プロフェッショナルであることに、資格は必要か。
少し前に、Yahoo!ニュースでこのような記事が出ていました。
一昨日、ブログで「公認心理師」試験合格のご報告をしたこともあり、こちらの記事について、「野良カウンセラーの端くれ」として思うところがあったので、今日はそれを書いてみたいと思います。
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まず、これは少し批判的な話になってしまって恐縮なのですが、様々な背景、想いを持ってカウンセラーとしてやっている方々を十把一絡げにして「『野良カウンセラー』が『跋扈している』」という極端なネガティブイメージを伴う言葉で説明していることについて、正直、私はあまり好きではないなと感じました。
もちろん、この記事にある通り、
なのは、その通りだと思います。
特別な資格が無くても名乗れてしまう「心理カウンセラー」だからこそ、向いている方も向いていない方も心理職として仕事をしている状況は実際あると思いますし、業務独占ではないカウンセラーは法規制が入らないため、様々なクオリティやスタンスのカウンセラーが濫立しているというのが現状だと思います。
(まりも〈Mary〉なんかは「玉石」の「石」どころか、ただの人間好きの変態なので、もはやカウンセラー業界における「路傍の石」と自負しておりますっ!笑)
また、「心理カウンセラー」になろうとされる方の中には、心について興味がある方が多いということも、その通りだと思います。特に、ご自分の人生経験の中で、痛みを知っているからこそ、その傷を癒やしたくて心理学を学び始め、それで自分自身が救われた経験から、困っている誰かのためにその学びを生かしたいと思う方がいるであろうことも想像がつく流れです。そして、その裏には少なからず、人を癒やすことで自分が救われたいという利己的な人間心理があることも、否定できないでしょう。
そう考えると、特に自分ならざる他者の心を扱う仕事なわけですから、知識や経験が不足していたり、カウンセラー自身が自己に対する客観的視点を持ち得ないまま、個人的な欲求だけで心理カウンセラーになろうとするのは望ましくないことというのは、確かにそうなのかもしれません。
なぜならば、医療との適切な連携や必要なリスク判断、マネジメントが出来ないカウンセラーのカウンセリングを受ければ、それはクライアントの損害につながる可能性が高いからです。場合によっては、リファー(他の専門家につなぐこと)が必要な場面もありますが、カウンセラーとして自分がクライアントを癒やす(ことで自分を癒やす)ことに固執してしまうと、その決断が難しく、かえってクライアントを危険な状況にしてしまうこともあり得ます。
しかし、だからといって「臨床心理士」や「公認心理師」といった資格を持っていない無資格の心理カウンセラーをまとめて「野良カウンセラー」と定義し、「有象無象」「跋扈している」という言葉で批判することは、私はやはり少し違うのではないかなと思います。
無資格でもクライアントさんのために、誠一杯向き合って支援し、日々学びを深めているカウンセラーの方はいらっしゃいますし、逆に、有資格者の方であっても、
と思っている方は、きっといらっしゃるでしょう。
つまり、この「カウンセリングの質」という問題は、公的資格の有無だけで判断できる部分ではないように、個人的には思うのです。
「教師」にだって不祥事を起こす人はいますし、「医師」だって診断ミスをしてしまうこともあるわけで。
そう考えると、「臨床心理士」や「公認心理師」であれば公的資格を持っているから安心であり、それ以外は危険だ、という風に読者に受け取られかねないような記事の書き方は、少々偏った説明のように思えます。
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確かに、有資格者の方の気持ちを考えてみると、納得がいかないという点も理解できます。
大学院まで出て、たくさんの時間とお金を掛けて勉強をする努力を重ねてこられた有資格者の方からすれば、無資格でほとんど勉強や実績を積まないで心理カウンセラーを名乗り、悩んでいるクライアントに対して高い金額を請求している(ように思われる)「野良カウンセラー」に対して、批判的な意見はあることでしょう。
公的資格というのは確かな社会的証明であり、「野良カウンセラー」の方が、資格がなく社会的信用も見えにくい分、実際に高いお金を払って受けてみたら必要な知識やスキルが足りていなかったということや、責任に欠ける対応を取られる危険性は当然あります。
その点、有資格者の方は、「心理カウンセラー」として必要なだけの勉強をしてきているということについては保証がされているわけですので、すでに基本的な信用がありますし、是非そういう方が今後どんどん活躍できる世の中になってほしいと、私も願っています。
しかし、同時にまた私個人としては、心の悩みが著しく増えている現代の日本社会においては、まずはカウンセリングが受けやすい世の中になるということが、大事ではないかとも思っています。そのためには「野良カウンセラー」であれ、有資格の「心理カウンセラー」であれ、クライアントが叩ける門戸は多くあった方が良いのではないでしょうか。
そもそも誰を選ぶかについてはクライアント自身に選択権があるわけで、その自由を保障するという意味でも、まずはいろんな選択肢があるということも一つの利点と感じます。
