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理想のNPOの形 #12

先週NPOのダイレクターがスタッフミーティングの際に、「IRCT(国際リハビリテーション評議会)の総会に出るから午後は電話に出られない」って言っていてふーんとだけ思っていた。そしたら、その総会で採択された、「拷問被害者のリハビリテーションのグローバルスタンダード」というものが後日スタッフ全員に送られてきて、それが一体何なのかが初めてわかった。ダイレクター自身も「グローバルスタンダード」の策定に貢献していたのだった。うちの団体は、そのスタンダードをクリアしていると思うけど、と彼女は言った。彼女がだいぶ前から策定のコンサルテーションプロセスに入ってたことを知る。

(興味ある人むけに- いるのかわかんないけど)トピックだけ一部抜粋するとこんな感じだ。

Paragraph 3 – Safety of victims、Paragraph 7 – Access to information

Paragraph 8 – Victim feedback、Paragraph 12 – Care for staff

Paragraph 14 – Advocate for rehabilitation funding

この事象の何が私の心にヒットしたかと言うと、ダイレクターが大きな枠組みにも寄与しつつ、現場もよくわかっているという、私にとってのNPO(ワーカー)の理想形を示していることだ。うちのNPOはイギリスの難民支援NPOの中では小さい。ダイレクターも、”ダイレクター”っていう響きの通りトップに君臨しているのでなく、かなりフラットな組織で、現場の仕事もとても多い。ダイレクター自身もアクティビティにはほとんど参加しているし、必要とあらば、メンバーに個別の電話だってかける。しかし、彼女はこの国の難民政策にも精通しているし、他の団体と連携して大きな枠組みを作ったり、大きな動きを作っていかないといけないこともわかっているから積極的にそういう仕事もしている。グローバルスタンダードを作るというのはまさにその一例だ。そして、そういう仕事ができる視野の広さ、実力が彼女にはある。この、川上と川下の両方にアプローチできるというのは、理想形だと私は思っている。現場を知らないと川上の大きな動きに一体何が必要なのかもわからないだろうし、現場だけでも事態を大きく・根本からかえることはできない。

うちのチャリティは小さいながらも、国連にそのユニークさが認められて、ここ数年ファンドを得ている。そのため、毎年膨大な量の報告書作成が待っているのだが、ダイレクターがまとめた国連への報告書を読むと、ナショナル・グローバルな視点の重要性を感じる。でも、そのグローバルな視点は、必ずミクロな現場の視点の上にあるのだ。ミクロとマクロを交差させることの重要性。

そして、ダイレクターのすごいところは、スタッフも難民メンバーも、そして私も、本当に一人一人を平等に大事にしてくれるところである。ユーモアがあり、いつも明るい。

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日本のNPOで、ナショナルな目線、さらにはグローバルスタンダードまで考えている組織があるのかはよく知らないが(ほとんどないと思うのだけど)、グローバルって別に水戸黄門の印籠とかじゃないんだけど、素晴らしい部分は使っていくべきだし、グローバルという外からのプレッシャーを使ったりすることは非常に有効だと思う。「知った上で使わない」のと、「知らないから使えない」のはだいぶ違う。

地に足ついた活動をしつつも、鳥の眼を持てること。うちのダイレクターみたいになれたら、ミクロもマクロも交差するようなNPOの形ができたら、本当に理想だと思う。

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写真はロイヤルオペラハウス。明日からロンドンの外出制限が厳しくなるが(同じ家の人以外とは屋内で会えなくなる)、滑り込みで、NPOで一緒に活動していたキャリーと数ヶ月ぶりに再会。帰り道に、人気のないオペラハウスがとても綺麗だったので思わず写真を撮った。彼女は、昔ロイヤルオペラハウス近くでバレリーナの友人と同居していたらしい。バレリーナがフラットメイトってなんか素敵!


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