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吉本ばななを読みながら、椎名林檎を聴く#13

「飲食店ってすばらしい仕事である反面、人間の三大欲に関わるから因果なところがある商売だって、うちのおばあちゃんがよく言ってた。」(吉本ばなな 吹上奇譚第2話より)

吉本ばななの一節を読んだら、昨日キャリーとSOHOでイタリアンを食べながら、彼女のこの数ヶ月のドラマチックな恋愛の一部始終を聞いたことが思い出された。ロックダウン中に彼女の身に起きたことを、心理士の彼女の解説つきで詳細に聞き、お互いの次のプランや恋愛観についても色々話したのだった。彼女はとてもオープンマインドだから、最後別れを告げたあとのテクストのやりとりまで見せてくれて、どう思う?とまで聞いてきた。

人は、お店でこうやってご飯を食べながら、人生の酢いも甘いも含めた様々なことを、家族や友人や恋人と話し合う。もし人の想念みたいなものが目に見えたら、レストランなんてものすごく複雑な色をしているに違いない。

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上記の小説のおばあちゃんは、小説の中で、町の伝説的な大人気台湾料理店を営んでいたのだが、接客用の笑顔の裏に、”日々の深い内気な態度と思索”があり、それに守られて、おばあちゃんの娘は同じ仕事をしていても”生涯無邪気でいられた”。でも、”娘は生涯おばあちゃんの料理の味を超えることはなかった”し、”人格的におばあちゃんほどの底知れぬ深みを持つことはなかった”。

私一人の人生だけでもそれなりに何か起きるが、私と関わっている人の人生も動くから、私が生きているだけでも、いろんな人生のダイナミズムを味わっているような気がたまにする。人間のずるさ、優しさ、怒り、悲しみ、愚かさ、賢さ、そういうものをまるっと受け止めながら、それに潰されたり、乱されすぎずに、観察しつつ、人間の面白さを感じて昇華させていけるような器が持てたらと思う。

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今日のBGMは椎名林檎。ロンドンで二人くらいに似ているって言われて、お世辞でもちょっと嬉しい。椎名林檎の魅力って、人間の欲望や複雑さを剥き出しにして、人間を面白がっているところで、それって裏を返せば人間への愛があるところなのかもなとちょっと思ったりする。(そんなに聞き込んでいるわけでないので適切な表現かは、かなり怪しいのだけど)


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