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児童書「きっときみに届くと信じて」

いじめる子、いじめられる子、その子たちの心のSOSを拾おうとするラジオDJのお話です。

ラジオネーム「りかちゃん」があるラジオに友達をいじめることを宣言します。一方、そんなメールが届いたラジオ局では、このいじめ問題についてどう取り上げようか議論がされていました。ラジオDJの佐奈はこのメールが「りかちゃん」からのSOSだと気付きますが、なにもできないまま、今度はラジオネーム「マリン」から、自殺予告のメールが届きます。
中学生の海、晴香、ラジオDJの佐奈の3人が、ラジオ番組を通して繋がっていきます。

現代の中学生に起こりうる、いじめ、友人への共依存、両親の離婚、親への不信感、教師への不信感、孤独感、子どもの貧困etc...この物語は児童書として取り扱われていますが、ただのいじめの話というだけでは収まらないさまざまな問題の側面が見え隠れしています。近くにいる大人が気付くべき、子どもたちのSOSを、このお話のなかでは、あるラジオのDJが気付き、なんとかしようとラジオを使って広く知ってもらおうとします。
だれか一人でも、自分のことを気にかけてくれていると分かった時の心強さは計りしれません。助けたいという純粋な気持ちが人を動かすこともあるし、一方で、他愛ない一言が簡単に人を傷つけてしまうこともあるのです。

いじめている人にも、いじめられている人にも、それを周りで見ている人にも、それぞれ思うところがあり、個人的事情もあり、歯がゆくも、辛くもあると思います。だれもがどの立場にもなりうる可能性があります。
どの立場も辛いでしょう。苦しいでしょう。その辛い、苦しいを、必ず分かってくれるひとがどこかにいると、思わせてくれるお話です。
そして大人も、このお話でシグナルをしっかり受け止めることの大切さを理解することができると思います。

重いテーマだと避けずに、児童書だと侮らずに、どうか手に取ってみてください。ひとりひとり、思うところがあるはずです。


きっと君に届くと信じて
吉冨 多美 著

2014/8/24 読了

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