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密は蜜のにおい

人との接触8割減、と言われている。わが家は幸いにして私も夫もフルリモートで勤務できており、4月中旬からは休校・休園で子どもも家にいるので、家族全体として、平日は8割どころか9割くらい、他人との接触機会は減っている。

自粛暮らしには慣れてきつつあるが、娘と息子には、少しだけ変化を感じてもいる。もともと子どもは抱っこが大好きだし、スキンシップを必要とする生きものだけれど、その度合いがなんというか、度を越してきてる。

例えばパパっ子な息子は夫の首にがっつり腕をまわし、両頬にチュウしたあと唇に吸い付くように濃厚なチュウ(ヂュヴ とかに近い)を長々として喜んでいるし、ママっ子な娘は一歩歩くごとに「ギュウしよう」ってニコニコしながら抱きついてくる。

誰かひとりが二階に歯磨きに向かうと全員慌てて階段をのぼり始め、誰かがトイレに行くと中に入れてもらえず悲しんだりしている。他にも座る場所は沢山あるのに何故か1人掛けのソファに3人乗っかっていたりする。

そんなこんなでわが家は人との接触8割減はかなり余力を持って達成しているものの、notソーシャルなディスタンスはかなり密で、やっぱり人は密接が必要な生きものなんだと思った。外で密れない分、家のなかで密を濃くしてバランス取ってるような。

韓国、ベトナム、中国、ニュージーランドだったか、コロナの対応がしっかりしていて、既に感染を抑え込むことに成功している国々では、安全な国同士での行き来が徐々に解除されつつあり、さらにはグリーン経済圏として、新たな安全地帯が出現する、みたいなニュースを読んで、羨ましいし、世界にとってもそれは希望で、頑張ってほしい、と同時に、絶対にそっちのイケてるグループにはもう入れないであろう日本の対応のバッドさに悲しさと怒りを改めて感じたり。

コロナが多少なりとも収束したところで、元の世界、元の社会には戻れないというのは色んな知識人が指摘してて私もその通りだと思うし、きっとみんなそんな予感を肌で感じている。これまで人類が快適で魅力的と信じて作り上げてきた都市は、三密の極みだったねってみんなが理解して、そして何より地球環境や生態系にずっと負荷をかけ続けてきた路線がぶった斬られることは、清々しくさえある。

これからはもっと、風や緑や水辺や露出した土や多様な生態系の価値が見直されて、一次産業が尊ばれる。無理な畜産は見直して、食肉は頻度を減らしたり、ちゃんと育ちにフォーカスした良いものを少量ずつ大切に食べるのが当たり前になって欲しい。満員電車は、もう誰も乗らなくていいと思うし。誰も無理して乗らなくなれば普通の電車で、それは素敵。

色々と、無理して三密してたことが解されて、人類の活動がスローダウンして、みんなが地球のCPUをちょっとずつ下げれば、逆にサクサク快適に、心地よい風を感じながら暮らすこともできるのかもしれない。

ものすごい雑だけど、そんなことを考えてた。

ボヤボヤ考えてるうちにも、娘とのギュウの間に石頭をねじ込んで息子はせっせと密度を高めている。そのつむじからは汗にまじってむわっとするような、蜜の匂いがする。



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