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白い花の木の下で眠る:2021年10月8日(木の日)

うちの実家の庭と畑には合計で4本の木がある。

さくらんぼ、栗、柿、レモン

さくらんぼの木は私が物心ついたことからずっとあるから、もう30年以上の樹齢だ。
木の寿命を調べてみると、さくらんぼは30年程度と言われているので、立派なおばあちゃん。生まれたころからずっとあって、毎年実がなる春にはヒヨドリたちと競い合って熟れたさくらんぼの実をついばんだ。

その後、栗と柿の木はいつの前にか生えていて、レモンの木は近所の学校から株分けしてもらったのが立派に育っている。

庭の木が花を咲かせたり、実をつけたりする様子をみて季節を感じられるのは、とても贅沢なことだ。


そして、木の下には死体が埋まっている

実家のある場所は、目の前が海になっていて、県道を挟んで小さな波止場になっている。波止の先で魚釣りをする人もいて、ちょっとした魚釣りスポットだ。

魚釣りをする人がいる場所には、不思議と猫などの動物が集まる。

波止場に捨てられた猫、餌を求めて流れてきた野良猫、うちの近くには多いときで10匹くらいの野良猫がいて、裏の山からもタヌキや穴ぐまがでてきていた。

家の目の前がちょうど県道で、道を渡ると波止場だったせいか、子どもの頃から道路で猫やタヌキが横たわって動かなくなっているのをよく目にしていた。

波止場に行こうとして車にぶつかったのだろう。

そんな猫やタヌキたちを見つけると、母は決まって「生まれが悪かったねぇ」と言いながら、木の下に穴を掘って埋めてやっていた。

うちの木の下には死体が埋まっている。


10月8日は木の日。漢数字の「十」と「八」を組み合わせると「木」の字になることから、日本木材青壮年団体連合会によって制定された。身近にある木について知り、木材をおおいに使ってもらおうという日だそうだ。

うちにあるさくらんぼ、栗、柿、レモンの木たちとのことを思い出していると、花を咲かせる時期には、どの木にも白っぽい花が咲く

平家物語の有名な冒頭の文を思い出した。

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。

沙羅双樹は初夏に白い花を咲かせる、仏教の三大聖木の中の1つだ。

沙羅双樹は、お釈迦様が入滅すると悟られ、横たわった場所にあった2本の沙羅の木の伝説のことを表している。

お釈迦様が入滅されたとき、この沙羅の木はいったん枯れてしまうのだけど、死を悲しみ再び真っ白な花を咲かせ、その白い花は次々とお釈迦様の上に舞散り、覆いつくしたという伝説だ。

うちにある4本の木も、毎年白い花を咲かせている。

木の下の猫やタヌキたちも、きっと白い花に覆われて安らかに眠りながら、やがて土へと還っていくだろう。

土へ還り、木の養分になって、また花を咲かせ、実をつけ、その実を動物たちが食べていく。

こうして命は繋がっている。


母は、お迎えが来たら宇宙葬がいいと言っているけれど、
私は自分が死んだときには樹木葬にするだろう。

そして、どうせなら、
白い花を咲かせて、実をつける、動物たちが実を食べにきてくれる木の下で眠りたい。



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