そして、カウンセリングにおいて最も大事なことは「クライアントの心身が楽になるかどうか」であり、クライアント本人にとって、そのカウンセラーとの出逢いが、自分の人生や世界の見方を変えうる「価値あるもの」であることが重要でしょう。
その点では、「野良カウンセラー」でも、有資格のカウンセラーでも、懸命かつ誠実に向き合ってくれるカウンセラーであれば、それぞれの良さを生かしてなにがしかの形でクライアントの力になり得るのではないかと、私は思います。
ただし、そういう「自分に合った良いカウンセラー」と出会うためには、クライアント側はご自分の「情報リテラシー」の力を高めておく必要があるでしょう。と、同時に、心理的に弱っている場合は、判断力が欠ける場合も多いので、身近な信頼できる人の意見を踏まえながら、ご自分で決めることが大事だと思います。
また、単純に「悩んでいてつらい」というレベルではなく、悩むことによって心身にこれまでにはなかった病的な症状や反応、明らかに精神的に異変を感じるような場合には、まずは速やかに医療機関ないしは、専門機関の有資格のカウンセラーに相談に行くことを選択するという判断が必要です。(「野良カウンセラー」でも力のある方でしたら、その辺りも相談に乗ってくれた上で必要な機関につなぐという判断をしてくれると思います。でも症状が重い場合には、まずは専門家につながる方が安心で確実です。)
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心理カウンセラーに限らず、自分のことをお願いする場合に、自分に合った方を探すことはとても大事ですよね。特にカウンセリングは人の心を扱うものなので、クライアント側も慎重に吟味・判断することが必要だと私は思います。
ちなみに、カウンセラーを選ぶときに注目した方が良いと私が考えるのは次のような点です。
・金額(自分が納得できる範囲か)
・専門性(カウンセラーが得意とする分野と自分の相談内容との合致)
・信頼性(カウンセラーとしての実績、評判など)
・人間性(カウンセリングポリシー、個人として発信している内容など)
これらを総合的に見て、ご自分が納得できるかどうかで判断しましょう。金額は安くても、相手の人間性の部分で疑問が残ると感じる場合は、正直あまりオススメは出来ないかなと思います。でも、それでもご自分が受けてみたいと思ったら、一度受けてみるのもありでしょう。
そして、もし可能であれば、一度モニター募集やキャンペーンで安くなっているときにお試しをされるのが良いと思います。また、判断に迷う場合や緊急性の高い場合は、まずは公的な機関が行っているものを利用するのが良いでしょう。
ちなみにこれは完全に余談であり個人的な見解ですが、相手が信頼出来る人かどうかを見るときに私が注目するポイントは「自分をコントロールしてこようとするかどうか」というところです。
「最終的な判断や決断は本人に任せる」というスタンスがない人だと、正直私はちょっと怪しいなと思ってしまうかも。苦笑
特にお金に関わるところで、そういう態度(こちらが消極的なのにゴリ押ししてくる、断ったらこちらを否定してくる 等)が見えたら、そのカウンセラーはやめておいた方がいいと思います。
なんでもそうですが、最終的にあなたの人生はあなたのものなので、ご自身の決定権を奪うような関わり方をしてくる相手は、カウンセラーに限らず注意が必要です。
また、慎重に判断しても、お互い人間であり個性も相性もあるので、うまくいかないこともありえます。腕利きで人気とされるカウンセラーの方でも、実際受けてみたら合わなかったということもあるでしょう。
(例えば、傾聴が得意なカウンセラーのセッションをアドバイスが欲しいクライアントが受けると、不満足な結果に終わる可能性が高いでしょうし、逆もまたしかりで、話を聴いて欲しいクライアントが、アドバイスが得意なカウンセラーのところへ言っても、やりとりがしっくりこないで終わってしまうことが多いと思います。)
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このように考えると、結局は、資格の有無に関わらず、「心理カウンセラー」という仕事に限らず、求められるのは、その人が『職業倫理』と『お客様に対する誠実さ』をどの程度意識出来ているか、という人間性に関わる部分であり、それこそが提供できるサービスの質の問題の根幹に関わるところなのだと私は思います。
どんなお仕事であっても、そこにこだわりを持てる人はきっとプロなのでしょうね☆^^
そして、記事の
という見解については、私も強く同意します。
私も人の心に触れる人間として、今後、この国のカウンセリング体制やカウンセリングの質が、さらに充実していってくれることを願ってやみません。
まだまだ微力で勉強不足ですが、「野良カウンセラーの端くれ」として、心理カウンセラーという仕事に、私なりの誇りと誠実さを持って、この世界に対して出来ることを少しずつやってまいりたいと思っております。
以上、長い文章を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この記事が、少しでもカウンセラーやカウンセリングに興味がある皆さまの一助となれば幸いです☆^^
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