説明しながらスキーマ療法がどのような療法であるかについて説明します。

また、スキーマ療法に取り組むにあたって必要な知識である「早期不適応的スキーマ」「中核的感情欲求」「スキーマモード」について説明があります。
スキーマ療法の本の中で最も簡単な言葉で、モレもなく、具体的に説明されていると思います。
ただ、簡単な言葉で説明しようとしているので、他のスキーマ療法の本とは違う言葉で説明されているので、他の本とあわせて読むときには注意が必要です。
他の本を読んでみるときは、どの言葉がどの言葉と同じなのかわかるようにしておきましょう。

第3章 マミコさん、認知行動療法を開始する
3-1 マミコさんとの出会い
3-2 「応急処置」でとにかくしのぐ
3-3 セルフモニタリングの練習とその行き詰まり

必読だが、ところどころ飛ばしてもいい。

事例です。
事例を読むのに必要な、登場人物についての「紹介」と登場人物が抱える「危険な問題への対処」「セルフモニタリングができない理由」について紹介されています。

危険な問題の具体例です。
①カウンセリングに予約どおりに来られない
②カウンセラーへの不信感
③慢性的な希死念慮と自殺企図
④自傷行為(レッグカット、過剰飲酒、過食嘔吐)
⑤見知らぬ人との喧嘩

最後に、セルフモニタリングをすると、怖いものや不安を表現したり思い出したりしてしまうため、セルフモニタリングに取り組むことができなかった、ということを読者にもありえそうな具体例を混ぜながら説明しています。

第4章 マミコさん、マインドフルネスの
ワークに取り組む
4-1 マインドフルネスの導入
4-2 「体験系」のワークの実践
4-3 「思考/感情系」のワークの実践
4-4 その他のワーク 他者にサポートを求める
4-5 「それを私はやりたかった!」
ースキーマ療法の紹介

セルフモニタリングをするために、まずはマインドフルネスを練習するという流れになります。ここでは具体的にマインドフルネスのワークがいくつか紹介されます。

①体験系ワーク
・レーズンエクササイズ
・食事のワーク
・コーヒーのワーク
・お酒のワーク
・嫌いな食べ物のワーク
・触る/抱きしめるワーク
・お風呂のワーク

②思考/感情系ワーク
・小さな感情に名前を付けるワーク
→感情を擬人化して、子どもや大人の名前を付ける
・うんこのワーク
→繰り返し考えてしまうよくないぐるぐる思考をやめるワーク

マインドフルネスのワークの紹介の後は、ふつうの認知行動療法の「セルフモニタリング」の事例が物語に沿って紹介されます。
また、危険な問題への対処とマインドフルネスとセルフモニタリング以外に、身の回りをサポーターを増やすというワークも紹介されます。

最後に、BOOK2への導入として、スキーマ療法の簡単な説明とスキーマ療法に取り組むときの重要な知識として「治療的再養育法」について説明があります。

ただ、この部分のスキーマ療法の説明はスキーマ療法の全体を説明しているわけではなく、著者が好んでいる部分や著者独自の理解がまじった説明になっています。
この説明を読むとスキーマ療法がとてもハードルの高いものに感じると思いますが、実際には著者が言うほどハードルは高くないので、あまり恐れないようにしてください。
具体的にどんな説明が著者独特のものなのかについては有料になりますが、別の記事で紹介します。


本の目次と読書ガイドBOOK2

第1章 スキーマ療法 その1
自らのスキーマとモードを理解する
1-1 「安全なイメージ」「安全な儀式」から始める
1-2 ヒアリングー過去の自分に会いに行く
1-3 早期不適応的スキーマのマップを作る
1-4 スキーママップにもとづくモニタリングとマインドフルネス
1-5 スキーマモードへの気づきとマインドフルネス
1-6 「治療的再養育法」を通じてのセラピストとの関わり

スキーマ療法のオリジナルモデルというものを中心に事例の物語を通して少しずつスキーマ療法の基本的な進め方やワークやセルフモニタリングのやり方などが紹介されています。

ヒアリング オリジナルアプローチをする人は必読
→スキーマ療法のオリジナルモデルに必須の一番初めの作業です。人生史を事細かに聞き出します。

満たされていない中核的感情欲求の確認 必読
→早期不適応的スキーマの5つの領域に合わせて作られた中核的感情欲求の一覧をみながら、どんな中核的感情欲求が満たされていないか確認します。

早期不適応的スキーマ 必読
→早期不適応的スキーマを教科書的に説明しています。解説と特徴が書かれていて、とても具体的でわかりやすいです。けれども、わかりやすくするために言葉遣いが他のスキーマ療法の本と違うので注意してください。

スキーマを含むセルフモニタリングの具体例 必読
→ふつうの認知行動療法のセルフモニタリングにどのようにスキーマを組み込んでいくかを具体的にセルフモニタリングをいくつか事例として紹介して説明しています。

スキーマモード 必読
→おおざっぱだけど具体的に説明されています。だけど、どういうモードがどういう特徴を持つのかはあまり説明されていません。大きく以下の4つのモードに分けて、その中に具体的に「個人的に名前を付けたモード」をいくつも分類して紹介しているといった感じです。
①傷ついた子どもモード
②傷つける大人モード
③いただけない対処モード
④ヘルシーモード

モードに関しては、スキーマのときほど詳しく説明されていません。
どんなときにどんなモードになるのか、自分の中にどんなモードがあるのかをどうやってみつけるのか、みたいな方法が書かれないまま、物語に併せて登場人物の持っているモードだけが紹介されます。

第2章 スキーマ療法 その2
ヘルシーなスキーマとモードを手に入れる
2-1 認知的ワークと対話のワーク
ースキーマとの対話を通じて自分をいたわるヘルシーな認知を作る
2-2 さまざまなやり方でモードワークを実践する
2-3 ハッピースキーマとヘルシーモードを強めていく


ここでは、第1章で知った登場人物の持っているよくないスキーマやモードをよいスキーマやモードに変えていくための具体的なワークが物語に沿って紹介されていく。

椅子を使った対話のワーク
→解説と事例。

ハッピースキーマの書き出し

モードワーク(モードアプローチの一部)
→傷ついたこどもに対するモードワークの解説と事例。
 (椅子を使った対話のワークとイメージの書き換えワーク)
→傷つける大人に対するモードワークの解説と事例。
→いただけない対処モードに対するモードワークの簡単な解説。
 (物語の展開上、ワークをする必要がなかったということで事例がない)
→幸せなこどもに対するモードワークの簡単な説明。事例無し。
→ヘルシーな大人モードに対するモードワークの簡単な説明。事例無し。

この章ではあまりモードワークが重視されていないのが残念です。
スキーマ療法はモードワークこそ重要であると著者本人も別の著書で述べているのに、この本ではかなり省略されています。

「スキーマが変われば行動パターンもかわる」からだそうです。

スキーマを変えるのが大変だから、まずはモードに対処するというのがモードアプローチなので、著者のこの本でのスキーマ療法の解説はモードアプローチをほぼ無視した解説になっています。

スキーマ療法に取り組みたくてこの本を読んだ人は、他にも方法があって、実はもっと簡単な方法もある、けれど著者がその方法を紹介する本を書いていない、ということだけ注意してください。
(このnoteでも、そのうちモードアプローチについて詳しく説明していきます)

第3章マミコさんの新たな旅立ち
3-1 マミコさんの回復
3-2 新たな旅立ち
おわりに
より深く学ぶために

BOOK1からのまとめと物語をしめくくるストーリーが書かれています。


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